悪の令嬢は成敗されて私は幸せを手に入れたのよ!
「乙女ゲームの主人公は正義を語り続けてはいられない」は、
毎週 水曜・土曜 20時に更新します。
私の名前はソフィア・マリス。
ごく普通の男爵令嬢だったんだけれど…
貴族の生まれだった私は王国貴族の義務として、
決められた年齢になったから王国の運営する学園に通う事になったの!
周りの男爵令嬢達もみんな優しくて、私は直ぐに仲良くなる事が出来たの!
楽しい学園生活になるはずだったんだけど…
夏の長期休みが始まる前辺りかな?
学園に不穏な空気が流れ始めていたの。
言い換えれば、生徒達が全員受けるテスト。
その結果が操作されているんじゃないかって所から始まったの。
優秀な子のはずなのに中間テストで上位だった子の点数が、
期末テストでは軒並み上位に来てないって事。
優秀な子がどうしてかしらって事になったの。
それでね私は調べる事にしたの!
それから色々と調べていると、なんと私の行動に興味を持った公爵子息様が、
興味を持って色々と助けてくれるようになっていったの!
彼の名前はカーディル・ボルフォード様って言って…
とっても素敵で正義感が強くて!
正に私との息もピッタリになる、運命の人だっだのよ!
そして、二人で色々と調べていくと…
その学園では私には信じられない事が多くて…
とっても多くの不正が行われていたの!
調べれば調べるほど、ある女の人の影がチラつき出して…
その女性の影がチラつく度に、カーディル様の美しい顔が、
怒りに染まっていく気がして…。
でもね私は自分の正義を信じていたから。
追及を止める事は出来なかったのっ。
そしてついにたどり着いてしまったの…
それは通手も悲しい事で。
裏で糸を引いていたのは…
カーディル様の婚約者。
エルゼリア・ファルスティン様だったのよ…
信じられなかった。
けれど、それは事実で・・・
せっかくみんなで築き上げた拳闘会や女の子の為の芸術祭。
そのお祭りに隠れて彼女エルゼリア・ファルスティンは、
公爵家の婚約者なのを良い事に強い権力を使って不正を押し通していたのよ!
それは許される事じゃないわ!
私達が一生懸命考えた女の子がオシャレを楽しむ為の催し物だった芸術祭だって、
皆爵位にあった正しい格好をする事になっていたのに…。
1人だけ公爵夫人用のドレスを身に着けて、
周りの生徒達に「アレをやれ」「これをしろ」って、
まるで自分の部下みたいに命令していたの!
信じられない!
学生はみんな平等なのに!自分だけルールを守らない酷い人だったの!
婚約者の地位を使って好き放題に命令してくる学園の「平等」を否定する酷い人。
まだ結婚してないから、公爵夫人になれるかどうかだって解らないのに!
いつも婚約者だからって公爵令息のカーディル・ボルフォード様に、
「ああした方が良い」「こうした方が良い」って、命令する姿はもう、
未来の奥方は自分だって言っているみたいでとっても気持ち悪かったの!
いちいち口うるさく言って来るエルゼリアにカーディル様も、
当然嫌気がしているらしくて、
「もうあの婚約者の小言を聞きたくない。
俺も随分長い事、我慢してるんだが…
俺の抱える公爵令息としての重圧と…
過去の過ちをあいつはっ!」
命令しかしてこないエルゼリアにカーディル様はもう疲れ果てていて…
私が支えてあげなくちゃって思ったの!
私が気分転換ににもなるから、学園の雰囲気を変える為に催し物をしたいって、
カーディル様に提案したら、カーディル様も前向きになってくれて…
けれど、その前向きになってくれたカーディル様の気持ちをへし折るかの様に、
エルゼリアがまたこの催し物は出来ない。これは貴族的にやってはならない。
なんて言って、イベントの開催を阻止しようと妨害してくるの!
けど、私とカーディル様はその度に皆に協力してもらって、
素敵なイベントを開く事が出来たの。
けどその裏ではやっぱりエルゼリアが暗躍していて…
生徒達が頑張って作った作品の順位を自分の息のかかった審査員を呼んで、
操ったりもしていたのよ!
学園は正当な評価が得られる場所じゃなくちゃいけないのに!
そうやって暗躍し続けたエルゼリアはひどい事に他の侯爵家の生徒も、
弱みを握って協力させていたの信じられないわ!
けれど私とカーディル様の説得によって協力していたラッセフェンも、
間違いに気付いてくれたのよ。
彼は不正の柵から解き放ってあげる事が出来たの。
ダングラード家としても不正をするしかなくて苦しんでいたけれど、
私達の想いにラッセフェンは一生懸命答えてくれて、
なんとか開催直前で、審査員を入れ替える事が出来たのよ。
エルゼリアの思い通りになんてさせなかったの。
そうやって少しずつ信頼を築き上げて私達は卒業式のパーティーまでに、
エルゼリアが作り上げた不正の証拠を纏め上げて彼女に突き付けたのっ!
