ピンチです
沸き立つ群衆を背に、俺はとても焦っていた。
(ヤベェ、MP切れそうだ......)
先ほどの攻撃でMPを殆ど使ってしまい、今にも倒れそうである。
「仁君、ちょっとこれはヤバイですよ......」
メイが指差す先には、ドラゴンの首がかなりのスピードで落ちてきていた。
「考えてなかったな」
「どうしますか?」
「取り敢えず俺にMPを分けてくれ」
「わかりました。"マナヒール"」
体の中に、何か暖かいものが入ってくる感覚がした。
「今のは?」
「光魔法の一種で、MPを回復する魔法です」
そういえばメイのステータス確認してなかったな......
「後でメイのステータス教えてくれないか?」
「勿論です」
取り敢えず逃げるか......
ちなみにさっきのやり取りは全て早口である。
「走るぞ!」
俺たちは足元にクレーターができるくらいのスピードで走り出す。
ドカーン!
落ちてきた首をギリギリで回避する。
落下の衝撃が凄かったのか、半径20m程のクレーターができていた。
しかしドラゴンって凄いんだな......
あのスピードで落ちても、鱗には傷ひとつない。
まっ、俺が瞬殺したんだけどね♪
「しかし、私の出番なかったですね」
「そんなもんだろ」
呑気に話していると、いきなり門のあたりがざわつきだした。
「何?!ドラゴンが倒されただと!」
なにやら剣呑な声が聞こえてくる。
(厄介ごとはごめんだぞ......)
群衆をかき分けて出てきたのは、ちょっとゴツいだけの普通のおっさんだった。