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04話「きっとこれも夢なんだろう。夢であってください」

 

 目を覚ますとそこはとても濃く記憶に焼き付いた、見覚えのある場所だった。元の世界の優奈の部屋……ではなく、ソフィアに召喚された場所。召喚時同様に淡い光で包まれた無機質な空間――天界だった。


 これでもかという程に叫んで叫んで叫びまくった場所だったため、記憶に焼き付くのも無理はない。そして召喚時同様に正面の玉座には自称女神ことソフィアが座っている。唯一以前と違う所は、現時点で既にソフィアがにやついている事だけだ。


 優奈はソフィアに色々と問いただしたいことが山ほどあるが、それよりも重要な要件がある。こんなにも早く恨みを晴らす機会がくるなんてと考えながら近づいて行くユウナ。


 そして、心を読むことの出来るソフィアはにやけていた顔を徐々に引き攣らせていく。


「心をよめるんだから、これから私のする事もその理由も分かりますよね!?」


「な、何のことでしょう?!」


「すっとぼけないで下さい!! いいですよ! 分かりました!! 言いますよ!! ちゃんと聞いてなさいよ!?」


「私はあなたを今からボッコボコにします。理由も要りますか?」


 鬼の様な形相で怒りを撒き散らす優奈。


 対して色白な顔をより一層白く、蒼白にしながらガクガク怯え、コクコク頷くソフィア。それを見た優奈は内心、「そんなに怯えるなら初めから、真面目にしておけば良かったのに」と思っていた。


 それでも、けじめをつけるべきだろう、とソフィアに向かって近づくのは止めない。


「ひと〜つ! 暇だからとか言って私を召喚したこと!」


「ふた〜つ! 能力を勝手に決め、その能力を帳消しにする程のハンデを付けたこと!」


「み〜っつ! 何の説明もなしに! 心の準備をする暇も与えずに! 強引に異世界に転移させたこと!」


「以上より被告人ソフィアは優奈脳内裁判によって有罪。ギルティ。私にボコられる刑に処す。反論は?」


「……ありません……。覚悟は出来てます……」


 優奈はやけに潔いなと呆気に取られ、嫌な予感がしながらも


「よろしい。行くぞ!!」


 そう言って優奈は走って距離を一気に詰める。そして、その勢いに乗ったまま拳を繰り出す。走った勢いの乗った拳はいくら女の子のものだとしても、それなりの威力にはなるだろう。


 ……しかし、その拳はソフィアのほんの少し前で、何かによって防がれてしまった。嫌な予感、的中である。


「え? 何これ……」


 優奈が何か得体の知れない物に渾身の一撃を防がれたことに驚きを隠せないでいる中


「アッハハ!! アハハハハ!! イッーヒッヒッ!!」


 いつかの悪夢が蘇る。


「私女神ですよ? 殴れるとでも思いました!? 馬鹿ですかぁ? 残念! 常にバリアが張られてますぅ〜! もっと強くなってから出直してらっしゃ〜〜い♪」


「めっちゃ! 腹立つぅ〜〜〜〜!!!」


 優奈の事を煽りに煽るソフィア。やっぱりこいつはどうにかしないといけないと再確認することになった。本当にこいつは女神なのだろうかと疑わずにはいられない。とあるラノベの表現を借りるとするならば、駄女神と言ったところであろう。


「プスッ! クスクスッ……はぁ〜あ。笑った笑った!」


「うるさいわ!」


「えーっと、今日、優奈さんを天界に呼んだ、というか私が優奈さんの夢に赴いた理由知りたいですか?」


「えっと? これ夢なんですか?」


 優奈はずっと、再び天界に召喚されたものだろうと思っていたが、その考えは違っていたようだ。そういえば、眠りにつく前にみた自分のスキル欄に思念伝達というものがあった気がする。それを使っているのだろう。


