10
そこにいたのは妹だった。
「ちょっと」彼女は僕に話しかけてきた。
前世では少年だったので化けるのは簡単だったが、彼女はおかしな持っていてほしくないスキルを持っていた。
それは、嘘を見抜くということだ。少しでも間違えたことをすれば、彼女は気づいてしまう。
それは僕が一番恐れていたことだった。
「?」声を出せばばれてしまうので、僕は首をかしげることにした。
彼女は僕をジーッと見てきた。僕は警戒するように距離をとった。
彼女はどんなおかしなことをできるのかがわからないからだ。
「まあ、頑張ってね~」彼女はそのまま仕事に戻っていった。
僕はとりあえず乗り越えられたと思い、ほっとした。
そのまま作業をしていると、板の中に何かが見えた。
少し板の一部を取り除いてみてみると、それは宝石に見えた。
「これは!?」近くを通った一人の男性が目を丸くした。
僕はびっくりして飛びのいた。「それはエレクトリック・クリスタルじゃないか!」
それを聞き、僕は空耳かと思った。エレクトリック・クリスタルといえば地中に何キロ掘ってもほぼ見つからないというクリスタルだ。
こんなところにあるのは地球の人生で初めてで最後だろう。
「それは…とりあえず持っていたらいいんじゃないか?」彼らはにっこりとしてきた。
全くうらやましそうにもしていなかった。このクリスタルはめちゃくちゃ貴重なはずだ。
僕はとりあえず持っていることにした。これはいろいろなことに仕える。
勿論うまく使えば声を変える魔道具も作ることができるはずだ。
僕はそれを手にすると仕事のことなど忘れて城へすたこらさっさと走っていった。
つけていた仮面は森の中へと捨ててから服を着替えて城に入ると自分の部屋に入った。
服や自分についている埃は取り除いておいた。
「はー」僕はクリスタルを手にしてはしゃいだ。
ちょうどそこへお父さんが現れて、ごまかすのが大変だった。
だが、その後入ってきた妹のほうがめんどくさかった。めちゃくちゃ怪しまれたが、うまく通すことができた。
多分もうばれていると思う。
「どんなことができるだろうな~」僕はワクワクしながら考えていたが、やはり作りたかったのは自分の声を変えることができる魔道具だ。
匿名として動こうとしたときは一番使えるものだからだ。今ないものといえばの話だが。
だが、問題は材料と技術だった。今の僕はそんなものを作る材料も技術もなかった。
ある人を探す必要があった。だが、この姿で町の中を歩けば問題になる。それは普通の人ならだれでもわかることだ。
「これもダメだな…」僕は持っていた一番地味な服を選んだ。だが、それでも派手過ぎた。
ついさっき来ていた服は捨ててきたので、どこにあるのかもわからない。
僕は仕方なく茶色いコートを上からかぶせた。これはお父さんのなので、体をすっぽりと隠してくれた。
「これでオッケー」僕は窓を開けると逃げていった。
「居ないかな…ちょうどいい人…」町の中を歩いていたが、そこまでいいところは見つけることができなかった。
町に出たことは何度もあるが、自由にそこまで歩き回ることができなかった。
王女だったというのが理由だ。やっぱり王女というのはめんどくさいことだ。
「とりあえず路地に入ってみるか…」僕は路地に足を踏み入れた。
だが、二歩進む前にどうして路地へ行かせてくれなかったのかが分かった。
「これが原因だったのか…」