孤独な竜
きゅうきゅうと、鳴きながらアルマジロのように丸まった竜は、語りだした。
「アリンが、死んだの。僕はひとりなんだ。僕が弱いから。」
瞳から大粒の涙をこぼしながら。
竜は泣けるのかと不思議に思いながらも、固い鱗で覆われた頭をそっと撫でる。
「君もひとりなんだ。同じだね。私もひとりなんだ。この広い世界にたったひとり。辛いね。悲しいね。寂しいね。」
黒い瞳がこちらをみる。
「人間もひとりなの?僕と同じなの?」
「そう、同じだよ。寂しくて辛くて死にそうなんだ。」
「僕と同じだ。」
きゅうきゅうと鳴く。
村に恐怖を与えた、この竜の鳴き声。
寂しくって辛くって孤独な竜。
どこか夢ではと思っていた。
竜が鳴くから、その魂の叫びは私の心と同調した。
大きな頭をそっと抱き締めて。
小さなものたちが囁く。
つがいだよ。
しんだんだ。
それを聞くと、きゅうっと力をいれ、泣いたのだった。
「君はどうして丸まってるの?」
きゅ。
「アンリの卵だよ。暖めてるの。でも、お腹すいちゃって。」
「卵があるの!見せて!」
アルマジロはそっと、卵を見せてくれた。
大きな卵だ。直径30センチはあるだろうか。
黒い鱗の竜と黒い卵。
ずっと抱き締めていたのだろ。
「卵は代わりに温めてあげるから、狩りに行ってくるといいよ。」
「でも。アンリの卵とらない?」
「卵を取ったりしないよ。そうしたら君は一人になるじゃないか。一人にしないよ。」
「わかった!お腹すいたの。」
きゅー。と鳴くと、大きな翼を広げた。
「あそうだ!村に来ない?そうしたら、みんなと一緒にいれるよ。一人にならない。人間だけど、ここは寂しいよ。雪がもっとふるよ。」
「一緒にいてくれるの?寂しくない?」
「うん!ここで待ってるから、狩りに行ってきなよ!お腹が膨れたら村にいこうよ!」
きゅうきゅうと鳴いて空に飛んだ。