自衛団
実を言うと俺は自衛団の強さがどれ程のものなのかとワクワクしている。
というのも村へ帰る道中に、ボロスとリーナがトレントという木の姿をした魔物と戦っている所を見たのだが、ボロスは堅いであろうその本体をいとも容易く切り裂き、リーナは急所を見極め狙い撃つことでトレントの活動を止めてしまう。
二人と同等の実力者達、いやそれ以上の人物がいるかもしれないと思うと、浮き立つ気持ちが抑えきれない。
どうして今まで大猪を倒せなかったのかが不思議である。
そんなことを考えながらリーナについていくと、やがてボロボロに寂れた宿舎に辿り着く。
「さぁ、着きました!みなさんここにいらっしゃると思います」
そう言うとリーナは中へ入るよう早く早くと俺を急かす。
正直想像していたよりも遥かにボロボロであった。しかし、外観とは違って中は活気付いているに違いない。俺は当てもなく、そんなことを期待して中へと入る。
「まぁ中はこんなんですけど、自衛団のみなさんの心はとても熱く希望に満ち溢れていますから!」
そう言ってリーナはこぶしをグッと握りしめこちらへ訴えかけてくる。
辺りを見渡してみると、昼間だというのに酒を飲む者や、手芸をしている者もいる。
どうやらリーナは冷静そうに見えて、実は周囲が見えてないらしい…
この人達が熱く希望に満ち溢れているようには見えないのだが…。
「え、え〜と指揮官を頼まれるにあたって、みんなの実力がどれくらいなのか知っておきたいんですけど…。ちなみにリーナさんがこの自衛団のどのくらいに強さ位置しているのでしょうか…?」
「断トツで2番ですね」
リーナはきっぱりと告げる。
「…ちなみに1番は…?」
「ボロスさんです」
リーナはまたもやきっぱりと告げる。
これははっきり言ってやばい。てっきり村の外を見回りしていたためリーナとボロスが一番下っ端だと思っていた。
リーナとボロスはたしかに弱くはない。実力的には二人で組めば大猪をも倒せるとも思う。しかし他の団員がかなり弱いと考えると…。
ここでふと俺は疑問に思ったことをいう。
「今までリーナさんとボロスさんは大猪に挑まれたことはないんですか?お二人の実力なら共に戦えば大猪も倒せてしまえたような気がするのですが…」
そう言うとリーナは少し苦笑しながら話す。
「…実は私たち決まった魔物しか倒せないんですよ」
はぁ…
この村の自衛団は揃いも揃ってもう終わっているらしい。