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07話「何が起きてるのか私にも分かりません!!」

 朝、ユウナが目を覚ますと、隣のベッドで寝ているはずのリーファが見当たらなかった。辺りを見渡すと、UFOキャッチャーの台の前に倒れているリーファの姿が目に入った。


「リーファ!?」


 倒れているリーファを見たユウナは、死んでいるのではないかと思い、急いでリーファのもとへ駆けつける。と言っても、窓際に散乱している窓ガラスの破片に気をつけながらなので、大して速くはない。


「リーファ!? 生きてる!?」


 リーファに駆け寄って生存確認を行う。すると


「すぅ……。もう食べられないよぉ……。むにゃむにゃ」


「寝てるだけかい!!」


 スパァン!!


 心配して損したと言いながらリーファを叩き起す。


「痛い! ハンバーガーが擬人化して殴ってきた!?」


 などとリーファは意味の分からない言葉を発して起き上がる。


「何寝ぼけてるの? てかハンバーガーが擬人化って何!? シュール過ぎるでしょ!」


「なんだ夢か……。美味しそうなハンバーガーだったのになぁ……。あ、ユウナおはよう」


「あ、って何よ!? あ、って!!」


 リーファについでのように、おはようと言われ怒るユウナ。叩き起した自分にも非があるとは思ってもいないらしい。


 だがそんな事よりも、と


「ねぇリーファ。どうして床で寝てたの?」


 とユウナはリーファに聞く。昨日はユウナのベッドに入り込んでいて、今日は床で寝ていたリーファ。二日も続くと偶然ではなく相当、寝相が悪いようだ。


 しかし、今日は寝相が悪かったからではなく


「そう! これなに!? この大きい謎の物体!」


 リーファがUFOキャッチャーの台を指さしてユウナに詰め寄る。


 どうやら賢者を知った時同様に、夜中にUFOキャッチャーの台を見たリーファは失神してしまったのだろう、とユウナは推測した。


「これがUFOキャッチャーだよ!」


「……どうやって使うものなの?」


 この世界には無い物故にリーファには、どうやって使う物なのか検討もつかない。


「今から実践してみるから枕を取ってくれる?」


 そこでユウナが実践して見せる事にした。取るものが無ければどうしようもないので、とりあえず枕を景品に見立ててプレイする。


 すると枕を取りに行ったリーファは


「窓ガラス!?」


 数分前のユウナ同様、割れて床に散乱しているガラスを見て絶叫していた。耐性が付いてきたのか、些細な事では失神しないようになってきたようだ。この先の成長が楽しみだ。ただ単に世間ズレしていくだけだろうが。


 そして枕を持ってユウナのもとへ戻ってくる。その枕をユウナが台の中に設置して、プレイを始める。


 1プレイは200アリア。日本の一般的な価格設定にする事にした。武器の相場が分からないので、相場によっては価格や難易度は変えざるを得なくなりそうだが。


 設置し終えたユウナは「よし!」とプレイしようとするが、プレイする為のお金がない。自分が無一文だということをすっかりと忘れていたようだ。


「ねぇ……。リーファ? 200アリア持ってる?」


「昨日、ギルドから報酬貰ったからあるよ〜!」


 と、リーファから200アリアを借りてプレイする。ギルドから貰ったからと言ったが、貰ってなければ無一文だったのだろうか。


 まぁ、そんな事はとりあえず置いておき、流石は【乱獲の鬼】と言われただけはあるようで、寸分違わぬ動きでアームを枕のタグに引っ掛ける。


 そして難なく一回で枕をゲットする。


「こうやってボタンを押し、アームを動かして台の中に入れてある景品を取るの!」


「でも、一回で取れちゃったら、とてもお金儲けなんて出来ないよ?」


 ユウナのプレイを見て簡単だと思ったのか、これではお金儲けなんて出来ないと言い出すリーファ。すると、その言葉を待ってましたと言わんばかりにユウナは


「じゃあ、リーファも一回やってみな? アームで枕を持ち上げたりして、穴に落とせばゲットだから」


 とリーファにプレイさせる。


「こんなんじゃ、到底お金儲けなんて出来ないと思うんだけどな……」


 と不満を漏らしながらリーファは200アリアを投入する。


 そしてアームを動かし、枕を持ち上げようとする……がアームの力が弱く持ち上がらない。


「ちょっとユウナ!? アームの力を弱めたでしょ!?」


 アームの力を弱くして、取れないように不正したと言いがかりを言うリーファ。その気持ちも分からなくはないが……


「そんな事する訳ないでしょ! 言いがかりはやめてよ!」


 もちろんユウナはアームの力を弱めたりなどしていない。これが初心者とプロとの技術の差だ。


 その後も200アリアを投入し続けるリーファ。少しずつながら、落とし口へと近づいてはいる枕。あと一歩の所で苦戦する事10分。遂にリーファの持ち金が底をついた。


 ギルドに貰った報酬は30万アリア。その全てをたった一つの枕ごときに消費してみせた。日本で枕一つに30万円も消費した馬鹿を見た事があるだろうか、いや無い!!


