4話 突然の終わり
…どうやら、俺の嫌な予感は当たっていたみたいだ。目の前に跪いている少女のような顔立ちの少年を見ながら、俺は遠い目をしていた。
「その魂…その魔力…貴方が、今代の『器』なのですね。初めまして、私は『天尊子』の天陽鈴。字を霧霞と言います。お会いできて光栄です。天陽家の名において、貴方を『天帝』と認め、主として戴きたく存じます。よろしいでしょうか」
…良くはないな!予想はしてたし、スキルや称号があからさま過ぎたけどさぁ、俺はそんな者にはなりたくない。
俺が嫌そうにしていることに気付いたのか、父さんが俺を庇う様に前に立った。
「幾ら貴方達の先祖が『天帝』様で、息子が『器』なのだとしても、息子の意思を無視し、そちらの要望を押し付けるのは横暴ではないのか」
「貴様!『天尊子』様に何たる無礼!成敗してくれる!」
父さんが放った言葉はかなり無礼で、案の定、御付きの小物っぽい人が激昂して武器を抜いた。父さんを傷つけようとするなら消すか。と物騒なことを考えていると
「やめなさい。貴方の行動が私達の品位を貶めているのですよ」
少年、天陽鈴が出てきてそう言った。
一瞬押し黙ったものの、御付きの小物は此方を睨み付け、あろうことか主の言い付けを無視して襲い掛かってきたのだ。
これは流石に看過できないと思い前に出ようとしたその瞬間、思わずゾッとする程強力な殺気を感じ、反射で飛び退いた。
さっきまでいた其処は強力な魔法か何かで抉られたのか、焼け爛れ、見るも無惨な有様になっていた。その奥には、魔法を放った人物と思われる黒いローブ姿の男が居た。
俺が殺されそうになった(避けたからピンピンしているが)のを見た天陽鈴は大きく目を見開いて、其の瞳を怒りと闇に染め上げ、闇のオーラを纏い叫んだ。
「貴様…その方を殺そうとしたのか…?私が…ワタシタチが探し求めたその方を…っ!…許さぬ…ユルサヌ…シンデシマエッ!!!」
「…っ?!マズイ!二人共、逃げろ!」
父さんは、そう言って恐ろしい闇を纏った天陽鈴から俺と母さんを逃がそうとした。しかし、現実は非情である。天陽鈴の怒りと共に放たれた攻撃の余波だけで、唯の人間なら即死するレベルだ。現に、どう見ても上位存在の黒ローブは掠っただけで重症を負っているし、小物に至っては生きているか微妙な感じだ。
従って、武器を持てば何でもありな母さんとは違い、実力を見たこともない父さんは普通に心配なので俺が守る必要がある。そもそも、父さんが強くたって俺は家族を置いていこうとは思わない。折角手に入れた温かい家庭と幸せな生活を失いたくはない。もう二度と、失うものか。
俺はそう決意して、とりあえず天陽鈴を止めることにした。