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人間の見分け方は大きすぎる。
貴族は平和に生き、僕たちは毎日が心配な生活をしている。
人間は全員が公平に生きるのが普通になってほしい。
そんなことができる立場に慣れたらいいと何度願っただろうか。
でもそんなことはかなうわけがない。
かなえられるのならばどんなことでもしよう。
たとえ命を絶とうとも。
僕は別に帰属を憎んでいるわけではない。
皆が平和に生きれる世界を作りたいだけだ。
それだけを僕は望む。
それ以上に臨める者はないだろう。
そんな願いが叶うならば…
かなえてくれるのならば…
悪魔に魂を売ってやろう。
「ン…?」僕は目を開けた。
見覚えのないところだ。
天井は少し高すぎた。
しかもふかふかだ。
起き上がろうとすると、少し苦労した。
だが、起き上がると目を丸くした。
気が付けばなんかやばい部屋にいた。
「?」目の前には大きな部屋があった。
「…」僕はあっけに取られて目の前を眺めていた。
そこはいつも見ていた路地などでもない。
きつい目で見てくる目もなかった。
綺麗に整った部屋の中に座っていた。
ここはいったいどこだ? 僕は首を軽く回して周りを見た。
その部屋には気づいたときには誰もいなかったが、すぐにたくさんの人が集まってきた。
「おお、目を覚ましたか」1人の男性が叫んだ。
「カワイ~!」もう一人の女性は少しめんどくさそうだった。
僕は持ち上げられると、違和感を感じた。
手を見てみると、そこには手がなかった。
もう少し頭を動かしてみると手が見えた。
だが、いつも見ていた汚い手じゃない。
綺麗に整った小さな手だった。
へ? 僕は固まった。
「なんで動かないんだ?」男性の言う通りだった。
僕は完全に動くことをやめていた。
あまりのショックに固まってしまったのだ。
また動き出したときにはまたベッドに寝ころんでいた。
まだ口をうまく動かすことができない。
完全に幼くなってしまったようだ。
もう生まれたての赤ちゃんらしい。
僕は頑張ってみると、気軽に立ち上がることができた。
あの男性・お父さんとあの女性・お母さんの話を聞いていれば生まれてから1時間で立てるようになったようだ。
僕は魔法を持っていた。前回の人生よりもいい魔法だ。多分。
僕は自分を宙に浮かすことができた。
その後分かったことだが、他の人や物も宙に浮かすことができた。
どうやら僕の魔法はそれのようだ。
この世界には一人一人、一つの種類しか魔法がもらえない。炎、地面、水、風のようになっているわけではなく、結構ランダムだ。
勿論水を操ることができる人もいるし、炎を口から吐ける人もいる。
だが、他にもさまざまとできることはたくさんだ。
僕は物を浮かばせることができる魔法が今は使える。前回の人生では魔法が使えない特異体質を持ってしまった。
だから、人から避けられていた。この世界では魔法がすべてだ。だから、魔法を使えない特異体質をもらってしまった人の人生は終わりといっていいだろう。
ほとんどの人はその特異体質をもらえば自殺する。だが、僕は生きた。
気が付けば赤ん坊になっていたが。
時々2つ以上の魔法を使える人もいるが、その人は勇者といわれていて、皆に信頼されていた。
だが、前世ではほとんどの冷静な勇者は僕に優しくしてくれた。
なぜかと訊くと、僕がうらやましいといっていた。
彼らはほかの人が守れないと責められる。
僕たちのようにこんな魔法が使えなければよかったのにと後悔していたらしい。
だから僕は勇者を嫌ってはいなかったし、彼らと話すのは楽しかった。
だが、今は逆にやばい立場へと昇りあがってしまった気がする。
嬉しかったが、確実にこれはチャンスだと分かった。
この世界の理屈をひっくり返すチャンスだと。