表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/42

少しばかりの休息。で、でも眠る時まで身に着けさせられるのなんてありえないっ!

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

広い空間で上品に仕上げられた空間は、お着換え専用のスペースもあって、

甘い香り付けがされていて…

私がリラックスするのに十分な効果を持っていたの。

衣類を全て脱がされれば、優しく湯舟に導かれてマッサージが始まったの。

まるで高貴な方々が受ける様な上質な体をほぐす時間で…

押し潰されて、疲れた体が解されて良くみたいて夢心地の様な状態。

そうよ…

そうなのよ。私が受けなければいけない待遇って本来はこういった形のはず。

昼間の矯正具は絶対に何かの間違いなのよ。

サイズを間違えられて持って来られたの。

そうとしか考えられないわ。

だって私は未来の公爵夫人なんだもの。

その私に相応しい教育を受けるべきなの。

今日の矯正具とカートを押すトレーニングは間違いなのよ…

湯浴みで十分に休息を取った私は、

メイド達に促されて湯舟から出れば丁寧に体を拭かれたのよ。

そこには侍女達はいなくて普通のメイド服を着た人ともう一人。

特別豪華なメイド服を纏った人が扇子を持って私の体をチェックしだしたのよ。

彼女も何も言わず黙々と私の体を確認して、

無言で他のメイド達に指示を出してたの。

私には何時そんなサインを出していたのか解らなかったけれど、

その指示に従ってメイドが隣のお部屋からコルセットを運んできたの。

ドレスの下に着けさせられたあの凶悪そうな見た目の奴じゃなくて、

普通の汎用品に見える物だったわ。


「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補…

夜は休ませてあげたかったのですが、やはりお眠りになる時も、

コルセットはしておいた方が良い様なのです。

寝苦しいと思いますが…付けてお眠りくださいませ」


流石にこれには私だって、反論するわ!

だって、ありえないじゃない!

夜は体を休めるのよ?

寝る時までコルセットって、頭おかしいんじゃない?

十分昼間にコルセットを付けたでしょう?

私は怒りに任せて怒鳴り散らそうとしたのだけれど、

締め上げられて呼吸する事に慣れてしまった体は、

直ぐに大声を出す為に、大きく息を吸う事をしてくれなくて…


「もう、寝るのよ?

寝るんだから付けなくていいでしょ。

そんなの付けていたら寝心地が悪くなるわ」

「公爵夫人候補としてどんな躾も拒まず受けるのでしょう?

さぁ、両手をお上げ下さいませ」


落ち着いた口調でこの特別なメイド服を着た人の命令で…

私の腰にはコルセットが宛がわれたのよ。

確かに昼間の拷問の様な苦しさは無いのだけれどね、

それでも苦しい事に変わりなかったのよっ!

1人で脱着できる前開き式のコルセットだったから大人しく身に着けたけれど。

後で勝手に外せば良いって思ってね。

今は大人しく身に着けてあげる事にしたのよ。

けれどその上からガウンに袖をを通すと…

眠るのにコルセットを付けさせられた理由が解ってしまったのよっ。

そのガウンの腰の部分は不必要に括れていて…

腰紐で可愛らしく留められたのだけれど…

もうバカみたいに括れているからコルセットを緩くてもしないと、

そのガウンからお腹を出す事になってしまうって事だったのよっ!

なんなの?用意される物は全て腰が不必要に細い衣服ばかり!


「…申し訳ありません。突然の婚約破棄騒動で、

まだ、ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補の衣類は全て揃っていないのです。

当家に来るのはエルゼリア・ファルスティン様のつもりで、

あのお方の体格に合わせてご衣裳を用意していたのです。

ソフィア様のお体もエルゼリア様と同じ位、美しいお体を持っていると、

報告を受けていたのでエルゼリア様が余裕で着られるサイズを、

ご用意して置けば問題ないと思っておりました」


カっとなった。

それはエルゼリアだったら、

今日の衣装は普通に着られるって宣言されたのだから!

ふざけないでよ!私の何処がエルゼリアに劣っているって言うのよ!

あの女は不正を働くような悪の女で私に断罪されるような最低の子なのよ?

