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異世界召喚のデバフ使い〜宵闇を従えし少年は最強の道を進む〜  作者: 白崎仁
第一章 デバフ使いと異世界召喚
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情報交換



 この世界にも来てから一週間が経った。さすがにこの世界での生活にも慣れてきた……というか慣れざるを得なかった。


 一応、魔力操作も習得し、今では魔法発動の方に集中している。とはいえグレイスさんとの約束により、ちゃんとした発動の瞬間は誰にも見せていない。


 ちなみにデバフ魔法は一律で詠唱がいらない魔法だった。別にいいんだけど……少し詠唱をしてみたい気もしていたので、なんとも言えない気持ちになった。


 武術訓練もだいぶ進んできて、最近では投げ技を習得しようと頑張っている。レイティアさんも僕が怪我をしないように最新の注意を払いながら、分からないところを詳しく教えてくれている。少し過保護すぎる気がするのはきっと気のせいだろう……多分……。


 そして、現在。僕は今、王城の中庭にいる。時刻は午後6時。空は茜色になり、夜が近づいていることがよく分かった。


 僕が何故この場所にいるのかというと……


「すみません!お待たせしてしまいました!」


 そう大声で叫びながらこちらに走ってくるのはグレイスさんだ。実は今日は彼女との情報交換の日なのだ。といっても、僕には渡せるほどの情報はないから一方的に情報をもらうことになってしまうだろうけど。


「いえ、僕もさっき来たところなので全然待ってませんよ」


 この言葉は女性と待ち合わせをする上で非常に大事だ。全然待ってないというのが本当であろうと、嘘であろうと、言ってしまえばそれが本当になるのだ。『女性には気を遣わせてはいけない』母からよく教わったことだ。


「そ、そうですか……。なら良かったです。では情報交換を始めましょうか」


「はい」


 ひとまず僕は渡せるだけの情報を渡した。デバフ使いの魔法は一律で詠唱がいらないこと、魔力操作が難しいこと(これは僕が悪いのかもしれない)の二つだ。


「なるほど……」


「すみません、少なくて。なかなか調べる機会が少なくてですね……」


「いえ、気にしないでください。私がしっかり集めてきましたので大丈夫です!」


 グレイスさんはその豊満な胸を前面に押し出しながら、「ふふーん」と鼻を高くした。グレイスさんの着るドレスが胸元が結構空いているので目のやり場に困ってしまう。


「ん?どうかしましたか?」


「な、何もないです!続けてください!」


 グレイスさんはコテンと首を傾げる。どうやら自分のこと魅力をよく分かっていないらしい。本当勘弁してほしいものだ。


「コホン、では続けますね。私はこの一週間、宵闇の勇者様について調べました。彼女の名前はミヅキ=カワカミ、黒髪に黒眼、そして黒いローブを身に纏った人で『宵闇』という固有魔法を使うことから宵闇の勇者と呼ばれていたそうです」


 ミヅキ=カワカミさん……か。めちゃめちゃ日本の人だな……。召喚される人は日本人限定とか……決まりがあるのかな?


 ちなみに固有魔法というのはその人自身が生まれつき持っている魔法のことで、基本的には他の人が使うことは出来ない。もちろん例外はある。


「宵闇の勇者様はあまり人と関わりを持たなかったそうです。それ故、一体どこを拠点にしていたのか分からなかったり、王城から消えたと思ったら急に現れたりと、いろいろ神出鬼没だったらしいです」


「なるほど……。それにしても、人との関わりがなかったのによくこんなに情報を集めれましたね」


「あ〜、それはですね、旭光の勇者様と宵闇の勇者様が召喚されたのが何百年前かのこの国だったからです。祖父が私に話してくれたのも、おそらく先代の国王から伝え聞いていたんだと思います」


「そういうことですか……。納得です」


 それにしても神出鬼没か……。ワープ的な魔法でもあったのかな?あったら是非欲しいところだけど。


「私が集めた情報はこのくらいです。どうでしょう、役に立ちそうですか?」


「は、はい。多分……いえ、きっと役に立ちます!」


 正直、思ってたよりも情報の数は少なかったけど、ずいぶん昔のことらしいし、グレイスさん自身がとても満足気なので何も言わないことにした。


「そうですか?それなら良かったです!」


 グレイスさんはとても綺麗な笑顔を見せる。僕は思わず見惚れてしまった。この笑顔が見れただけでも良かったと心から思った。


「もう暗くなってきましたね。そろそろ帰りましょうか」


 僕は見惚れていたことを隠すために、そう言いながら月に手をかざす。


「そうですね……あ、綺麗……!」


「はい、こんなまん丸なのを見るのは久しぶりです!」


「あ、フフッ……!」


「あれ、僕変なこと言いました?」


 急にグレイスさんが声を出して笑ったので、ついつい慌ててしまった。


「いえ、私が綺麗と言ったのは月ではなく紘太様がつけているブレスレットですよ」


「あ、これですか……」


 グレイスさんが綺麗と言っていたのは、僕がいつもつけている真ん中に赤い石がついたブレスレットだった。


「これは兄のものなんですよ」


「へえ〜、いただいたのですか?」


「いえ、ちゃんと貰ったとは言えないんです」


「理由を聞いても?」


「形見……みたいなものなんです。ある日、急に消えてしまった兄の……」


「そうだったのですね……」


「だから大事にしてるんです。一種のお守りみたいなものでしょうか」


「ふふ、素敵ですね」


「ありがとうございます。じゃあ僕はそろそろ帰りますね」


「紘太様は今からお食事ですか?」


「そう……しましょうかな。訓練でお腹も空きましたし」


「なら私もお食事にします!」


「え、あ、そうですか……」


「はい!!」


 何がそんなに嬉しいのか、グレイスさんは笑みを絶やさない。しかも晩ご飯のタイミングを同じにする必要はあるのだろうか?グレイスさんの思考が分からない……。


 ひとまず用は終わったので、僕たちはそこで別れた。



 その後、僕は食堂で夕食を済ませていつも通り自分の部屋のベッドに寝転んだ。寝るには少し早い時間だけど、訓練の疲れもあってか、意外と寝れてしまうのだ。


 今夜もベッドに寝転んで少し経ったら、すぐに眠ってしまった。今夜起きることが自分の運命を変えるなんて露ほども思わずに。


読んでいただきありがとうございます。


もしおかしな点などがあったら報告していただけると有難いです。

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