公爵夫人に相応しくなるための装具は増え続けて…
「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、
毎週 水曜・土曜 20時に更新します。
ボルフォード公爵家のお屋敷に来て数日がたったのよ。
苦しい「教育」が始まってからというもの私の気分は最悪なのよ。
けれどそんな私の気持ちなんてお構いなしに朝はやって来てしまうの。
毎朝起こされるまではベッドの足に繋がれた足枷の所為で、
ベッドから離れられずカーディル様を探しに行く事は出来なくて、
ベッドの中で眠る時も外されないコルセットは初日に与えられた前開き式の、
可愛いピンク色のコルセットから、
貞操帯も身に着ける事が前提の専用の嵌め具付きのコルセットに交換されて、
一層寝苦しさが増してしまったのよ。
柔らかいガウンも下に身に着けさせられるコルセットは、
ドレスを着ない夜だからって事でオーバーバストコルセットに変えられ、
更に次の日の夜には新しく厚みの増えて固いコルセットが用意されていたのよ?
信じられる?寝具として用意されている物が、
コルセットと貞操帯なんてバカじゃないの?
それでも体に宛がわれたた自分では外せないから、
一晩中強力に私の体を補正し続けるの!
その厚みの増したコルセットだって、
急遽用意したのがまる解りで「矯正具」と同じ。
香り付けさえ済んでいない物を「わざわざ」用意してっ!
私に宛がっているのよ?いい加減にしてほしいわ!
胸元から、ツンしとした刺激臭が漂ってきて臭いのよっ。
初日の柔らかいピンク色のコルセットなんて比べられるまでもなくて、
厚みの増したコルセットの締め付け感が酷くて息苦しくて。
楽になれなくって深く眠れなくなったのよ。
何かの拍子で寝返りをうとうとすれば体に固いコルセットと貞操帯が邪魔して、
動かせなくなっていたのよっ!その度に目が覚めてイライラするのよ。
それでも同じ体制でいるのが苦しいから体勢を変えてまた眠るのよ。
それが朝まで何度も続くのよ。
長く眠っているって事が出来なくなってしまって、
疲れの抜けきらない体で朝を迎えれば直ぐに御不浄のお時間が来るの。
専用のスペースでコルセットと貞操帯を外して貰った私は、
用を済ませれば、貞操帯だけをきつく締められて…
それがまたサイズが合っていないのか肌に食い込んで痛むのよっ。
それでも、新しい物は用意してくれないの。
「これがソフィア様のお体に合ったサイズです間違っていません」
固い下着ってだけで身に着けさせられている事を忘れられなくって不快なのに…
私の正しい改善方法はまったく聞き入れてくれないのよ。
あの二日目の御不浄からのフィッティングルームの流れから、
私は寝室に戻されればそこで用意された朝食を取る事になるのよ。
ベッドの横に机が用意されて朝食を取らされるのよ…
それが、また悪魔の様なメニューで…
とっても美味しいし私が満足いく量も与えてくれる。
足りなければ追加さえ用意されているの。
もう好きなだけ食べても良いし遠慮しなくても良いのだけれど…
私は、唯一満足に食べる事が許されるこの美味しそうな朝食は、
ほとんど食べる事を許されないのよ…
「さぁソフィア・ボルフォード公爵夫人候補。
朝食は一日の活力を蓄える大切な物です」
「いくらでもご用意致しますよ。お好きなだけ食べて下さいませ」
そうして用意された朝食を見る度…
思いっきり食べたくなるのよ。
けれどその後に控えているドレスへのお着換えを考えたら、
もう一口二口くらいしか口を付ける事は許されないの。
あの凶悪な締め付けはお腹に物が入っていなから耐えられるのであって…
3日の朝に用意された朝食を「好きなだけ」食べた後に訪れる、
コルセットと矯正具の締め付けは、物をたべた状態で耐えられる物じゃ…
当然なくて配慮だってされなかったのよ。
侍女達が用意した「好きなだけ食べで良いのです」の後に訪れる、
地獄の様な苦しさはもう満たされて嬉しい気分なんて吹っ飛んで…
朝食を食べていようが関係ない。
コルセットは締め上げられ、矯正具が嵌められれば耐えられない。
息が出来たのは朝食を食べていないから。
同じ様な締め付けが待っていれば、私が食べた物は当然の体の中に入っているの。
けれどドレスの大きさは変わらない。
そうしたらどうなるの?
