#50 珍しく理解が遅いぞ
「メロン?」
デカメロンが懐から一通の手紙を取り出す。彼は改めて手紙の中身を一瞥すると、その文面を簡潔に皆へ伝えた。その手紙は、デカメロンが所属する忍者の里からのモノであった。
「砂雄と書子様には、拙者が所属している忍者の里にて生活を送ってもらっていたのだが、忍者の里にはいろいろな忍者がいて、要するに――スパイもいたわけでござる」
「全員がメロンたちの味方ではないということかしら?」
「忍者の里といっても派遣団体みたいな場所だから、人間関係は仕事上の付き合いでしかない。拙者も里の誰かを信用しているわけではないし、互いに探りあっている状態だ」
「忍者の里が安全地帯ではなくなったわけですね?」
「その通り。特に数年前、頭領が交代してからは――やはりというべきか分散生活はそこまで簡単ではない。拙者たちもあの頃に比べてある程度成長したし、久しぶりに元の生活に戻るのも悪くないと思った」
「それに今は年末年始。一緒に神社を盛り上げるのも大事だと思ったの」
「だから砂雄たちが帰ってきた、というわけだな?」
「その通りだ、的当。だが、書子様たちが神社へ帰ってくることも、ガイアコレクションには筒抜けであったようだ。だからこそ、聖解の本を狙ってきたのかもしれない」
忍者の里。デカメロンが幼い頃に修行をした場所。忍者の里を名乗っているが、厳密に述べると現代における忍者は傭兵やスパイ、警備員や忍術を用いたエンターテイナーといった何でも屋であり、その存在はちっとも忍んでおらず、ある意味筒抜けである。
「まるで、古座市の秘密結社みたいなのだ。ちっとも秘密になっていない」
「古座市? ああ、エミリーマートの一号店がある街か」
「エミリーマートって、県内にしか存在しないローカルコンビニですよね?」
「店名の由来は、社長の娘の名前から来ているらしいけど――」
まあ、【魂美人の征服王】の話はこの辺りにして――
「わかった、メロン。細かいことはよく知らないし、わからないが――俺たちは乃鈴と、従姉である書子を守れば良いんだな?」
「何だ、的当? 珍しく理解が遅いぞ? 僕はもうとっくに理解できているのに」
「お前が話を脱線させなければ、すぐに理解できたさ」
「会話のレールを敷くって、難しい……」
歩亜郎よ、会話のレールを敷くとか敷かないとかの問題ではなく、お前が会話を脱線させていることに問題点があるということを、いい加減気づいてほしいものだ。
快適な会話方法について考えている歩亜郎のことは一先ず放置して、的当たちは話を続ける。要するに書子と乃鈴をガイアコレクションの襲撃から守れば良い、ただそれだけの依頼なのだ。それだけの話であったのに、ここまで話が進まなかったのは何故なのか。今回の依頼内容を手帳にまとめながら、的当は考える。手帳の内容は後程、正式な文書としてまとめるとして――もしやと思った的当は、唸る歩亜郎に声を掛ける。
「歩亜郎、お前また劇場の力を使っているわけじゃないよな?」




