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シャットダウン・アンサーズ ‐答想聖解王と問題解決部の少年少女‐  作者: 羽波紙ごろり
【忘年会、もう無えんかい?】
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#51 お、お前は聞くな

「そうホイホイ使えるなら、今頃僕は世界を征服しているぞ?」


「つまり使っていないんだな? なら良いが――」



 安心する的当を他所に、歩亜郎はわざとらしく溜息を吐いた。


 今回会話が思うように進まなかった理由は、やはりというべきか歩亜郎にある。では何故、歩亜郎はあのように会話を脱線させるようなことをしたのだろうか。彼がこのようなことをするときの共通点、それは何かを誤魔化しているときだ。


 歩亜郎は嘘を吐けない。嘘を吐いたとしてもすぐにバレる。だからといって、彼が嘘を吐かない証明にはならない。今回は嘘というわけではないが、何か隠し事をしている可能性がある。問題解決部の部長として部員のケアは大事だ。歩亜郎だって仲間なのだから――


 的当は真矢に話しかけるときのような穏やかな声音で、歩亜郎に声を掛けた。



「おいおい、本当にどうした歩亜郎? ははっ、悩みでもあるのか? お前に?」


「気持ちが悪いのだ。そういう声で話しかけるなら、真矢を呼ぶぞ」


「うぐっ! こちとら優しく声を掛けたつもりなのに!」


「その優しさが、痛く感じることもあるのだ」


「本当にどうした、歩亜郎? まさか、本当に悩みがあるのか?」


「ああ」


「お年玉のことをまだ気にしているのか? 良いじゃないか、神社で警備のバイトをすることになったんだから、いろいろ報酬は手に入るぞ?」


「違うのだ。お年玉は再来年に期待するから、もう気にしていないのだ」


「ふむ? お兄さんに悩み事ですか。心配ですね」



 心配そうに歩亜郎の顔色を窺う鬼衣人。だが歩亜郎はそんな鬼衣人を払い除けると、顔を横に振り回し、何かを否定するような表情で、鬼衣人に言った。



「お前は聞かなくて良いのだ! ややこしくなるから!」


「お兄さん、僕を仲間外れにするのですか?」


「うっ! お前はお口のチャックが緩いから、なるべく話したくないだけなのだ」


「確かに、そうかもしれませんが――わかりました。なら僕には言わなくて良いです。その代わり、的当さんにはちゃんと相談してください」


「そのように一歩引かれると、申し訳なくなってくるのだ……」



 歩亜郎はハットを被り直すと、的当と鬼衣人、そしてデカメロンと砂雄を呼び寄せた。



「拙者たちにも何か言うことがあるのか、歩亜郎?」


「というか、僕は今日初対面のはずなんだけどね?」


「兎耳砂雄とか言ったな? お前は、読神書子とは、その、深い仲なのか?」


「え? ああ、うん! ラブラブだけど――」


「その言葉を待っていた! つまり、バカップルとかいうヤツなのだな?」


「スゴク、失礼だけど――えへへ、何か照れるなあ」


「そ、そうか!」



 歩亜郎は相変わらず無表情であったが、その感情は周囲に漏れており、誰がどう見てもそのテンションはかなり上がっていることが明白であった。一体、歩亜郎はどうしたというのだろう。的当と鬼衣人が首を傾げていると、一舞が歩亜郎の背後に立っていた。



「ポアロくん? 悩み事があるなら、私も――」


「おわっ! ち、違う! お、お前は聞くな!」


「え」


「あ、ああっ! ち、違う! これは後学のためというか、プライバシーというか」


「まあ……ポアロくんにも、男同士の会話は必要ですよね……」



 空気が、冷える。



「メロンくん、書子さんたちは私と葉子ちゃんで見守っておきますから、今はポアロくんの相談に乗ってあげてください」


「しかしだな、雪上――しょ、承知! 承知したから! 感情を押し殺した表情をやめろ!」



 デカメロンは何を見たというのだろうか。歩亜郎が気になって一舞の顔を覗こうとするが、彼女は凄まじい反復横跳びによって、歩亜郎から視線を外し続けた。これでは一舞がどのような顔をしているのかわからない。わからないが、きっと――彼女は勘違いをしている。



「一無、聞こえるか?」


「(何かしら? 今、私は機嫌が悪いのだけれど?)」


「一舞のことを、頼むのだ」


「(言われなくても! そもそも私の機嫌が悪い理由は、君がお姉ちゃんへの気持ちをハッキリさせないからでしょう?)」


「私への気持ち? どういうことですか、一無。ポアロくんの気持ちはわかっていますが?」


「(お姉ちゃんはお姉ちゃんで何か勘違いしているし、ああ、もう!)」


「解決出来たら――歩和郎とデートする権利をお前にやるから」


「(何を勝手に決めてんだ、歩亜郎! オレを巻き込むな!)」


「(何か不満でもあるの、ポワロくん?)」


「(ハァー、てめえら姉妹揃って――いや、それはオレたちも同じか)」


「そういうことなら――そうだなぁ」



 他人格たちとの会話を終えた歩亜郎たちを見て、的当は何かを閃いたようだ。



「忘年会をやるぞ」


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