5話 穢れた魂
恐ろしい闇を放出し続けている天陽鈴をしっかりと見据え、俺は父さんの隣に並んだ。
「…!啊晶、ここは危ない。早く逃げなさい」
「父さん、俺も戦うよ。というか、父さんこそ大丈夫なの?」
俺がそう言うと、父さんは少し笑って
「私を誰だと思っている。若い頃はお前の母さんと殺し合えるくらいの強さだったんだぞ」
「えっ?!」
と爆弾発言をかました。
えっ、殺し合うってなんだよ?!仲悪かったのか?ってか、母さんと殺し合っても無事ってことは父さんも相当強いのか…?
俺がそう考えていると母さんが微笑みながら歩いてきた。
「ふふっ、そういえばそんなこともあったわね。私とあそこまで戦える男は貴方が初めてだったわ。ソウルクラインの【光の剣士】である貴方なら、あの闇を祓うことができるんじゃない?」
母さんがそう言うと父さんは少し考え込んで、躊躇うように口を開いた。
「できなくはないだろうが…闇と同化し過ぎている。このまま払えば魂ごと消滅してしまう。仮にも『天尊子』でおられる方を殺してしまうのは…」
「そうね。でも、このままだと危ないわ。…いざとなれば私がなんとかして見せるから」
「なっ…!それは…つまり、っ」
「父さん?」
母さんが何か決意したような顔をして、よく分からないことを言った。それを聞いた父さんは何かを察した様子で驚愕していた。
…というか、ソウルクラインってもしかして、『冥君』の直系である『幻霊児』であられる方々のことか?…父さんって、実は大物?
そう俺が考えていると、父さんが周りの闇を片手で払いながら申し訳なさそうな顔でこちらを振り向いて言った。
「啊晶、すまない…私だけではあの方を生きて闇から引き剝がすことができない。お前の力が必要なんだ…『天帝』陛下の『器』である、お前の力が…手伝ってくれるだろうか?」
「でも…まだ実戦経験がないこの子を危険にさらすのは…」
「…君に責任を負わせるわけにはいかないだろう。それに、啊晶に協力してもらう方が安全だ」
「…そうね。啊晶、ごめんなさい。貴方のことは何があっても必ず守るわ。だから私たちに手を貸してくれないかしら?」
「もちろん!俺は何すればいいの?」
「貴方の能力を引き出せばいいの。少し苦しいかもしれないけれど我慢してね」
『天帝の器』の特別な力って今使えるのか?そう思ったが母さんが俺の背中に手を当てた途端、体の奥からとてつもないナニカが湧き出てきた。
「…っ!」
熱い…苦しい…これが俺のチカラなのだろうか。初めてチカラを引き出したせいか、上手く魔力を制御できない。目の前がチカチカと点滅して、立っていられなくなった。
そして、俺はそのまま意識を失った。