本当は断罪なんてしたくなかった。
けれど仕方が無かったのよ。
周りの大人達も教師達も、私達のお話を聞いてくれなかったんだもの。
不正の証拠を掴んだのは私一人じゃない。
色々な人が見ていて、けれど黙っていた事だったんだもの。
エルゼリア・ファルスティンが貴族の社会で振る舞い用になったら、
大変な事になってしまう。
きっと正しい貴族社会は汚されて正しい事が出来なくなってしまうのよっ!
そんな事許せる?
大人達まで味方に付けて不正を隠し続けようとするエルゼリアを、
私は絶対に許せないよ!
3年間の緻密な聞き込みと不正の証拠の資料を私は色々な所に送ったのよ。
もう私達は卒業するっ!
不正をして謝らず何も罰則も受けないで学園を卒業するなんて…
資料を纏める為にがんがってくれた「みんな」だって納得できないのよ!
だから、学生であると同時に貴族として認められる卒業式の後開かれる、
パーティー会場で私達は行動を起こすしかなかった。
一人前とされる貴族となったその日にエルゼリアにそれまでして来た行いを、
真実を突き付けて、貴族として暮らしていけなくしてやるのよ!
勿論、カーディル様にも許可を取ったわ。
エルゼリア・ファルスティンが3年間やり続けた不正の証拠は…
カーディル様と集めたと言っても可笑しくない物だもの!
「ソフィア…
もう俺は我慢しない。
卒業パーティーで、全ての決着をつけよう。
俺も婚約を破棄する。
もうエルゼリアは庇えない。
そして…
君とこれから先、生きていきたい。
一緒になってくれるか?」
「はい!勿論ですカーディル様…」
卒業パーティーで行うエルゼリアに行う断罪の…
最終打ち合わせの場所で私とカーディル様、気持ちを確かめ合ったのよ。
そう私達は幸せになる為に…
エルゼリア・ファルスティンを追放しなくちゃいけないのよ!
あんな悪に染まった令嬢がいる事は絶対に許されないの!
次の日は予定通り卒業式が行われて…
そして夜の卒業パーティーは予定通り始められたのよ。
場が盛り上がって一通りの参加者が集まり始めた頃エルゼリアも、
のこのこと会場に来たの。
それも公爵夫人が着るようなドレスを着て!
まだエルゼリアはカーディル様の婚約者であって、
カーディル様の公爵夫人じゃないのにっ。
既に決まったかの様な装いで会場の目立つ位置に取り巻きを引き連れて、
あれやこれやとまたいつもの様に命令していたのよ。
最後の最後までエルゼリアは威張り散らして皆に命令していたの。
けれど…
そんなエルゼリアにカーディル様は近づいて行ってついに宣言したの!
「エルゼリア!貴様との婚約を破棄する!」
その言葉を聞いた時エルゼリアはあまりのショックだったのは、
表情が固まっていたの。
これぞ「ざまぁ」って感じだったわ。
感情の抜け落ちた表情を見せるなんて愛しい人からそんな事言われるなんて、
思ってもいなかったって感じでショックだったんでしょう?
私はその宣言を聞いた時エルゼリアに天罰が下ったんだって思って…
とっても嬉しかった。
悪い事をし続けていたらいくら婚約していたからって、
結婚できるとはならないのよ!
「エルゼリア!貴様は俺に相応しくない」
「左様でございますか」
「だからこの時この瞬間を持って婚約を破棄する!」
「婚約破棄、賜りました」
「悔しいだろう!俺の忠告を聞かなかったからだ。
それに比べてソフィアは天使だ!
お前とは違う!」
「では天使のソフィア様とお幸せになって下さいませ」
「あははは!お前の様な冷酷な令嬢はこの場に相応しくない!
さっさと去るが良い!」
「はい。そうします」
ショックだったのね!
だからあんな感情ない様な、感情を殺した返事をするしか、
エルゼリアには出来なかったのよ。
彼女は取り巻きを連れて逃げる様にパーティー会場から去ったのよ。
エルゼリアは反論もせずにね!
出来る訳無いのよ。
だって不正をしたことは自分自身が一番強く解っているのだから。
用意していた資料は全く使われなかったけれど、
その後は悪を追放できた私達はその勝利を噛みしめて、
互いにたたえ合う至福の時間が始まったのよ!
エルゼリアの断罪から始まったパーティー会場は一気に喜びに包まれて…
私達はいっそうもり上がったの!
