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異世界召喚のデバフ使い〜宵闇を従えし少年は最強の道を進む〜  作者: 白崎仁
第二章 デバフ使いとネコミミ少女
12/19

研究所の実態



 ブレスヘイナが二体の魔物を追いかけていった時、僕は宙を舞っていた。


「いけぇ!ブライディア!!」


 男が叫ぶと黒白シカのブライディアが固有魔法の影を飛ばしてきた。僕は空中で風属性魔法を発動して影の串刺しを回避する。


――風属性Lv2魔法 突風波

  任意の方向に突風を発生させる魔法。ただし突風に攻撃能力はなく、あくまで敵を遠くにやったり、自分の移動のために使う。


 その移動先を狙って白ケルベロスが電撃を放ってきた。電撃耐性があるとはいえ、真正面から受けるのは良くないので『宵闇』でガードする。


 だが、ここで真後ろからとても嫌な気配を感じた。すると次の瞬間、とてつもない衝撃が全身を襲った。


「ガハッ……!」


 衝撃で大きく吹き飛ばされ、地面を転がった後、大木にぶつかって肺中の空気が押し出された。


 さっきまでいた場所を見ると、ゴリラ魔物がその大きな腕を振り上げている姿が見えた。


 咄嗟に『宵闇』を真後ろに展開したことで直撃は免れたが、それでも衝撃は凄まじかった。おそらく骨は折れてただろう。本当に直撃を避けることができてよかった。


「おいおい、もう終わりかぁ?意外と呆気なかったなぁ」


 男がニヤニヤしながら近寄ってくる。僕はなんとか大木を背もたれにして座った。


「はぁ……はぁ……なんなんだ、あの、魔物は……」


 僕は質問をすることで時間稼ぎをしようとする。話に応じるかどうかは賭けだが……


「ふっ、いいぜ。冥土の土産に教えてやるよ。研究のことをな」


 どうやら上手くいったようだ。そのまま男は自分たちの研究内容について語り始めた。


「魔物は一体につき一つの魔石を持っているのは知っているな?」


 この話は王国で教えてもらった。だが、それがあの魔物たちと関係があるのだろうか?


「魔石はいわば魔物におけるDNAのようなものだ。魔石によって魔物は使える魔法が決まる。当然、同じ種類の魔物なら同じ魔法を使うことになる」


 男は実例として僕たちに差し向けた白狼を例に挙げた。彼らの固有魔法は『電流操作』と『電撃耐性』。三匹ともに共通していたことを思い出す。


「となれば、当然魔物の研究者はこう考える。ある魔物にもう一つ、別種類の魔石を入れたらどうなるのか?ってな。そうして研究者たちは実験を始めたが、実験は失敗に終わった。二種類の魔石を取り込んだ魔物は例外なく死んでいった」


 男はニヤニヤしながら「そこに現れたのがこの俺だ!」と自慢そうに語り始めた。少々イラッとするのは我慢しておこう。


「俺も最初は同じ実験してたんだがな。実験していくうちにあることに気がついた。それは魔石は慣れるということだ」


「慣れる?」


「ああ。魔物が死んでしまうのは魔石同士の反発が原因だったんだが、同じ魔石を何回も使えば使うほどだんだん反発が弱まることに気付いてな。この発見によって魔物に二つ以上の魔石を取り込ませることが出来るようになったってわけだ」


 今ここにいる黒白シカや白ケルベロス、ゴリラ魔物たちは皆そうやって生み出された魔物たちなのだろう。


 僕は最後に一つ、最も大事なことを聞いた。


「なぜクーリアを誘拐したんだ?お前の魔物研究には必要ないだろ?」


 僕の問いかけに男はさらにニヤニヤしながら答えた。


「たしかに俺は魔物研究をしている。だが、研究者の好奇心は尽きないものでな。魔物の次は獣人を研究したかったんだよ。そんな時あいつを見つけたんだ。いやぁ、研究者ながら運命っていう非現実的なものを感じたなぁ!あははは!!」


 男の下卑た笑いが響く。再び怒りの感情が心の奥底から湧き上がってきた。


(やはりこいつは駄目だ。市民の為がどうとか、そんなのは知らない。僕には関係ない。こいつは……殺そう)


