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そんな事聞いてないっ!私はちゃんとできるのにっ!

「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、

毎週 水曜・土曜 20時に更新します。

カートの押し手に付けられた、あくまで「装飾品」として付けられたソレ。

私は肘を押されてそのカート持ち手の部分に、手を誘導されるのよっ。

嫌よ!こんな物持ちたくない!

カートを運ぶのは使用人達の仕事じゃない!

私は、私は絶対にこんな物押して歩いたりしない!

私のなるべき役割は「公爵夫人」なのでしょう?

カートを押したりするなんて、傍付きのメイドにでもやらせれば良いじゃない!

けれどそんな考えだって、侍女達には伝えられない。

私はその「カート」の押し手を持たされると、そのそばに設置してある、

装飾品の範疇を超えて作られた、白い革製で細かいカービングが施された、

南京錠付きの革枷をきつく手首に嵌められて南京錠を掛けられてしまったの。

いくら手を放したくても、鎖が短いから持ち手から手が離れないのよ!

必死に手を広げてカートから手を放そうとするけれどそんな事はもう出来ない!

どうして?どうしてこんな物が必要なワケ?意味が解らないわ!



「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補は「まだ」王家の人々に、

認められておりませんし、「公爵家」にも迎え入れられていないのですから、

正式な身分が無いので仕方が無いですね」


・・・え?


「ソフィア様?誤解なさっているみたいなので、教えて差し上げましょう。

今のソフィア様に「爵位」というモノは何も無いのです。

このボルフォード家のお屋敷に入った時点では、

まだソフィア・マリス男爵令嬢としての地位はありませんが立場はありました。

けれどボルフォード公爵夫人からソフィア・マリス男爵令嬢様は、

「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補」としての立場を授かったのです。

その時点でご実家との繋がりは断ち切られました。

そして、ソフィア様の授かった「公爵夫人候補」とは、

「公爵夫人となる教育を受ける方」なのです。

それは「公爵家に嫁ぐお方が授かる嫁ぎ先で暮らしても良い」と言う、

許しであって、そこには貴族としての立場は無いのですよ。

だって「正式な爵位」を持っているお方を、

侍女の私達が「教育」するとなると問題が出て来てしまいますからね。

もちろん「候補」ですから―――

「公爵夫人」として振舞う事は出来ませんし立場もありません。

では「今」ソフィア様の爵位は何をお持ちなのでしょうか?

何も爵位が無いのですよ。

爵位のない人を貴族として扱えますか?」


あ、れ?


「貴族なら学園卒業後「仮」とは言え「貴族として振舞う為の証」を、

家族から受け取ったりするものですがソフィア様はご実家でも、

その証を戴けなかったでしょう?

その上ボルフォード公爵夫人からの任命式もなさらなかったでしょう?

すると、今ソフィア様は貴族としての証を何も持っていないのですよ」


貴族としての証。

それは学園を卒業しただけでは貰えないのは解っていたわ。

その後に任命式を受けて規則としての「証」を「正式な貴族」から受け取るって、

その証を受け取った貴族は正式な貴族として責任を果たす事になるのよ。

そのくらい理解しているわよ!

私は必死に思い出していた。

カーディル様との結婚が決まって、

その報告の為にマリス領に戻って挨拶をした時の事を。

けれど思い出せるのは燥いで自室に戻って、

お気に入りの品々とお洋服を鞄に詰め込んでお父様とお母さまに挨拶しただけ。

だって、ボルフォード家でいきなり生活を始めるなんて事態になるなんて、

思っていなかったんだもの!

任命式なんてやってない!貴族の証を受け取らなかったっ。

だって挨拶して直ぐにボルフォード領に来ることになったのよ?

そんな証だなんて貰ってる時間なんて無かったわよ!

そ、それでも私はマリスの性があったのよ?普通の平民じゃなかったのよ?

最低限男爵家の娘として扱うべきじゃないの?

貴族としてここにいるはずなのよ?

私は貴族!平民じゃないわ!貴族なのよ!


「お判りになられましたか?

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補は「貴族の証」を持たない。

では今、貴族の証を持たない貴女を何の後ろ盾をもってして、

「貴族」として扱わなければいけないのでしょうか?

勿論ここが「マリス家」で、あったのならば話は何の問題もありません。

ご実家でしたら「マリス家の御息女」としてマリス家の使用人達は、

ソフィア様の事を認識して対応すれば良いのですから。

ですが私達侍女やメイド達は「ボルフォード家貴族」に、

付き従う為にここにいます。

「マリス家貴族の身内」の為にここにいる訳では無いのです。

そしてこの家に住まう使用人達は、ボルフォード公爵閣下と公爵夫人に、

認めら信任を手にいれているから、

「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補の教育」を、任されているのですよ。

貴女の様に「カーディル様に認められたから、公爵夫人候補の立場になった」

訳では無いのです。

長い間、ボルフォード家にお仕えして、ボルフォード公爵夫妻に忠誠を尽し、

色々な苦労を公爵閣下と乗り越えて来たのです。

簡単に「公爵夫人」になれるだなんて思わないで戴きたい。

まして貴女にはエルゼリア伯爵令嬢の様な何年もかけて準備をした、

下地もなければ、王族に認められる爵位も無いのです」


それは…

それは侍女からの私に対しての宣戦布告だった。

公爵家のプライペート空間ではなくて使用員達の為のエリア。

ここはボルフォード家に仕える人々が集う場所であって。

この場所は私にとっては敵地だって、その時初めて自覚したのよっ。

同じお屋敷の中だから食堂まで遠かったと言っても、

まだ公爵家のプライベートな場所を歩いているって。

勝手に思い込んでいたのよ!