「夢です。天界に連れてこれる魔力があったら、元の世界に帰し……てないですね。それじゃあ、おもしろくないし」


「そ! う! で! す! か! 本当に駄女神さん、ブレないですよね……」


「今なんて!? 駄女神って言いました!? 言いましたよね!? 私、女神ですから! 正真正銘、女神やってますから!? 訂正してくださいよ!! しなさいよ!! しろよぉこらぁ!」


「そんなことよりも理由って何ですかね?」


「あぁ!! 無視した!! 女神を無視した!! そんなことしてるとバチが当たりますよ!! 当てさせますよ!?」


「はいはい。女神さん女神さん。早く理由教えてください。それと早くここから立ち去らせてください」


「もういいですよ……。理由はただただ暇だったからですよ。それ以外に理由なんてありますか?」


「あ……はい。そうですよね……。そんなものだろうと思ってましたよ。はい。本当に碌でもない理由でし……」


「思念伝達解除」


 散々二人で言い合った後、優奈が話し終わる前にソフィアに一方的に切られてしまった。そしてユウナが再び目を覚ますと、そこは昨日ギルドのお姉さんが手配してくれた宿の部屋だった。


「………すぅっ………」


 辺りを見回した後、息を大きく吸い込んで


「あの駄女神!! 絶対にぶっ潰してやるぅ〜〜〜!」


 ドンッ!


「うっせぇんだよぉ!! 隣の部屋のことも考えろ!!」


 大声で叫ぶと、隣の部屋に泊まっているであろう男性に怒鳴られてしまった。これも全部あの駄女神のせいだと責任転嫁をして、もう一度ふて寝をすることにした。




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 再び、ユウナが目を覚ますとすっかり陽が昇っていた。何なら、陽が真上を過ぎ、沈み始めるくらいだった。ふて寝を始めた時はまだ外が明るくなり始めた頃だったため、あれから8時間程寝たのだろうか。


「ふぁ〜……。よく寝た〜」


 今回は起きたら天界、という事にはならなかったので良かった。本当に良かった。


「お腹減ったし、食堂にでも行って何か食べさせてもらおう! ギルドが全部払ってくれてるみたいだし!」


 ユウナの身の回りの物は、全てギルドが負担してくれている。どう考えても、VIP待遇である。世界を救う勇者なのだから、当然といえば当然なのかもしれないが……


 ユウナは身支度、といっても服は召喚された時に着ていた部屋着しかないため、特にコーデに困る事はないが、一応、鏡で身だしなみを整える。


 そしてドアを開け、食堂に行こうとすると


「ユウナさ〜ん!! 早くギルドに来てくださ〜い!! さもないと、ドアぶち破って連れ出しますよ〜!?」


 何か聞こえた。とても不吉な予感のする発言が。どうも窓の外から聞こえる。つまりギルドから。そして聞き覚えのあるこの声は、ギルドのお姉さんの声であった。


「あれ? 私、ドアぶち破って入ってこられるような事した? なんで寝て起きたら、こんな修羅場にいるの?」


「は〜い。ぶち破りますね〜! 3! 2! い……」


「はい! はい! は〜い!」


 カウントダウンが始まった瞬間、ドアノブに手をかけていたユウナは、一瞬にして身体の方向を変え、走り、窓から身体を乗り出すようにして返事をする。


 そしてユウナの目線の先には、やはりギルドのお姉さんがいた。元の世界で言う、拡声器のような物を持って。


「ユウナさ〜ん! ギルドで招集かかってるんですけど〜!? 放送しましたよね〜!? なんで来ないんですか〜?」


「え!? 招集って何のことですか!? 今起きたところで聞いてなかったです!!」


 修羅場の原因はユウナの寝坊のせいだったようである。ギルドで何かしら問題があって、冒険者が招集されている、といったところだろう。


「……は? 今起きたところとか、巫山戯てるんですか?」


(え……? なにこのお姉さん、怖い!)


