異世界召喚
僕の名前は天草紘太。高校二年生だ。僕の特徴は平凡。成績も運動も何もかもが平均レベルなことだ。唯一の特技といえば、人よりも耳がいいことくらいだ。
そんな僕はある日、ラノベでよくある異世界召喚に巻き込まれた。それも僕のクラス丸ごとだ。
教室が急に眩しい光に包まれる。光が消えると、そこはもう見慣れた教室ではなかった。
「おぉ、やって来てくれたか!異世界の勇者たちよ!我々はそなたらを歓迎するぞ!!」
僕らを召喚したのは、人族の王であるグスタフ=リグノリア3世率いる魔術師部隊で、召喚先は王城の玉座の間だった。この国に代々伝わる『勇者召喚の儀』を行ったら、僕たちが召喚されたらしい。
国王が言うには、現在この世界には数多くの種族が存在するのだが、その中の魔族という種族が他の種族を脅かしているらしい。中でも人族は全種族の中でも能力値が低いので、魔族からよく狙われているようだ。
そんな魔族の魔の手から人族を守るために召喚されたのが僕たち異世界人だ。異世界人というのは確定で特別な力を持っているらしい。その力で人族の危機を救ってほしいとのことだ。
僕らは戸惑い、どうするか迷っていた。根本的なことを忘れていた。だが、冷静にそこを指摘する人も中にはいる。
「俺たちは無理やりこの世界に連れてこられたんだが、元の世界に帰る方法はあるのか?」
彼は天王寺 佑哉。僕らのリーダー的存在で、僕の幼なじみの一人だ。彼は運動神経抜群、頭脳明晰、そして爽やかイケメンなルックスと誰に対しても優しい性格からよくモテる。いわゆる完璧超人だ。
「残念だが、向こうの世界に戻る術はない。だからこそ、そなたらが人族の危機を救ってくれた暁には、こちらで何不自由ない生活を送れるように手配しよう。約束する」
ここで僕らは衝撃の事実を知った。もう二度と元の世界には帰れない。絶望した者も少なくないだろう。だが、佑哉は少し考えた後、大きな声で僕らに語りかける。
「何も心配することはないじゃないか。元の世界に戻れないのは悲しいが、生活の保障はしてくれる。それにもしかしたら、いつか帰る方法が見つかるかもしれない。それまではこの世界に生きる人のために頑張るのも悪くないんじゃないか?」
その一言で僕らは意思を固めた。恐怖が残る者もいるだろうが、佑哉の言葉はそれをかき消す力を持っている。それが彼の力だろう。
◇◇◇
それから僕たちはこの世界で生きる術を学んだ。ステータスオープンと言えば自身のステータスが確認できること、この世界の通貨のこと、冒険者ギルドのこと。ちなみに言語は勝手に翻訳されるらしい。今も国王の言葉は日本語で聞こえている。
ひとまず僕は自身のステータスを確認した。
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コウタ=アマクサ Lv1 《デバフ使い》
魔力 120/120
攻撃 15
防御 22
魔攻 25
魔耐 25
敏捷 27
運 140
使用可能魔法:攻撃力低下Lv1、防御力低下Lv1、
速度低下Lv1
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うん、なんかツッコミたいところが一つあるが、今はとりあえず置いておこう。ただ使用可能魔法は完全にゲームのデバフだな。ここにHPの項目が無いのが現実であることを物語っている気がする。
周りからいろいろな声が上がる。クラスメイトも自身のステータスを確認しているようだ。僕のステータスはいい方なのか、どうだろうか。
「紘太くん!ステータスはどうだった?」
彼女は羽島 彩。僕のもう一人の幼なじみで、学校一の美少女と言われている。僕と佑哉と彩は昔からずっと一緒だった。その友情は今でも変わらないと、この時までは思っていた。
「僕はこんな感じだよ」
そう言って、彩にステータスを見せる。その間に、僕は涙のステータスを見せてもらった。
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アヤ=ハシマ Lv1 《白魔術師》
魔力 130/130
攻撃 12
防御 24
