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「暇だー!」僕はダンジョンの中で叫んだ。
今は大体21階にいるが、全く強い敵がいないのだ。
全て粉々にすれば終わってしまう。
さっき現れたボスの攻撃も方向転換すればすぐに倒せてしまった。
強い敵がいないのだ。
「誰か強い魔物を出してくれー!」
「どうしましょうか…」暗闇から声が聞こえてきたが、僕は気づかなかった。
そこには何かが2匹いた。人間の声には聞こえなかったが、人間の言葉を話していた。
「こいつがいる限りは問題しか起こらないだろうな…よし、こいつがダンジョンの中で暴れている間に町を焼き払うぞ!」その言葉をともに、2匹が暗闇の中に消えていった。
僕はため息をついた。
相手が全く強いからだ。
そろそろ帰ろうかと思い、とことこと戻り始めた。
普通の冒険者なら戻る用の魔道具は持っているが、僕はめんどくさかったので持たなかった。
なので、戻りたいときは足で戻る必要があった。
だが、戻るときにもいろいろと材料をゲットできたのでまあよかっただろう。
外に戻ると、何かがおかしかった。
向こうのほうから赤い光が見えたのだ。
「?」僕は急いで戻った。
「…」僕は町を眺めていた。
そこは悲鳴が聞こえまくるだけの町だった。
自分の城に戻ると、メイドが慌てて走ってきた。
「王女様、ここにいたのですね、早く!逃げてください!」
僕はできるだけ冷静に来た。ここで焦ればいいことなどない。
「何が起こってるの?」メイドはすこし困った顔をしてから答えた。
「その…町が魔物に襲われました…とにかく!王女様は速く逃げてください!」だが、僕の辞書には逃げるという文字が入っていなかった。
「ちょっと行ってくる」僕は町にめがけて歩き出したが、数歩歩いたところで後ろを振り向いた。
もうそこには誰一人いなかった。人はいなかった。いたのは大きな魔物が一匹だった。
「ぇ?」
僕は魔物を見上げた。「ギャー!」魔物は悲鳴のような声を上げてこっちに走ってきた。
「死ね」彼女が魔物と目を合わせたとたんに魔物は砂へと変わった。
「少しは見逃してやろうと思った。どこのどいつが召喚したのかは知らんけど…」僕は町に振り返った。
「やっぱり1匹残らず死ね」僕の目は血のように真っ赤だった。
森にあった木が一本一本地面から引き釣り出され始めた。
僕は町の真上まで来ると、軽く腕を振り下ろした。
「お前ら全員死ね」
「こ、こんだけで大丈夫ですかね…?」一匹の魔物がおどおどともう一匹に訊いた。
「安心しろ、ここまでいればさすがに魔力が尽きるだろう。大丈夫だ。まもなくこの街は崩壊…す…る…」空を見上げて2匹の魔物は固まった。
そこには槍のようにとがった気が何百本も浮かんでいたのだった。「な、なんだ…これは… ハ!」その中心には一人の少年がいた。
「あいつ…なぜあそこまでの魔力を持っているのだ…」彼の顔は引き締まった。
少年が腕を軽く振り下ろすと、すべての気が一気に落ちていった。
一本一本が魔物に命中した。町の中で暴れていた魔物はすべてつぶされてしまった。
「と、とりあえず撤退だ!」くるりと振り向いて逃げようとしたが、目の前に壁が現れた。
壁が現れたわけではなく、地面が浮き上がってきたのだ。
「おまえ、どこに行こうとしてるんだ?」後ろから声が聞こえてきた。