序章
遥か昔、この地に我らが主上がお生まれになった。
彼のお方は大地を創り、聖霊を呼び、神を育て、人を生んだ。
やがて、人間たちは争いはじめ、神たちをも巻き込み、妖魔や邪神、悪魔が生まれた。
主上は地上が穢されて行くのを悲しみ、天上に神とその眷属を住まわせ、地上を管理する存在を創り出した。それこそが、今の我らの始祖である。
始祖は四人創られ、それぞれ役割を与えられた。
❝妖魔の王❞ 新霜初夢 別名『妖皇』
❝獣亜人の王❞ ミアリィ・アルフロイア 別名『獣王』
❝神・聖霊の王❞ 天陽無 別名『天帝』
❝冥邪の王❞ リリス・ソウルクライン 別名『冥君』
この四人が、それぞれ地上を治め、自身の領地の守護者となってその地を繁栄させていった。
特に天陽無の力は凄まじく、彼の眷属である月家の者たちは他の王たちの子孫と比べても遜色ないくらいだった。
主上はその力を認め、彼らを“神仙”という種族に替えられた。そして、時空の管理という重要な役目をお与えになった。
天陽無と月家当主、月玉嘉は渋ったが、他の王たちの後押しもあり、無事にその役目を担うこととなった。
それから何十、何百年、何千年と経ったある日、
この地が、この世界の管理者たる主のことをよく思わない他の世界の管理者たちにより、破壊・蹂躙されてしまった。
幸いにも始祖や眷属たちは無事であったが、大地は荒れ果て、とても人が住めるような場所ではなくなってしまった。
主上はこの地に留まることを危険と判断し、始祖たちを新たな世界へ送り届けられた。
そして自らはこの地に留まり、自身の世界を脅かす敵を排除することを選ばれたのだ。
結果、その御力を大幅に減らし、様々な世界に飛ばされ、記憶を失ってしまわれた。
…今も世界を転々としておられるだろう。
私は、主上を御守りする為に今も尚、主上と共に世界を彷徨っている。
この書を手に取り、読んだ者よ
其方は恐らく、始祖の直系かその器だろう。
一つ頼みを聴いて貰いたい。
私と、主上を探して貰えないだろうか。
私はよいのだが、主上はこのままでは衰弱していき、消滅なさるだろう。
そうなっては、また❝シェンインの惨劇❞が繰り返されてしまう。
どうか、そうなる前に主上を保護して欲しい。
私の居場所は、この書の最後に記されるようになっている。
月家の力を以てすれば、時空を渡って他の世界に干渉することなど容易だろう。
最後に、一つ忠告だ。
この地、シェンインでは決して神力・霊力・妖力を使うな。
この地は、今でも生き残った敵に監視されている。
其方たちが見つかって捕まりでもしたら、主上の努力と御覚悟が水の泡となってしまう。
そのことを努々忘れぬように。
天翠星管理守護神“ ”配下、近衛兵長ノアフォンセ