マリス家はそんなに大きくないから使用人だって友達感覚だったし。

みんな仲良しの楽しい家だったから、使用人専用の部屋はあるけれど、

使用人専用の公共スペースみたいな場所が、お屋敷の中にあるなんて、

思ってもみなかったのよ!

公爵家の人間は絶対に入らない。

使用人達だけのプライベートエリアがあるなんて思ってもみなかったわ!

私は使用人達が支配する場所に連れ込まれていたのよ!


「よくお聞きなさい。

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補。

貴女を教育する私達は、将来貴女に仕える事はありません。

貴女は将来公爵夫人となった時に私達に…

なんて考えているのかもしれませんがその時には、

現公爵夫妻と共に別館へと移動する事になるので。

私達はおりませんから私達は好きにやらせて戴きますよ」

「ぁっぁ」


私を好きなだけ教育して、そして将来はいなくなるかから、

仕返しをする機会も与えられない…

それって、私を好き放題するって言っている様な物だった。

嘘でしょう?

侍女は私を繋いだ手枷を撫でながらニコニコと話すのだ。


「ご安心ください。

私達は優しいですから。

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補の「候補」が取れる時まで。

最後まで見捨てず面倒を見て差し上げますよ。

もちろん、出来が悪い場合はそれ相応の、教育をして差し上げますから、

頑張りましょうね?」

「「公爵夫人候補としてどんな躾も拒まずに受けます」

でしたか。舐められたものです。

そんな簡単に公爵夫人になれると思われたのですから。

奥様が必死になって立ち続けている公爵夫人の立場が、

簡単に手に入ると思っているのですものねぇ」


私の両脇に立った侍女達はそれ以上に私を負い詰めて来ていた。

フルフルと首を振ってそんな事考えていないって、

拒否の意思を示してもそれはもう遅かったのよ。

何となく、カーディル様との関係で私は公爵夫人になる。

皆から愛される人になれたんだって思い込んでた。


学園ではみんな私の話を聞いてくれて…

私を褒めてくれて…

私がしたことは正しいって言ってくれて…


けれどココは、この場所は、違った。

私が思い描いていた描いていた場所じゃなかったのよ!

それでも侍女達は私に付けさせた手枷を撫でながら話すのよっ!


「初めて「公爵夫人」となった公爵家の人間はですね、

王妃様とお茶会がセッティングされるのですよ。

そこで王妃様とお二人になってお話をする事となるのです。

そこで王妃様の安全を確保する為にも、

手枷が嵌められたままお会いする事になります。

国の中で一番上位の女性に認められる事。

それは公爵家の女主人となる者は絶対にクリアーしなければいけない事なのです。

そして王族に従順であることを示して「王妃様に忠誠を尽している証」として、

公爵家を恙なく運営して国王夫妻に忠誠を尽せると認められて、

始めて「国の認めた公爵夫人」になれて手枷が必要となくなるのです。

それまではソフィア・ボルフォード公爵夫人候補?

貴女は「働く者」としてカートから手を放す事は許されないのですよ。

カートには、これから公爵夫人が出来て当然の課題が積まれていくのです。

その課題を熟してカートから降ろして、

王妃様への献上品を乗せる場所を「カート」に作るのです。

王妃様の前へたどり着けるまで、

ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補はカートを押し続けなければいけません。

王家に忠誠を尽しているとご納得いただけるまで」


侍女達が語るそれは公爵家が王家の為の存在でしかなくて、

その存在を王家に認めて貰えないと存在価値が無いようにも聞こえてくるのよ。

そんなはずないでしょう?

公爵家なのよ?


「さぁ。お喋りのお時間は終わりですね。

今日のお夕食を乗せて自室へ向かいましょうね」

「私達はソフィア・ボルフォード公爵夫人の後を付いてまいります」


それだけ言うと別の侍女が料理を乗せた銀板をカートの上に置いたのよ。

カバーの被せられたそのお料理は何なのか私には解らないけれど、

トントンと肘を押されてまた私は歩き始めたのよ。

くッと力を入れればカラカラと音を立てて台車は動き始めるのだけれど、

私の前に置かれた「カート」は思うように進んでくれないのよっ!

私はまっすぐ押しているはずなのにっ!

カートは右に曲がったり左に曲がったりしてまともに動かないのよ!

壊れているんじゃないの?このカートは!?


「あらあら、カートもまともに動かす事が出来なんですね?

ただでさえお時間がないのに」

「こんな事では、カートを押す練習もする必要がありますね」


煩いわねっ!そんなこと言われなくたって…

て言いながら気付いてしまったのよ。

私は両腕を同時に押しているつもりだったけれど、

左右に立つ侍女達が私の肘を押しているのよ。

その微妙に左右のバランスが取れていない力のかかり方をされたら、

まっすぐ動く訳無いじゃない!

どうして?どうしてこんなっ…

けれど直ぐに侍女達はクスクスと笑い出したのよっ!

何が面白いのか解らないけど。


「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補?楽をしようとしてはいけませんよ」

「私達に手伝ってもらってカートを押すなんて。ね?」


・・・っ!

気付かれていたの?今の私はもうクタクタなのよっ!

だからちょっと位いいじゃない!

私の肘を押して侍女達は私を移動させているからその押された力に頼れば、

私は楽にカートを押せるって思って私は押すふりをしながら、

侍女達が私の肘ごとカートを押すのを待っていたのよ。


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