miho-ドヨウビ三角=NOYESNO=
「ムラカワさん、私、かわいいでしょ」
「はい、はい」
「ムラカワさん、彼女いるんですか」
「おらん」
「じゃあ、私どうですか」
「お前、みんなに言うてるやろ」
「バレました」
「うん。バレバレ」
金曜日、20時。二人の時間。
テレビの中にはビューティフルライフ。
美保は、俺の部屋に落書きして、酔っぱらった俺に言葉を投げる。
「ムラカワさん、風邪ひいたんでしょ。おじや、作ってあげますから」
「ええって」
「食べないと罰あたりますよ」
「はあ、そうでっか」
風邪をひいた春先、美保は俺の部屋でおじやを作る。
俺が煙草を吸うたびに、「罰あたりますよ」という美保。
「おじや、出来ました。食べて食べて。ちなみに私に風邪をうつさないでください」
「はいはい」
「もしもし、ドライブへ連れて行ってくれませんか。別れたんでしょ。年上の彼女と」
「お前が何で知ってるねん」
「秘密ー」
俺が、4年間、付き合った彼女と別れたことを何故だか美保は知っていた。
「今日は、オレンジのカーディガンにしてみました。お姉系で可愛いでしょ」
「美保。お前、ドラマの見すぎちゃうか」
助手席に美保を乗せて。東へ。国道を。
「この辺、ラブホ街ですね」
「それがどうした。俺、金ないぞ」
「それは知ってます」
「なら言うな」
美保とドライブして、帰り際。
「私はムラカワさんのモノです。なんで私にはキスしてくれないんですか」
「そのなぁ」
「ムラカワアオイの子供を産んでみたい」
「あのなぁ」
偽りのない、美保の声。
今更思い出してどうするねん。
俺、恋下手。
セツナイネ。
セツナイネ。
今日は眠ろう。