第4章
「どうだった? 部品開発部の新しい部品は?」翌日の朝、出社するとすぐに渡辺課長が聞いてきた。
「小型で力が出るアクチュエータでした。筋肉みたいに伸び縮みして有馬さんはロボットに使おうかなって言っていました。僕もコンパクトさと仕組みは面白いなと思いました」
「ロボットかあ。物になるかなあ……そりゃあ鉄腕アトムやマジンガーZみたいなものができたらなと僕も思うけど、今の技術じゃあ到底無理だろうし」
「僕にはまだわからないです。尾上さんがロボットに興味を持っているって聞いたんですけどご存じですか」
「いや、聞いたことはない。今度の部定例で報告がてら聞いてみようか」
「そうですね」渡辺課長は乗り気じゃないんだなと感じた。
「ねえねえ、有馬さんは大丈夫だった?」席に座っていると隣のかおるちゃんが小さい声で耳打ちしてきた。
「いい人でしたよ。誘われて帰りに一緒に飲みに行っちゃいましたよ。話していて楽しい人で、全然変な感じはしなかったけど」
「初回で飲みにまで行ったんだ。気に入られたんじゃない?」かおるちゃんは目を見開いて驚いた表情をしていた。
「気に入られたかはわからないけど、話ははずみました。純粋に物作りが好きみたいで、技術のことも詳しいし僕はこれからも頼りにしちゃうと思います」
「よかったじゃない。気が合ったみたいで。技術者と意思が通じ合うって、ここでは大事だから。出足好調ね」
「でも三年で物にしなきゃと言われたんですけど、それができるか心配です」
「別にあなただけが責任を背負うわけじゃないから、あまり気にしない方がいいわよ」
「まあそうですけど、自ら異動したからには僕もなんかやり遂げたいんで」
「わかるけど、肩肘張らずに気楽にいこ。ところで明日の夜は空いてる?」
「え?別に空いてますけど」美しいかおるちゃんに誘われたようでちょっとドキッとした。
「内輪で八雲さんの歓迎会をしようかと思って」
「ありがとうございます。うれしいです」
「企画部のメンバーと所長秘書の真子も誘ってみるね。では明日終業後に」