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異世界召喚のデバフ使い〜宵闇を従えし少年は最強の道を進む〜  作者: 白崎仁
第三章 デバフ使いと侯爵令嬢
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指名手配されてました



「ふぅ〜。やっぱりコーヒーは美味しいな」


 僕は現在、リグノリア王国西部の街カルディアのカフェでコーヒーを飲んでいた。向かいにはクーリアもいる。


「紘太はよくそんなに苦いやつ飲めるね。私には無理だな」


「これが大人の味ってやつだよ。クーリアにもいずれ分かるさ」


「あんまり歳は変わらない気がするんだけど……」


 僕は17歳でクーリアは12歳だ。5歳も違えば感じ方もだいぶ違うだろう。いや、きっとそうだ。


「それにしても指名手配か……。動きづらくなっちゃうな」


 僕はボソッと呟く。というのも、カルディアに来て僕は初めて自分が王国から指名手配されていることを知った。罪状は国家反逆罪だ。クーリア曰く、殺人未遂よりも重いらしい。捕まったら間違いなく死罪だそうだ。


 じゃあなんで指名手配中の僕が堂々とカフェでコーヒーを飲んでるか、だって?その理由は美月さんから貰ったこのローブにある。このローブには『認識阻害』が付与されているので誰も僕を指名手配犯の天草紘太とは気付かないのだ。捕まる気も冤罪を晴らす気もない僕にとって最高のアイテムだ。


「そうだ。クーリアの住んでた国って大体どこらへんなんだ?」


 僕らの旅の一番の目的であるクーリアの故郷にレッツゴーを達成するため目的地の場所を聞く。


「うーん、ここからもう少し南の方……かなぁ?」


「なんで疑問形なんだ?」


「う、じ、実は……」


「ん?」


「よく分からないんだよね。あはは……」


「……まじですか」


 どうやらクーリアは自国以外のことはあまり知らないらしく、自分たちが暮らす国の他にもっといろんな国があるよ、くらいしか教えてもらってないらしい。


「ごめんなさい……」


「まあ、分からないんなら仕方ないな。賭けに近いがまったく別の場所に転移する方法もあるし……」


「へぇ!紘太はやっぱりすごいね!」


「う、うん……」


 別の場所に転移する方法とは、もちろん美月さんが色々な場所に設置したゲートだ。僕の手柄じゃない。だけど、クーリアのキラキラした目を見ると言い出しづらい……。ごめんなさい、美月さん。


「よし、そろそろ行くか」


「うん」


「あの……少しよろしいですか?」


 コーヒーも飲み終えたのでそろそろ行こうとした時、純白の髪を靡かせた綺麗な女性が話しかけてきた。だが、僕は知っている。こういう綺麗な人が話しかけてきた場合、その内容は必ず厄介ごとであると。


(慎重に話を聞く必要があるな……)


 そう思いながらひとまず話を聞いてみる。


「どうかしましたか?」


「えっと……その……」


 彼女は話す事をまとめていなかったのか、言葉が詰まっているようだった。


「す、少しお話をしませんか……!」


 そう言った彼女の頬は少し赤くなっていた。どこか既視感のあるその光景に僕は冷や汗をかいてしまう。


(あぁ、なんか経験したな、この状況)


 だからこそ僕は冷静に対応する。


「すいません。今ちょっと忙しいので失礼します」


 僕はそう言ってクーリアの手を引き、その場から立ち去ろうとする。


「あ、ちょ、待って!」


 彼女は僕のローブを掴んで引き止めようとする。その必死な様子から僕は推測する。


(もしかして……バレたか?)


 おそらく彼女は何らかの方法で『認識阻害』を掻い潜り、僕の正体を見破った。そして今は兵士の到着待ちで僕を引き止めようとしている。


(これだ!!)


 そう結論づけた僕は早急にここを離れることにした。


「すいません。急いでるので」


「ちょちょ、待って!お願い!」


 彼女が割と大声で引き止めるので周りから注目されてしまう。どうしようかと迷っているとクーリアが小声で話しかけてきた。


「紘太。このお姉さんの話を聞いてあげようよ」


「クーリア?どうしてだ?」


「上手く言えないんだけど……多分紘太が思うような人じゃないと思うよ」


「うーん……」


 僕は少し考える。彼女の話を聞くことはあまり得策ではないだろう。僕の出した結論が合っている可能性は十分ある。


 だが、クーリアの言葉には力がこもっていると前から思っていたのは事実だ。僕が男を殺そうとするのを止めた時にも力があったのを覚えている。故に僕は彼女に従ったのだ。


(……クーリアを信じてみるか)


 僕はクーリアの言葉を信じることにした。


「はぁ、いいよ。少し話をしよっか。でも、場所は移動だね」


 彼女は僕の了承の言葉を聞いてパーッと顔が明るくなるが、左右をチラチラッと見た僕を真似て左右を見た後に赤面する。


 なぜなら店の中にいる人全員が僕たちの方を見ていたからだ。つまりこの場の全員がさっきまでの彼女の駄々を捏ねた子供のような引き止めを目撃したのである。


「ほら、行くよ」


 僕は赤面する彼女の手を引いて店内を出る。ちなみにこの店のお会計は前払いだから済ませてある。







 僕たちは店を出て少し歩いたところにある路地裏に入った。


「それでどうしたの?」


 僕は彼女に尋ねる。あそこまで必死に止めたのには必ず理由があるはずだ。


「私はノルン=ネストリウス。あなたも知ってるでしょうけど、ここ――ネストリウス領の領主の娘よ」


「ふむ……」


 本当にまったく知らなかったけど知ってる雰囲気を醸し出す。しょうがないじゃん、知ってる体で話されちゃったんだから。


「あなたたちは連続幼児誘拐事件って事件は知ってる?」


「いや、知らない」


 今度は聞かれたので正直に答える。さっきもこう来てほしかったな。


「……どうしましょう」


 ノルンは何かを考えているみたいだ。口に手を当てて下を向いている。すると、僕たちの元に別の女性が現れた。彼女は黒髪を後ろで束ね、眼鏡をかけている。


「お嬢様、よろしいですか?」


 黒髪の女性はノルンをお嬢様と呼んで、指示を待っている。おそらくノルンの侍女だろう。


「ん?あ、メリーナ!よかった!ちょっと相談したいことがあるんだけど……」


「はい。私も同じです。なので一旦お屋敷に戻りませんか?」


「え?わ、私はいいけど……いいの?」


 ノルンはメリーナに視線で伝える。まあ、おそらく僕たちを連れて行ってもいいのか?という意味だろう。


「はい、構いません。お二人にも来ていただきましょう」


 ノルンはもう一度僕たちの方を向き直して話した。


「ごめんなさい。話の続きは私の家でもいいかしら?」


 ということで僕たちはノルンの家――貴族のお屋敷を訪ねることになった。


読んでいただきありがとうございます。


とりあえず次回で投稿を一旦終了しようと思います。前に書いた通り、3月に復活するので気になる方は3月までお待ちいただけるとありがたいです。


では、次回をお楽しみに。

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