「あ、あの、すみません!! 以後気をつけるので、許してください!」


 ユウナはこの時、絶対にお姉さんを怒らせないでおこう、と心に誓った。しかし、寝ていたら気づかないようなを放送するな、と思ったことは秘密だ。バレたら殺されると思う。


「とりあえず、ギルドに来てください! 今すぐ!!」


「はいぃ!!」


 ユウナは部屋を出て、階段を飛び降りる、そして宿をの扉をタックルで開けてそのままギルドへと入った。宿の女将さんには、後でめちゃくちゃ怒られた。


 ギルドに入ると、既に大勢の冒険者が集まっており、ユウナのことを白い目で見ていた。いつまで待たせんだ、と目で訴えてきていた。


「ユウナさん、冒険者カードを見てください。赤い光が点滅してますよね? そうなっていると、ギルドが招集をかけています。これからはちゃんと確認してください」


 お姉さんが言う通り、冒険者カードを見てみると、確かに赤い光が……


「光ちっさっ!?」


 そう。光はとても小さかった。常に気をつけて見ておかないと、気づかない程度には小さかった。


「結局、放送が流れるので、そっちで気づいて来てください。結構大きな音なので、ちゃんと聞いてくださいよ?」


「……ほんとに流れてました?」


 ……お姉さんの視線が怖い。ユウナはそっと下を向きお姉さんと目を合わさないようにした。


「それでは、皆さん集まったようなので、今回の緊急クエストの説明を行います」


 お姉さんはユウナの言葉をなかった事にして、説明に入った。緊急クエストの概要は


 この街――アンファング付近の草原に強化種のゴブリンが大量発生し、その駆逐を行う


 というものだった。


 雑魚モンスターの代表格であるゴブリンだが、強化種となったゴブリンは、素のゴブリンとは比べ物にならない程強いらしい。


「草原に大量発生したゴブリンの数は目視で1000以上。各々、孤立しないように、集団行動で殲滅にあたってください! 健闘を祈ります!」


「「「おぉぉぉぉおおお!!」」」


「お……おぉー……」


 屈強な冒険者達の気迫は凄かった。比喩なしに、ギルド内が揺れた。対してユウナは……聞いた者が膝から崩れ落ちていくようなテンションだ。


「ユウナさん、初戦闘なので、あまり無理しないでくださいね?」


「あれ? お姉さん、普通に優しいですね? さっきの鬼みたいな……すみません。なかったことに」


「これから戦闘なんで、やめておきますけど。帰ってきたら分かってますね?」


 せっかく鎮火しかけていた火に油を注いでしまった。お姉さんの言葉に無言でコクコクと頷くしかないユウナ。トラウマであるゴブリンと戦い、終わればお姉さん、地獄のコンボが待ち受けることになった。この光景を女神(笑)さんは笑って見ていることであろう。


 そして、怒りを必死に抑えるお姉さんと別れ、ユウナは冒険者達とゴブリンを倒すべく、草原へと向かう。その間、冒険者達と目を合わせることは出来なかった。だって目が怖いんだもん!


 街を出て、歩くこと数分。ゴブリンを見つけた。うん。見つけたよ。見つけた。


「帰っていいですか?」


 どこからか、そんな声が聞こえた気がした。というか、みんな言ってる。だってゴブリンの数がおかしいんだから。1000? そんなものじゃないでしょ。軽くその10倍はいるよ?


「「「お姉さんの嘘つきぃ〜!!」」」


 ユウナを含め、冒険者達全員の心が1つになった瞬間だった。

良いタイトルが思い浮かばないので、主人公の気持ちになって、1話の最後にどう思うか、どう叫びたいか、を考え、タイトルにしようと1話の時からやってみています、あまねです。


多分、誤字、脱字、間違った言い回し等が多々あると思います……

気づかれた事があれば、「ここ間違ってんぞ!!」「舐めてんのかコラァ!?」とご指摘頂けると嬉しいです。


ではまた次話でお会いしましょう

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