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ここはどこ

原口百々華23歳。

事務員。

ただいま、感情が迷子です。

ギラつく太陽の下で、クーラーの効いたとある弱小企業の一室で、十二時に時計の針が重なった。


決して多くはない時、いや、むしろ少ない給料では、財布片手に優雅にランチとは行かず、質素に夕飯の残りと朝に焼いた卵焼きが入った弁当を机の上に広げるのであった。






私が覚えているのは、そこまでだった。

気がついたら、林のなかで、煙の見える方向に歩いてゆくと、家が集まる集落にたどり着いたのだった。

そこは雪の降る見たことのない家々が並び、たなびく煙が幻想的にすら見えていた。


半袖にタイトスカートにパンプスという格好では、寒くて凍える体を抱え、混乱する頭と不安感が襲っていた。


「ここってどこなのよ」

「どう考えったって、私の知ってるところじゃないわ」

処理出来ないほどの感情と、情報に私は気を失うのであった。



パチパチと薪がはぜる音に目がさめると、自分が全く知らないところにいた。


木造の梁に積み重なった石材が目に入る。

チクチクと刺さる感触が体に感じる。


そっと、視線を人のいる気配に向けた。


「ここは、どこですか」

「おや、目が覚めたかい?。

気分はどうだい。二日ほど目を覚まさないからびっくりしたよ。」


民族衣装だろうか。古めかしい格好の老婆がそういった。

目が覚めたことが嬉しいのか、嬉しそうだ。


「えっと、ありがとうございます。」

と、いうと体をお越した。

「お前さんは、林の手前で行き倒れていたんだよ。

じいさんが、通りがかったからいいものの、この寒さにそのへんちくりんな格好じゃ、死んでいたかもしれないね。」

「助けていただいて、ありがとうございます。何も持ち合わせて、居ないので、お礼ができないのですが。」

「何ってんだい!

恐らく、身ぐるみ全部剥がされたんだろ。これから、雪が深くなるよ。まずは、服を着たらいい。ちょうど、スープもできた頃だ。」

冬に半袖にタイトスカートでは、服を着てないも同然で、この老婆は勘違いをしたようだった。

ここが何処で何なのか、判断できない以上はその勘違いを、直そうとは思わず、静に苦笑いをするだけであった。

「百々華。原口百々華って言います。」

「ももかって言うのかい?私は、アズーリ。

ボッカ村の村長の妻だ。さあ、スープが出来たからお食べ。」

隣の暖炉の前にあるテーブルにうながされ、熱々のスープを頂くことにした。





ありがとうございます

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