悪の令嬢エルゼリア・ファルスティンを追放した。
貴族として正しい事を示した事を再確認しながらその日のパーティーは、
学園始まって以来の盛り上がりを見せて…
そして貴族になった「みんな」も輝いて見えた。
私達の輝かしい未来が始まったって事だった。
―貴族子息の小さな革命―
後にそう名付けられた、私達の革命は成功したの!
成功したのに…
私は今ボルフォード家に用意された部屋で、
ボルフォード家が用意した3人の教師と言う名の侍女達に、
「公爵夫人教育の基礎」を受けさせられていた。
腰を限界まで締め上げられたコルセットを一日中外されず身に着けさせられ、
苦しくて直ぐにでも外したい。
せめて緩めてほしい。
「とても活動的でいらっしゃいますものね。
お体の管理は必要でしょう」
「…はい」
貞操帯を身に着けさせられ、
ありえないほど重たくて苦しいドレスを身に纏った私は、
私専用に用意された椅子に座らされていた。
・・・もちろんこの椅子に深く腰掛けさせられた私は椅子の背凭れに、
太いベルトで固定され、姿勢を崩す事なんて許されない。
「姿勢を正して座っていられないのですから仕方がありませんね」
「…はい」
ベルトはもちろん教育係が外してくれないといまの私には、
自分で立つ自由さえ与えられていなかった。
机の上に広がるのはボルフォード家に関する資料。
けれど用意された資料は膨大で…
とてもじゃないけれど覚えきれる量には見えなかった。
けど教育係に容赦の二文字はなかったの。
「ソフィア・ボルフォード公爵夫人候補視線が乱れております」
「ソフィアボルフォード公爵夫人候補早く答えなさい」
「ソフィアボルフォード公爵夫人候補何をグズグズしているのです?」
「ソフィアボルフォード公爵夫人候補?
この程度の事エルゼリサ伯爵令嬢なら悩む迄もなく答えていましたよ」
「ソフィアボルフォード公爵夫人候補?エルゼリア伯爵令嬢は、
視線を乱したりしませんでしたよ」
「ソフィアボルフォード公爵夫人候補?カーディル様に相応しいのでしたら、
エルゼリア伯爵令嬢よりも優秀な所をお見せくださいませ」
あのエルゼリアと比べられて…
私よりエルゼリアの方がちゃんと理解していたって嫌みを言われながら、
私は今「ボルフォード家の公爵夫人」になる為に勉強させられているの…
3人の教師が代わる代わる授業をして私の休んでいられる時間はなくて。
「乱れた体の為に用意してくださいましたよ。
大切に使って美しくなりなさいね」
数日たたないうちに出来上がってしまった矯正具。
出来上がった矯正具は体が軋むほど痛くてく苦しくて…
私は初めて衣類が「痛い物」だって思ったの。
公爵家のドレスを着られる様にするには、
体が軋むほどの矯正具を身に着けさせられて生活する事になったのよ。
朝起きたら直ぐに苦しすぎるドレスを着せられ、
その上から矯正具の数々…
「これでもエルゼリア様に比べれば緩すぎるほどなのですよ」
「そ、そんな…」
朝食が済めば公爵夫人の使いをしてそれが済めば執務室に連れて来られて…
覚えるノルマを達成するまで一秒だって椅子から解放されない毎日。
ノルマが終わったとしても夜遅すぎて後は眠るだけ。
終わらなければその日は…
…ノルマが終わった後はやっと解放されるって思っても、
一番外したい苦しさの要のコルセットは外してもらえない。
そして締り具合を確認された後私の一日は終わって、
カーディル様のいる寝室へ戻れる。
会える時にはカーディル様は眠っていてお話も出来ない。
そしてカーディル様より私の方が早く起きる事が決められていて、
私が起きた時にはカーディル様はベッドはいない。
一緒に並んで眠るけれどお話しする事は出来なかった…
どうして?
どうして私はこんな目に合っているの?
どうして…
矯正教育が始まってしまえば、
公爵家にとって問題ないと思われるまで教育は辞められません。
そして何よりカーディルとの愛の語らいなんてモノより、
一人前の公爵夫人になる事が求められます。
男爵令嬢の教育ではもちろん役に立たず、
公爵家の礼儀と常識が出来るまでソフィアの教育は終わりません。
そしてなにより時間がない。
王国はエルゼリアを逃がした事により王国の北側すら兵を配備して、
守らなければいけない事態になりつつあるのですから。
ソフィアさんはこれからどうなるのかな?
「公爵家の伝統」って素晴らしいですね。
長く続いた家だから「伝統」は「守る物」ではなく
「守らされる」モノとなるのですよ。