それをっ!それを!まるでエルゼリアは優秀だって言っているみたいじゃないっ。


「そう…。

もう疲れたから眠るわ。案内して」


もう反論するのも面倒だったし、

何より周囲のメイド達の落胆した表情をこれ以上見たくなかったのよ。

「期待はずれ」「本当に公爵になれるの?」「何も解っていない」

言葉にはしないけれど今日私の周囲にいたメイドや侍女に針子は、

全て私を見下していた。

私は今まで男爵令嬢だったのよ?

これから公爵夫人になるんだから「今」は出来なくて当たり前じゃない。

そんな事も周囲は理解できないのだからって思いながら…

これ以上メイド達と話したくもないって思って…


その特別なメイド服を着た人に、ベッドへと案内させたの。

それでスルッとベッドに潜り込んだら私はもう何も言わなかったの。

ともかく今日は終わり終わりなのよって思って…


「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補。

…お休みなさいませ」


それだけ言い残してメイド達は部屋を出て行ったのよ。

やっと一人になって私は気持ちを落ちくける事が出来る時間が作れたのよ。

ボルフォード公爵夫人に宣言させられた、

「どんな躾も拒まず受けます」って言葉を私はもう一度思い出していたの。

あの時は焦った気持ちと肩を叩かれて言ってしまったけど…

ベッドの中で失敗したって思い出していたのよ。

別に何か契約書みたいなものにサインした訳じゃないから大丈夫。

口約束だけだからって思っていたけれど…

上位爵位保持者の言った言葉を繰り返していう事で、

二人の間で確認は行われてしまっているし。

「受けます」と了承の返事もしてしまったから合意契約が結ばれた事にも、

なっているかもしれない。

それに周囲にその宣言を聞いて確認した人が大ければ多いほど、

私の言ってしまった言葉は「正式な言葉」として認められてしまう。

あの場での宣言はドレスの苦しさも合って逃げ出したいって想いから、

その時間を終らせたいって思って言ってしまったけれど、

もう取り消しは出来ないってこと…よ、ね?

苦しくて痛くて苦しくて痛くてちゃんと考えている暇はなかったけど…

ベッドに横なって少しだけれど「楽」になったから冷静に考える時間が出来て…

誰もいなくなった部屋で私は、

ベッドに腰かけて今日半日の事を思い出して整理して考えてしまっていたのよ。

あの凶悪な苦痛を与えてくる矯正具は…

今日だけよね?

あの苦しいカートでの歩行も今日が初日だから、私の立場を解らせるために、

行われたデモンストレーションだったのよ、ね?

そうに違いないわ。

あんな凶悪な拷問器具を毎日身に着けさせられるだなんて、

そんなこと合ってはいけない事だもの。

苦しさは公爵家に来た洗礼であって今日だけが特別な事なのよ…



―そうやって、いつまで自分を誤魔化しているの?―



私の中の誰かが私にそう囁いているみたいに感じて…

けれど私はそうして私の想いを貫いたからカーディル様と結ばれたのよ。

だから私の考えは正しくって…

それでもその時見えてしまったのよ。

隣のフィッティングルームへと続く部屋への扉は開け放たれていて、

隣の部屋で遠くのはずなのに、大きく広げられて存在を主張するそれ…

暗闇の中で外から差し込む月明かりに照らされた壁際の一角。

そこには今日身に着けさせられて苦しんだ「矯正具」が…

固い革で作られた真っ白い光沢のあるソレは、

そんな物なかったって思いたい私の心情とは裏腹に、

大きく広げられて壁に掛けられていて…

取り付けられた太いベルトがその堅牢さと締め付けの強さを、

私に思い出させていたのよ。

合わせた様にその下には「カート」と私を繋いでいた、

綺麗な装飾の施された厚いベルトの束がカートの上に置かれていて。

充て具付きの革の塊もまた大きく盛り上がる様に置かれていて、

その存在が幻でないってちゃんとそこにあるって主張しているのよ。

隣の部屋で遠くから私は見ているのよ。

小さく見えるのが普通でしょう?

けれどその「矯正具」と「カート」は大きいのよ。

大きく見えるのよ。

あの場所にあるのよ。


あってしまったのよ。


・・・そ、それじゃあ…

今日の苦しさが明日もやって来るって事なの?

そんな事ないわよね?

で、でも、使わない物を明日もお着換えの時に使う、

フィッティングスペースの近くの壁に立て掛けたりするの?

明日も使うから、あそこにあるんじゃないの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