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カーディル様にお願いして全てを変えてもらうのよ!

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

やっと二人っきりになれたっ!

私もベッドに入ればそこにはカーディル様がいて…

けれどもちろん遅いからカーディル様は寝ていたのよ。

ええ!構わないのよ。


「カーディル様?カーディル様!起きて下さい!

私の話を聞いて下さい!」


私はカーディル様の体を揺すって、カーディル様の目を覚まさせるのよ!

やっと会えたのよ、時間は無駄に出来ないわ!

一刻も早く私の状態をお話して!

ちゃんとしたドレスと優雅な生活を手に入れるのよ。

その為には一刻も早くカーディル様に私の事を理解してもらわないとっ!


「あぁ、済まない…

起きているつもりだったんだが。

あまりにもソフィアが戻ってくるのが遅すぎて」

「そんな事言わないで下さい!」


やっぱりカーディル様は私の事をなにもご存じでなかったのよっ!

きっと私が苦労しているなんて思ってもみなくて。

それで私を助けてくれなかったんだわ!


「わ、私はいつも、公爵夫人教育だなんて言われて、

色々な人に虐められているんですよ!

みんな。みんな、酷いんですっ!

私の事を何も解ってくれないの」

「…だから、なぐさめてくれる奴の所に行こうとしたのか?」

「え?」


一瞬何を言われたのか解らなかったのよ。

だって何をカーディル様が言っているのか私は理解出来なかったのよ。

私の言う事をなんでも信じてくれた共に「悪」のエルゼリアを倒した、

カーディル様はいわばもう一人の私。

愛を確かめ合って「正義」を二人で貫いたのよ。

もう私の全てを理解してくれているはずのカーディル様からどうして?

「慰めてくれる奴」

なんて言葉は出てくるの。

私を慰めてくれるのは、カーディル様以外いるはずがないのに。

どうしてそんなこと言うの?

私には理解出来なかったのよ。

けれどなかなか言葉を絞り出せない私に対してカーディル様は、

体を起こして私を見つめてくるの。

ベッドの上で向かい合う私とカーディル様。

少しご機嫌が悪いかも知れないけれどこうして起き上がって、

私の方を向いてくれたのだから…

私はにこりと笑みを浮かべてカーディル様の誤解を解こうとしたの。

だってちょっとしたすれ違いだもの。

それに今はカーディル様に私の生活の改善をして貰わなくちゃいけない、

訴えを聞いて貰える貴重な時間なのだから。

そう思って今までの事を整理して話そうと思って少し黙って考えたのよ。

話す順番を間違えたら大変な事になるって事は解っているからね!

けれどなかなか話が纏まらないのよ。

数日間だったけれど苦しくて痛い事が多すぎたから。

けどその沈黙の時間が更にカーディル様に疑惑を深める結果になってしまって。


「どうしてっ!なんですぐさま否定しないんだよ?

笑顔を見せれば誤魔化せると思ったのか!」


カーディル様の怒り様にますます私は混乱してしまったの。

だって何もしていない私が何を否定すれば良いのよ!?

私はここ数日間はあの苦しいドレスを着せられた拷問生活を送らせられて、

ベッドに入った時には足に枷を嵌められているのよ?

「何処か」なんて行けるはずないのよ?

ここにはカーディル様以外に頼れる人はいないし。

みんな、みんな私を虐めるのよ!

頼れる人なんていないのよ?!


「皆話しているぞ!

屋敷に到着したその日に、使用人達に唾を付けようとして捕まったって。

ワザワザ故郷から持ってきたお気に入りの服を着て!

着飾って篭絡相手の所に深夜行こうとしたって!」

「ち、っ違います。

カーディル様を探しに行こうとして…」


それはだって!

苦しすぎて、痛い矯正具を付けなくて良いって言ってもらいたくて。

私の苦しさを直ぐに知ってもらいたくて動いただけよ!

誰も夜這いになんて行こうとしていないわ!


「どうしてもっとましな…

せめて信じられるような言い訳をしないんだよ!

一緒に王宮に行くって言っていたんだから、

俺はその間ずっと王都にいたんだぞ!

ソフィアが登城するのに時間がかかるって母上から連絡があったから、

こっちに戻って来たって言うのに!

俺が屋敷に戻ってきたのは今日の午後だぞ!

それがなんで!なんでソフィアより先に屋敷にいると思えるんだよ!

「だ、だって私、ドレスが、公爵家のドレス」

「うるさい何がドレスだよ!

着飾る事で頭がいっぱいになったとでも言うのかよ!

その着飾った自分で誰かを篭絡しようとしてたって事かよ!」

「そ、そんなこと…」

「いもしない俺を探すって言って深夜に屋敷をうろついて、

使用人区画との境の扉で捕まったって聞いてるんだよ!

境の扉で捕まるってつまりそう言う事だろう!」

本当に俺を探すのなら屋敷から出る扉で捕まるはずだろ?!

それがよりにもよって使用人区画と繋がる扉の前…

あまりに見当違いの事を言うからもう信用できないって!

その所為で貞操帯が新調されたってっ!」


違う!ちがう!違うのよ!

それはカーディル様が誤解しているの。

捕まった扉が使用人区画と繋がる扉だなんて思ってもみなかったのよ!