当然息をする為の場所がなくなってしまうのよ!
コルセットだけならまだ耐えられたかもしれない。
けれど矯正具は「余裕」なんてものを与えてくれないのよ。
その結果私は苦しすぎて気絶する事になったのよ…
「ぁぁ…」
僅かに漏れた言葉はそれだけで…
息が、息が出来なくて…
けれど、それで私が苦痛から逃げられる訳じゃなかったのよ。
流石に意識が飛ぶまで締め付けたのよ。
コルセットを巻き付けられたままの寝不足も重なって体調が良くなるなんて、
勿論無いわ。
だから、その場で崩れ落ちて…
流石に侍女達だってこんな私を見たら、きつくしたいって思っても、
手加減を考えざるを得ないでしょう?
けれど次の瞬間、私が意識を取り戻した時の姿は…
「カート」に繋がれた状態で、もちろん矯正具は緩んでいないのよ…
その代り肘置きの様な物に肘を乗せられた状態で立たされたままで、
ケープの上には、首に密着する形でベルトを巻かれて、
首元から広がる涎掛けの様な物が取り付けられていたのよっ!
侍女達は私がこんな状況になっても休ませるって考えも、
締め付けを緩めるって考えも無かったのよ。
口の中には甘酸っぱい感触が残っていて喉の奥がヒリヒリしたのよ。
それでも侍女は同じ予定を熟せるように決して私の準備を辞めなかった。
「お気づきになりましたか?」
「気絶してしまうなんて…体調が万全でないのに朝食の食べ過ぎですよ」
「食いしん坊さんですね」
「さぁ、参りましょう」
違うわよ!アンタ達が着せたコルセットと矯正具がきつすぎるのよ!
緩めてっ!緩めてよ!そうしたら体調不良になんかならないわよ!
けれどもう矯正具が嵌められた状態じゃ私に喋る余裕はなくて。
私が気づいた事を良い事に侍女達は直ぐに、私が体を預けていた肘置きを、
抜き取ってしまうの。そうしたらまたズシリとかかる「カート」の重さ。
それは用意されている躾を始める「日常」が始まってしまうって事だった。
「ぁ…ぁ…」
「ええ!そうですね!今日も元気に頑張りましょうね!」
「ボルフォート公爵夫人もお待ちですからね!」
「しっかりと予定を聞きに参りましょう!」
3人の侍女はすっかり昨日と同じ予定を私に熟させるために、
また私の背中を押すのよ…
その日は前日以上の気持ち悪さを感じながら・・・
口を開き気味になって…
なんで涎掛けを付けさせられているか理解せざるを得なかったのよ。
それで理解しなくちゃいけなくなっていたわ。
私に何があろうとも、一日の過ごし方は変わらないのよ。
何も「予定」は変えられなかったのよ…。
連れて行かれたボルフォード公爵夫人の執務室でまた、
「はぁ」とため息を付かれて…
一日の予定を聞いたらその予定を熟すまで決して解放されない一日が、
用意されていたのよ。
遅かったから朝食の食器の片づけを運ばされて、
執務室に連れて行かれれば学習の時間がやってくる。
お昼になれば、またボルフォード公爵夫人に昼食を届けると、
公爵夫人が食べ終わるまで執務室で待たされて、食べ終わった食器を、
また食堂へと届けるの。
それが終わればまた執務室へ連れて行かれて、学習の続きが始まるのよ…
もちろん私の昼食は学習の結果次第。
もしもノルマを達成できていたら、今度は自分の昼食を執務室まで運んで、
食べる時間を与えられるという取り決めが、
ボルフォード公爵夫人に決められてしまったのよ。
「まぁ、昼食を食べられるという「ご褒美」が無ければ、
学習に身も入らないでしょうし…
それに、お体の事を考えたら食べない方が良いと思うけれどねぇ…
精々励みなさいな。
すこしでもお食事が出来る様に。
あぁ、夕食も同じにしましょう
貴女の体にはその方が良いものね」
公爵夫人の教育方針が決まったせいで、
ノルマを熟せない限り朝食しか食べられない…
けれどそのノルマだって公爵夫人の気分で量が決められるのよ。
公爵夫人の気分で、私の一日の予定が決まってしまう。
公爵夫人に逆らえない…
そう私の立場は固められてしまっていたのよ。