魔攻 30
魔耐 22
敏捷 25
運 28
使用可能魔法:光属性魔法Lv1、回復魔法Lv1、
浄化魔法Lv1
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うーん、僕のステータスとそこまで大差ないなー。ただ運だけは僕が異常に高いのは何故なんだろう。今までの人生で運良いと思ったこと一回もないんだけどな。使用可能魔法はさすが白魔術師といったところか。
「紘太くん、運の数値がすごいね!それに比べて私って……」
「べ、別に彩が気にすることじゃないよ。彩は彩で良いところがたくさんあるんだしさ」
「紘太くん……」
「お、二人で何の話してるんだ?俺も混ぜてくれよ!!」
そこに佑哉がやってきた。僕は話の流れで佑哉のステータスも見せてもらった。
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ユウヤ=テンノウジ Lv1 《魔法剣士》
魔力 150/150
攻撃 38
防御 35
魔攻 41
魔耐 30
敏捷 40
運 21
使用可能魔法:火属性魔法Lv1、水属性魔法Lv1
風属性魔法Lv1、土属性魔法Lv1、
斬撃強化、身体能力強化
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さすが佑哉だ。使用可能魔法、基礎能力値がどれも僕を上回っている。ただ一つ、運だけを除いて。
「ふむ……って、は?お前の運高すぎだろ!まあ、でもその他はどれも平均だな」
「いや、その他の能力値が全て上回ってる人に言われてもな」
「まあ、普段からの鍛え方が違うってやつよ!な、彩!」
「ふふッ、佑哉くんは昔から頑張ってるもんね」
「おうよ!ったく、紘太も少しは鍛えろよな」
「僕はいいよ……」
どうせ鍛えたところで佑哉には劣るんだ。辛い現実を目の当たりにするぐらいなら、最初からやらない方がまだマシだろう。
「皆さん、ステータスはもう確認しましたでしょうか?」
そう笑顔で話しかけてくるのが、この国の第一王女グレイス=リグノリアだ。その顔はとても綺麗でスタイルも抜群。男なら二度見はするであろう容姿を兼ね備えた人だ。
「はい!全員確認したと思います!」
「そうですか!それで佑哉様はどうでしたか?」
「じ、自分はこんな感じです!」
そう言って佑哉は自分のステータスをグレイスさんに見せる。さすがの佑哉もこんな美人に寄られたらたじろいでしまうみたいだ。
「へ〜、さすが勇者様です!初期ステータスがここまで高いとは……!感服です!」
「そ、そうかな?」
「はい!紘太様はどうでしたか?」
グレイスさんはパッとこっちを向くと、今度は俺に尋ねてくる。あまり佑哉の後に聞いてほしくないんだけど……。まあ、ここで答えないのも失礼な気がするので一応見せる。
「僕はこんな感じです」
「ふむふむ……ん?」
「あはは、平凡でしょ?って、どうかしましたか?」
「《デバフ使い》……ですか」
「何かダメなことが?」
ひとまずネガティブな質問をしてみる。こうしておくと本当にダメだった場合、負う傷は浅くて済む。長年の経験で得た知恵というものだ。
「そうですね……」
グレイスさんは少し黙った後、俺にそっと耳打ちをした。
「後でお話しするので、お部屋で待っててください」
「え?」
再度、僕が聞き返しても彼女はニコッと微笑むだけで何も答えない。えぇ〜、なんか面倒ごとになりそうで嫌だな。
と、背後からものすごい冷たい空気を感じて振り向く。そこには彩がいた。だが、彼女は笑顔なので多分違うのだろう。あくまで多分だけど……。
◇◇◇
その後、僕たちは一旦自室へと案内された。王城の中にたくさんの部屋があるらしく、僕たちは一人一室という好待遇を受けた。
部屋に入って僕は真っ先にベッドに寝転ぶ。まだ時刻は夕方のようだが色々と疲れた。
ひとまず誰かが来るまで仮眠でも取ろうかと思った矢先、その誰かが来てしまった。そして僕は思い出す。ああ、あの人か、と。
新連載です。
異世界召喚ものは初めて書くので、至らぬ点も多々あると思いますが、どうか温かい目で見てやってください。