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第2話 第2シェルター


「綺麗だ……こんなにも色鮮やかだったんだな」


 つい言葉が漏れてしまう。19年間地下で暮らしてきた俺には刺激的すぎた。仄暗い地下で生活し続けた人間には想像のできない世界だった。本の中でしか語られなかった青い空が、今、目の前に広がっている。

 しかし、これから始まるのは本の中の冒険譚では無い。俺は他のシェルターへ報告をしに行かなければならない。定期連絡の期限まで残り2ヶ月。それまでに他の通信施設の生き残っているシェルターに向かわなければ、他のシェルターの人間まで危険に晒すことになってしまう。


「急がないと……」


 定期連絡の途絶えたシェルターへは、付近のシェルターから調査員が派遣される。連絡の取れなくなったシェルターは全滅したのか、それとも通信機器の障害なのかを把握しなければならないためだ。数を大きく減らした人類は生き残る為、シェルター事に役割を分担した。俺の居たシェルターは


「これで北部の観測所が使えなくなった。他のシェルターにその役割を委託しなければ」


 栃木より北、福島方面を監視する目的があったのだ。


 ゾンビは定期的に大移動を行う。理由は不明だが、食料が不足すると新たな食料を求め移動すると考えられている。その際、少しでも早くその移動を察知出来れば避難や防衛準備が整えられる為、監視シェルターの役割は非常に大きい。

 北部第3シェルター、俺が生まれたシェルターは日本国内でゾンビ共から奪還した生存圏の最北、旧栃木。ここが落ちたのだ。第2、第1シェルターに伝えなければ、日本は首都、東京に向かって北から崩壊していくだろう。まず目指すは旧栃木県西武の第2シェルターだ。あそこなら通信施設も備えている。


「第2までの道中で食料も確保しないと……」


 身一つで出てきてしまったのは少し失敗だったかもしれない。いや、あの状態なら仕方が無い……か。


「とにかく移動しよう。ここに居ても何の解決にもならないしね」


 1人歩き始める。初めて見る空の下、この時には少しだけ本の中の冒険者になったようで、これからの冒険に心を踊らせていた。


〜〜〜北部第2シェルター〜〜〜


「先程の通信を最後に第3からの通信はありません。恐らく……」

「あぁ。第3が機能しなくなるとここと第1で対処せねばならないが」

「第1から連絡が途絶えて1ヶ月です。そろそろレベルの引き上げを検討しては?」

「……そうだな。職員に伝えておいてくれ。第1、第3からの連絡が途絶。シェルターの警戒レベルを最大に引き上げよと。それと各地の小規模シェルターにも避難指示を出せ」


 警戒レベル最大。動員できる全ての人員でシェルターの防御を行う状態。それと同時に中央地区の特殊部隊が派遣され、壊滅したシェルターの奪還が完了するまでの最前線基地となる。


「第3は連絡が途絶えてから時間も経っていない。機器の不具合の可能性も考慮しろ」

「了解」


 本来であれば2ヶ月間の観察を経て各地で対策を行う。しかし、今回の場合、第1そして、第3が両方とも機能不全に陥っている可能性があった。第3は北部最前線シェルター、守りの要が落とされたも同然だ。北部シェルター群が落ちれば人類の生存圏は大幅に縮小してしまう。


「第1が陥落している場合、食料も滞る可能性がある。中央地区に支援要請も出しておいてくれ」


 第1シェルターは食料生産を主としているシェルター。各シェルターごとに食糧生産は行っているが、潤沢では無い。

 定期的に第1から各シェルターへ食料を輸送していた。しかし、その食糧生産を行っていたシェルターが陥落した可能性を考慮すれば、早い段階で各地に支援を求めるのは正しい判断である。更に、同時に2つのシェルターが壊滅するなんて事態は前例がなかった。そんな中で、この対応を出来たのは第2シェルターの管理者が有能であることの証明だった。


「最悪のケースは第1も第3も壊滅しているケースだが」

「そうなったらここも撤退ですかね?」

「そうならない事を祈るだけだ」


 幸い、第2シェルターは西端。西部シェルター群からの支援は容易である。未だ避難になっていないのはそういう理由がある。シェルターから撤退してしまえば再度、そのシェルターを確保するのには多大な労力が必要となる。

 撤退することなく、今回の事態に対応出来れば良いのだが……


「西部第3シェルターより通信がありました。支援は可能だそうです。しかし、少し時間がかかる模様。各地で感染者の活動が活発になっているようで……」


 このタイミングでゾンビの活動が活発化……いや、活発になったが故に、シェルターが落とされたと考えるべきか。


「移動は……始まりそうか?」

「はい……しかも今回の規模は、恐らく過去最高です。旧長野県を中心に日本海側で大規模な集団を形成しているそうで」


 同時多発的に移動を開始……か。もしかすると


「出たと見るべきか?」

「えぇ。恐らく。この規模の集団を形成できるのはそれしかないかと」

「分かった。もしも、移動が確認できた場合、直ぐに中央地区へ避難要請を出せるようにしておけ」


 仮に生まれていたとすれば、全ての地区のシェルターを破棄することも考えなくてはならない。250年ほど前に1度発生した大移動。その時、集団の中心に居たのは……特殊感染個体、中央地区の対感染者対応課での呼称は


 指導者(フューラー)

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