 そう決意した僕はブレスヘイナの邪魔にならないよう範囲を指定してデバフ魔法を発動した。


「ん?どうした、お前ら?」


 男が従える魔物たちは異変に気付き、異変の原因である僕を睨んでいる。僕は逆に魔物たちを睨み返す。


「……ガキィ。お前か?」


 男はさっきまでの笑いが嘘のように苛立っているようだ。その問いに対して僕はニヤリとした笑みで返した。


「や、やれ!お前ら!」


 男はバッと後ろに飛び退き、魔物たちへ命令した。魔物たちは命令に応じようとするが、目に見えてうまく動かないようだった。


 その間に僕は最大出力で『宵闇』を発動する。そして形状変化で巨大な大剣に変化させ、さらに性質変化で金属へと変化させる。


「なんだよ、そのバカでかい剣は……」


 大剣の全長はゴリラ魔物に匹敵するほど大きく、手から離して操作するのは至難の業だがなんとかやってのける。火事場の馬鹿力というやつだ。


 僕はゆったりとした動きで大剣を振るう。男と魔物たちは一斉に大剣を躱すが、もちろんそれで終わりではない。


 スッと左手をかざすと、そこから光の球が無数に飛び出す。今、回避したばかりの男たちはその球を避けきれず、ほぼ直撃してしまう。


「ぐぁ……」


――光属性Lv4魔法 光連弾

  光の球を作り出し、それを相手にぶつけることで物理ダメージを与える魔法だ。作ることのできる球は魔力に比例する。


 さっきから魔物に戦闘を任していることから、おそらく男を含めた研究員は戦闘力はほぼ皆無なのだろう。なら、優先すべきは……


「くらえ」


 まずは黒白シカに狙いを定めた僕は大剣を振るう。が、ゴリラ魔物の大きな腕に阻まれる。どうやらゴリラ魔物は自身の肉体を強化する固有魔法が使えるらしい。


「ウホッ!!」


 ゴリラ魔物が叫べば、更にその体が肥大化する。まだムキムキになるつもりだ。それに気付いた僕は形状変化で大剣を杭のような形に変化させる。そして、それを弓を引くように引っ張り、一気にゴリラ魔物へ放つ。


「ヴォッ……!」


 杭は未だパワーアップ中のゴリラ魔物の胸を貫通し、大きな風穴を開けた。僕はそのまま倒れ込むゴリラ魔物を侵食で飲み込む。


 すると、僕の元へ影の斬撃が前後左右から飛んできた。それを『魔力感知』で感知していたので、上空へジャンプして回避する。


 そこへバチバチッと音を立てながら、白ケルベロスが高速でタックルしてきた。さすがに避けきれないと判断し、両手を胸の前でクロスして防御体勢を取る。


「グルァァッッ!!」


 白ケルベロスの雄叫びが響き、雷を纏った三つの頭が僕の胸にぶつかる。なかなかの衝撃で飛ばされるが、先ほどのような失態は犯さない。


 飛ばされた先の木に足で着地し、それを足場として突進を終えたばかりの白ケルベロスに逆に突っ込む。


 まるでお返しと言わんばかりに『宵闇』を右手に纏わせ、その拳で白ケルベロスをぶん殴る。メキメキッという音を響かせながら白ケルベロスは遥か後方へ吹き飛んでいった。


 その間に何やら魔力を溜め込んでいた黒白シカがとても大きな雄叫びを上げた。その声にすら魔力が乗っているようで肌がビリビリと震えた。


 僕はスッと目を細める。黒白シカは溜め込んだ魔力を一気に放ち、数百以上の影の触手を生み出した。触手は一本一本が意思を持っているようで、それぞれが各方向から襲ってきた。


「いいぞ!ブライディア!やれぇ、やってしまえ!」


 男が後ろの方で黒白シカを応援している。その様子はまるで虎の威を借る狐だ。


 僕は黒白シカの影と同じように『宵闇』を触手のように形状変化させ、性質変化で金属に変化させる。さすがに数は負けてしまうが、その分をステータスの差でカバーする。


 影の触手約四十本に対し、『宵闇』の触手十本で対応する。互いは移動しない。ただ周りで触手同士の激しい応酬が繰り返されるだけ。


 そんな拮抗した状態を破ったのは僕の攻撃だった。


「撃ち抜け」


 手を銃の形にして伸ばした指の先から魔法を放つ。


――風属性Lv6魔法 飛雷槍

  槍の形をした雷を指定した方向に飛ばしたり、そのまま持って攻撃したり出来る魔法。今回は魔力を極限まで圧縮することで極小サイズで放った。


 しかもこの飛雷槍はさっき、どさくさに紛れて侵食した白ケルベロスの固有魔法『雷光』で威力、速度が強化されている。


 飛雷槍は『魔力感知』『感覚強化』で見つけた、影と『宵闇』の隙間を確実に通り抜け、黒白シカの脳天を見事撃ち抜いた。


 黒白シカが「ブモォォ……」と鳴きながら倒れるのと同時に触手の影が消滅した。どうやら魔物との戦闘は僕の完全勝利のようだ。となると残りは……



まずは読んでいただきありがとうございます。


久しぶりの投稿です。投稿頻度が遅くてすみません。

これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。


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