ようこそスータの村へ!
「どうか我らの村をお救いください!」
そう言って2人は膝をつき、まるで俺を神と崇めるかのように頼みこんでくる。
ゴリゴリのおっさんであるボロスに懇願されるのもキツイが、見目麗しいリーナにキラキラして目をしながら興奮した様子で頼みごとをされると年頃の少年であるパイポイにとっては目に毒である。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ!俺は別に救世主じゃないし、ましてやパイポイっていう名前以外には何もろくに覚えてない奴ですよっ!」
「いえいえ、貴方は村を苦しめていた大猪を倒してしまわれたそうじゃないですか!そんな貴方になら私たちの村を脅かす魔物たちを倒すこともできるはずです!」
まるでこちらの事情はどうでもいいとでも言わんばかりに、リーナは話の流れを村を救う方向に持っていく。
まぁ別にやることもないし、村に案内してもらえるのなら別に良いのだが。
「っっす、すいません、私としたことが!もちろん村を救っていただけるのならパイポイ様にお礼を致します。……ダメで…しょうか…?」
こちらを見つめるリーナの顔は興奮して熱くなったためか、少し火照っていて、その綺麗な顔と相まってどこか扇情的なようにも見えてしまう。
「まぁダメっていうわけじゃないんですけど…。はっきり言って何にも役に立たないと思いますよ…」
「ご謙遜なさらないでください。魔物と戦うのが駄目だと仰るのなら、せめて村の者に戦いのご指導を…」
どうやら何としてでも俺を村に連れて行きたいらしい。美しいリーナにここまで言わせたのだ。断れるはずが無い。
「分かりました、その話受けることにします」
「ありがとうございます〜、救世主様〜!さっきは小僧とかいって申し訳ありませんでした〜!」
そう言って、顔をくしゃくしゃにして泣きながら抱きついてきたのはボロスであった。
魔物から村を守るためにひどく神経を擦り減らしていたのだろうか、張り詰めていた気持ちが突如緩んでしまったらしい。それにしても少し引いてしまう。
「とりあえずボロスさんは最初の頃とまではいかないまでも、普通に接してくださいよ。これじゃあ、やりにくくてしょうがないですよ」
「分かった小僧!これから俺たちの村へ案内しよう。着いてこい!」
驚くほどの切り替えの早さであったが、まぁいいだろう…。
それよりも未知の場所へ来て、それを解決すべく活動する。そのことに、今更ながらふつふつと燃えてきたパイポイの冒険心が気持ちを駆り立て、脚を前に進める。
歩き始めて何時間が過ぎただろうか、前方に一つの寂れた村が見える。
ボロスとリーナの2人はパイポイの前を足早に歩くと、村の看板の前で振り返り、不敵な笑みを浮かべて大声で告げる。
「ようこそ!苦難と絶望が蔓延る村、スータへ」
3話目投稿しました