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異世界召喚のデバフ使い〜宵闇を従えし少年は最強の道を進む〜  作者: 白崎仁
第三章 デバフ使いと侯爵令嬢
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調査開始!



 連続幼児誘拐事件。それはネストリウス侯爵領の周辺で起こっている事件だ。


 この事件は一月に一度のペースで四歳から十歳までの子供が何者かに誘拐されるというものなのだが、普通の誘拐事件とは異なる点がある。


 まずは誘拐が必ず夜に起こるという点だ。昼間に誘拐されることは一度もない。それは朝、夕方も同様だ。


 次に子供たちが誘拐された場所だ。その場所は子供によって様々で、道端だったり路地裏だったり、家だったりと一貫性がないのだ。


 これらから捜査は難航するかと思われたが、事件は犯行場所であるネストリウス侯爵領の領主ルーカス=ネストリウスの逮捕で幕を閉じることとなる。



「……以上が事件の概要です。何か質問は?」


「いえ、何もないわ」


 ネストリウス侯爵家長女のノルンは侍女であるメリーナに調べさせた事件の概要を聞きながら考える。


 一応、自身の領地で起きた事件なのでノルンもなんとなくは知っていた。だが、犯人の捜査や誘拐された子供の捜索はルーカスや国が派遣した兵士が行っていたので詳しくは教えてもらっていなかったのだ。


「やっぱり犯人はなんらかの魔法を使ったのよね?そうでもしないと家に気付かれずに入ることなんて出来ないし」


「おそらくそうでしょう。ただ、何の魔法かと言われれば判断しかねます」


「それともう一つ。犯人は魔法を使えるのに、何故犯行を夜限定にしたのか。わざわざ危険を冒してまで家に侵入するよりかは昼間の誰も見ていない時に犯行に及んだ方が安全よね?」


「まったくその通りでございます。お嬢様は誘拐犯の経験が?」


「無いわよ!!冗談は程々にしてよね、まったく」


 メリーナの質の悪い冗談にツッコミながらも可能性を探すことを続けるノルン。だが、やはり巧妙に姿を隠せる者という結論にしか至らない。


「お嬢様、一つよろしいですか?」


 メリーナはさっきまでの雰囲気とは打って変わり、とても真剣な雰囲気でノルンに話しかけた。ノルンも真剣な顔になって答える。


「ええ、いいわよ」


「現状調べた限りではご主人様が犯人という明確な証拠はありません。ですが、事件が起きた領地の領主だからという理由だけでご主人様は逮捕されてしまいました。こうなってしまってはご主人様が裁かれるのも時間の問題です」


「……分かってるわよ。だから、こうして調べてるんじゃない」


「もしご主人様が犯人でないのなら一体誰が犯人なのでしょうか」


「だーかーらー!!」


「これは私がたどり着いた突拍子のない、あくまで可能性の一つです。根拠はありますが、確信はありません」


「もう、さっきから何なの?はっきり言いなさいよ」


「……吸血鬼をご存知でしょうか」


 吸血鬼。それは人の血肉を主な食料とする魔物の一種だ。その生態はあまり知られてはいないが、一説によると陽の光が苦手らしい。


 その昔、今のネストリウス侯爵領は吸血鬼たちの住処だったと言われている。そのため、ノルンも吸血鬼のことは知っていた。


「ええ、知ってるわ。でもたしか吸血鬼って絶滅したんじゃなかったっけ?」


 ノルンの言う通り、現代にはもう吸血鬼はいないと言われている。吸血鬼が蔓延っていた時代に吸血鬼ハンターなる者たちが狩り尽くしたからだそうだ。


「たしかに今の人間にはそう伝わっています。ですが、もしも生き残りがいたとしたら?」


「な、なによ。確証はあるの?」


「先ほども申し上げた通り、確証はありません。ですが、可能性はあります」


 メリーナは集めた資料を机に並べる。そして所々に丸を振っていく。


「今、丸を振った部分が吸血鬼が犯人だという根拠になり得る部分です。何か質問はありますか?」


 ノルンは丸が振られた部分を読んでいく。その中には狙われたのが皆子供という点と犯行時刻が夜という点があった。


「なんで狙われたのは子供なの?」


「吸血鬼はより若く新鮮な血肉を求めます。一番は十歳までの子供だと文献で見ました」


 筋は通っている。ノルンはそう感じた。だが、一番の問題は存在するか否かというところだ。そもそも存在しなければ

事件の起こしようがない。


「お嬢様」


 迷っているノルンにメリーナが問いかける。


「時間的には、お嬢様が考えた魔法使い説か私が唱える吸血鬼説のどちらかしか調べることができないでしょう。お嬢様はどちらを選ばれますか?」


 証拠はないが探せばいるであろう魔法使いか、根拠はあるが存在するかどうかが分からない吸血鬼か。


 少し考えた後、ノルンは決めた。


「決めたわ。私は……吸血鬼を探す」


「お嬢様……」


「か、勘違いしないでよね!私は私なりに考えた結果、この結論に至ったの!」


 ノルンはまるでツンデレ女子のような返しをする。その様子を見て、メリーナは微笑む。


「ま、まあ少しはメリーナのおかげでもあるけど……ね」


 メリーナはそれを聞いてノルンから顔を逸らす。少し頬が赤くなっていたことから、どうやら照れているらしい。


「そ、それで!吸血鬼を探すための良い方法はあるの?」


「ご、ゴホン。そ、そうですね。おそらく吸血鬼は昼の間にターゲットを物色してると思われます。だから明日の朝から町の方を張っていれば怪しい人が見つかるかもしれません」


「で、でも吸血鬼って陽の光が……」


「どうやら吸血鬼は直射日光に当たらなければいいようです。だから日光を遮断する傘やローブを着ている人が怪しいと思います」


「なるほどね……。よし、じゃあ早速明日から張り込むわよ!」


「承知しました」


 こうしてノルンは吸血鬼探しをするため、町に張り込むことにしたのだった。


◇◇◇


 翌日、朝のランニングを終えた後、ノルンは町に向かった。もちろん目立たない服装をして、ノルンとバレないようにしている。


 目標は日傘をさしている人物、ローブを着ている人物だ。とりあえずそういった人物を見かけたら手当たり次第に声を掛けることにした。


(よし、行くわよ!!)












(はぁ……全然いないじゃない……)


 奮闘すること約三、四時間。ノルンは一向に怪しい人物を見つけられずにいた。そもそも、日傘をさしたりローブを着ている人物がいないのだ。


(お腹も空いたし、一旦休憩ね)


 時刻は昼過ぎ。そろそろお腹が空いてもおかしくはない。ということでノルンはカフェに向かうことにした。


 一番近くのカフェに入り席を探すため店内をキョロキョロする。すると、端っこの二人がけの席に見つけた。昼間から黒いローブを着る人物を。向かいにはネコミミの少女もいる。


 ノルンは堪らずその人物のところに向かった。


「あの……ちょっといいですか?」


 そう声をかけたノルンを見たのはノルンと同い年ぐらいの一見優しそうな少年だった。


読んでいただきありがとうございます。


次回から紘太くん視点に戻ります。まあ、でもほぼ続きみたいな感じです。


もし面白いと思っていただけたら、応援よろしくお願いします!

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