 しかし、これでリーファもお金儲けが出来るということが分かったことだろう。


 ちなみにお試し体験だったので、お金はユウナが台から取り出してリーファに返還しましたとさ。めでたしめでたし。


「うぅ……。全然取れなかった……」


 ユウナが一回で取ったのを見て、自分も取れると思っていたようだが、結果は取れず、リーファは相当ショックを受けたようだ。


「まぁ……。初めてだし……。しょうがないよ……」


 ユウナでさえ、何と励ましたら良いのか分からない程の落ち込みを見せる。


「とりあえず、UFOキャッチャーの事は忘れて街に行こうよ!」


「分かった! 色々と良い所教えてあげる!」


 リーファもユウナと同じく立ち直りが早いようだ。つけ加えると単純な所も同じようだ。


 そして二人で街に繰り出そうとすると


「ユウナさん。ユウナさん。至急ギルドまで来てください。」


 と放送が流れてきた。


 ユウナとリーファは初めこそ、なんだろうと思ったが、どうせ勇者に何か頼み事だろうと考えた。そしてさっさと用事を済ませてしまおうとギルドに向かった。


 部屋を出ると宿の女将さんがユウナとリーファを睨みつけていた。


「あの……。女将さん? 何で睨んでいらっしゃるのかなぁ〜? なんて……」


「さっき外から見たけど、窓ガラス割ってんじゃないよ!! ガラスがどれだけ高いか分かっているのかい!?」


 やっぱり窓ガラスの事が原因だったようだ。この世界では窓ガラスはとても高価な代物らしい。それをまだ泊まり始めて二日の冒険者に割られたのだ、怒るのも無理はない。勇者であろうと、そこら辺の対応に違いはない。


 その後も散々、女将さんに絞られ、再びギルドへ向かう頃には昼時になっていた。


 宿を出てギルドに向かう最中も、街の人々の視線が痛かった。所々、窓が割れていたり、植木鉢が割れていたり、屋台が壊れていたり……


 ユウナとリーファは顔を見合わせ、嫌な予感を共有していた。今までの傾向から言って、これらの被害がユウナの仕業であるのは明白だ。


 しかし、過程が二人には分からない。いや、訂正しよう。リーファには。少なくともユウナには心当たりがある。どうか思い違いでありますように、と心底願うユウナ。


 そして向かいのギルドへ向かうのに、二人は永遠とも感じられた時間を過ごし、覚悟を決めてギルドに入る。そしてユウナの思い違いではないとすぐに知らされる事になる。


「ユウナさぁぁぁぁん!!」


「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」


 シルフィの怒鳴り声が聞こえた瞬間、覚悟を決めていたユウナは人間の反応速度を超えるスピードで土下座を。それはそれは見事なジャンピング・ジャパニーズ土下座をして見せた。


「ホンッ! トに!! やらかしてくれましたね!?」


 シルフィは怒髪天を衝く程の怒りをオーラに纏い、ユウナににじり寄る。


 しかし、ユウナには心当たりはあるが、身に覚えのない事のため、単純に


「……何をですか?」


 とシルフィに問う。


「……え?」


 流石のシルフィも予想外の返答だったのか、素っ頓狂な声をあげ、怒りが一瞬にして鎮火していった。


「ユウナさん……。今なんて言いました……?」


 シルフィは自分の耳を疑ってか、ユウナに聞き返す。その問いに対してユウナはさも当然とばかりに


「いや……。何をですか? って……」


 とシルフィに告げる。


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


 ユウナの返答に完全に消えかけていたシルフィ怒りの炎は、油を注いだかのように一気に燃え上がった。


 リーファはその光景を腹立たしい事に楽しそうに見ていた。この後、ユウナと共に地獄を見る事になるとは知らずに。

遅くなってすみません!


なんだかんだ忙しかったため、なかなか書けずにいましたが! なんとか! 書きました!


次もいつになるか分からないですけど、ちゃんと更新しますねー!


ではではー

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