第7話:いざ敵討ち
気づけばもう1年が経ったのか…
昔の俺であれば屍になっていたであろう、この場所は今やウォーミングアップにしか感じられない。
すでに俺たちはプリメランを離れ、魔王のおやっさんが支配していた領域近くの町で腕を磨いていたが、つい先日、サラが
「そろそろ父の城へ行く時期ですかね…」
とぼやいていたのを聞いた。
遂に敵討ちが始まるのか。だが、俺らはたった2人である。
いけるのか…あのおやっさんを倒したやつに。
正直、不意打ちを仕掛けなければ勝てる気が全くしない。だが、それでも行くというのなら俺は行こうではないか。
そう決心し最後の群れのボスの首を討ち取り早めではあるがさっさと帰宅した。
いつ行くのかわからないのでな。
〜数日後〜
普段通りに早めに帰るとサラが真面目な顔をして椅子に座っていた。
そして、ゆっくりと腰を上げこちらに近づき、
「春月殿、明日ギルドへ受注する前に話しておきたいことが…いきなりですが、明日我が城へ行きましょう」
遂にこの日が来たか…
頭の中でイメトレをしていたがいざ直面するとなると緊張するものだ。心臓の鼓動がバクバクと強く速く鳴っているのがわかる。
「だが、2人で大丈夫なのか?」
そう、数がいればいいわけではない。しかし、あまりに少ないのは問題なのだ。人間社会でもそう、多数派には敵わないのだ。
「そこは安心を。部下が待ち合わせ場所で待機しており、それから向かいます」
なるほど、そういうことだったのか。
逃げ切れた仲間をこの一年、俺がレベル上げしている間に集めたのだろう。
いつも宿泊先でこもっていたことを不思議に思っていたのだが、やっと謎が解けた。
それなら少しは勝機はあるのでは?
「では、明日のために早めに寝ましょう。大事な日になりますし」
俺は明日のために身支度を整えていつものようにサラと共にベットに入り深い眠りについた。
ーーーー
「くっ、なかなかやっかいだな」
ここは元おやっさんの領地である森、死者の森であり、現在俺はヌシ的存在と戦闘中である。
「死者の森とかいうからゾンビとか出ると思いきや、全く関係ないじゃねぇか!」
俺は叫びながらヌシの攻撃を避ける。
このヌシはゾンビとは関係のない植物系の魔物であるが、なかなかやっかいである。
火属性魔法さえ使えれば楽なのだが、あいにく俺は使えないのだ。
それに、
「地面からの攻撃がやっかいだな…」
そう奴が特にやっかいな部分は地面からの死角からの攻撃なのだ。
奴から遠くであれば避けるのも簡単だが、近くに近くにつれて根っこの攻撃が増えてくる。
「できれば、温存しておきたかったけど…!」
当初、魔力温存を基盤に進んでいたがこれでは魔力より先に体力の方が尽きてしまう。常に最善の策を立てながら場合によっては状況に応じなければいけない。
「…スレイン!」
スレイン:補助魔法の中で地味だがやっかいな魔法の一つ。斬撃系統の切れ味をあげる。
「ギャァアアアアアア」
スレインをかけたおかげで攻撃してきた根っこをいともたやすく切り落とせるうえ、やっと本体への攻撃が可能になった。これなら最初からかけておくべきだったな。
その後の戦闘は赤子を手をひねるくらい余裕であった。
「あとは…」
残りの戦力を倒さなければ…
今のところ負傷者だけで済んでいるが、いつ誰が死ぬかわからない。
いかに群れのリーダーを倒せるか、それにより死者の数が変動する。
まず初めにもっとも負傷しているあの人を
「リーザさん!左に飛んで!」
「…!了解!」
リーザさんは決して弱くは無い。むしろこの中でかなり強い部類なのだが、奇襲によって左足を負傷した。
そのため、攻撃するとき踏ん張れず劣勢に回っていたのだ。
まず、スレインでやつの盾を破壊、無力化しワープ魔法で背後に忍び寄り首をはねる。
何度も繰り返した流れ作業であったのでさっきのやつよりは断然楽であった。
たまたま通じるやつで良かったのもあるが、これも運である。
残りの戦力も僅かであったので極力負傷者を優先して倒していった。
「あと少しです、頑張りましょう」
そう声をかけて俺ら一行は何時間もかけて森を抜けた。
そういえば、なぜワープ魔法を使わないのであろう。
俺は無理だとしてサラならある程度の人数をワープさせられるであろうに、今更そんな思いが横切った。普通にワープさせ内側から攻めた方がいいであろうし、それに森林内を偵察している者もいるであろう。
そのため腑に落ちない点が多すぎる。
もう少し早めに気付くべきだったがもう遅い、懐かしの魔王城への到着だ。
だが、様子がおかしい。なぜならば堂々と門を通ろうとしているからだ。
「ちょっと待って!堂々と行きすぎだって!こういうのは裏から…」
と言い終わる前にサラに口を挟まれた。
「はて?なぜそのようなことを?」
「魔王のおやっさんを倒したやつなんだろ?ならもっと慎重に…」
サラは少し戸惑っていたようだがどうやら合点いったようで笑みを浮かべた。
「いえ、ここは強行突破で行きましょう」
サラに何かあるのだろうか、信じるしかない。
だが、ここで急に気付き始めた。
あれ、門番さん、俺たちスルーですか?
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