それにそれに貞操帯が新調されたってそれは関係ない事でしょう!?

けれども今私が身に着けさせられた貞操帯はタイミングが悪い事に新品なのよ。

まるで物的証拠を「使用人へ逢引きしに行きました」と主張する物を、

身に着けさせられている私はそれを見られたら誤解だなんて、

もう良い訳が出来ないと思ったからガウンの下を見られない様に。

必死に体を隠したの。

けれどそれが完全にカーディル様のお気持ちを逆撫でする事になったのよ。

思い切り腕を掴まれたらそのままベッドに押し倒されて、

すぐさまカーディル様が馬乗りになって私のガウンの紐を外して、

脱がせてきたのよ。開けたそのガウンの下に見えるのは、

真っ白に色付けされた貞操帯とコルセット…

お腹の前には良く磨かれた倉庫の施錠とかに使われる、

大きな南京錠が貞操帯に取り付けられていて、

「貞操帯を身に着けさせられています」と語っていたの。

言い訳も何もなくてそこにある「貞操帯」は、

その存在だけで私が夜這いに出かけた確たる証拠として見られてしまうの。

いくら言葉で「違う」って言ったって、

必要のない物を身に着けさせる訳がないって。

しかも今身に着けているのは、私の体に合わせて作られた貞操帯なのよ。

それは汎用品の急遽用意された物じゃなくて私の体に合わせて作られた、

正しく私専用の貞操帯。

それは銀板に「ソフィア・ボルフォード専用」とご丁寧に私の名前まで、

刻まれていたから直ぐにカーディル様もこれが特注の専用品だって解る。

解ってしまうのよ。

それは初日に夜這いに行ったから作られたって言う確たる証拠で…

私に言い訳を何もさせてくれないの。


「畜生っ!本当だったのかよ…

裏切りやがったな!」


開けたガウンには今まで閉じ込められていたコルセットや貞操帯の臭いが、

漂い始める事になるのよ。

コルセットのツンとした臭いが周囲に立ち込めれば、

それはもちろんカーディル様の鼻にも届いて、そのツンとした嗅ぎなれない匂を、

カーディル様も嗅ぐ事になってしまうのよっ!

それは湯浴みの後の薄く香り付けされた私の体臭と混じり合った上に、

ガウンで閉じ込められて程よく蒸れた状態になっていて、

異様な匂いを作り出していたのよ。

その臭いを嗅いだカーディル様は更に誤解を加速させてしまうの。


「しかもくせえ男の匂いをさせやがって!

もう、もうっ!俺への当てつけかよっ!

ふざけんなよっ!」


それは確かにそう表現されても可笑しくない臭いだったのよ。

男性からしてみれば、匂い落としをしていない新品の革の臭いで、

その上に私の汗を吸って不快な臭いになっていても可笑しくなかった。

カーディル様は止まらなかった。


「王都で急遽父上の仕事を手伝わされ始めて、

心身を更なる高みへ磨き上げろだなんて言われて、

剣術の稽古を一日中付けさせられて、それが終われば公爵家に相応しい、

教養を身に付けろと!

「エルゼリア・ファルスティン伯爵令嬢の様に、

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補は、

社交の場でカーディル様を助けられません。

ですから、自分で対処できるようになって戴かなければならなくなったのです」

なんて言われたんだぞ!

お前の所為で!俺は余計な苦労までしょい込む事になったんだ!

学園では優秀だったんだろう!

それがどうしてこんな目に俺が合わなくちゃいけないんだ!

しっかりと俺の手助けが出来る様になれよ!

俺を愛しているんだろ?

愛しているなら出来るよな?!」


それで気付いてしまったのよ!

王都でカーディル様も公爵家に相応しい教育を受けていたんだって。

けれどそれが何だって言うのよ?

カーディル様は公爵家の人でしょう?

私より長く公爵家で教育を受けてきたはずじゃないのよっ!

それがなんで苦労しているの?!意味が解んないわよ!

それよりも私を助けてよ。

そっちが苦労しているのは自業自得でしょう?

こっちは苦しいドレスを着せられて、

拷問まがいの矯正具を身に着けての生活なのよ!私の方が大変なのよ!?

手助けできる様になれってそれはこっちのセリフなのよ!

私は苦労しているのよ!

苦しいの!痛いの!助けるのはカーディル様の役目でしょう!


「わ、私は努力していますっ。苦しいのも痛いのも我慢して…

ドレスを着続けているんです。

これ以上の努力なんて…

できません…」


今私の話せる言葉はそれだけだった。

それ以上の事を言う事は出来なかったのよ。

カーディル様も「教育」でいっぱいいっぱいの生活。

私も「躾」でいっぱいいっぱいなの。

二人とも互いを助けられる余裕はなくて…

きっとカーディル様も私に助けてほしくってここに来て…

けれど私はカーディル様を助ける事は出来なくて…

私も苦しいドレス生活と「躾」を終らせたくて…


「不快だ!明日からは別のベッドを用意させる。

俺に忠誠を尽せ。

そしてそうすれば許してやるよ」


それだけ言い残すとカーディル様は私に背を向けて、

直ぐに横になって寝始めてしまったのよ。

まるで私がいないみたいに。


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