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03.閑話① (三人称→帝)

「***」で視点が変わります。

始めは主人公の視点ではありません。


 どの島にも木々や草花が生え揃い、大きな島には泉まである。

 そして、それらの島全てを覆う巨大な球体の檻。それは、檻と呼ぶには些か無骨かもしれない。何故なら鉄の色は黄金で、草花の蔓が絡み合って形成される籠を模した絢爛豪華な物であるからだ。檻では無く、香球と表現した方が適格であろう。役割は、どう繕っても檻なのだが。


 そんな島の一つに、人が倒れていた。

 不規則な長さの芝生。色とりどりの小さな花々の絨毯。赤や金の丸々とした実を付けた木々。淡い黄色や、桃色に、水色の光。それらがひしめき合い作った小さな木陰に。


「ぷ~にゅ、ぷいにゃ」


 その倒れている人――少女に近づいて行き、変わった声で呼びかけながら、頬をペシペシ叩くフワフワもこもこした謎の白い生物が一匹。


「にゅ、にゅ! ぷいぷい!」


 ピクリと、少女の眉が動いて瞼が持ち上がる。上半身を起こした少女は、ぼーっとした面持ちでしばしそこに座り込んでいた。


「……ぅにゅ、はわ! 今何時です!?」


 目を擦って、やっと意識が覚醒したらしい。いつの間にやら膝の上に乗り、自分の顔を見上げている白い生物に時間を問う少女。白い生物はそれに対し、ただ「ぷにゃ!」と一鳴きした。


「そんな! もうお昼ご飯過ぎちゃってるじゃないですか!!」


 驚愕に満ちた表情で少女が立ち上がると、その膝に乗っていた白い生物から「ぷにゅっぴ~~!」と悲鳴が上がった。


 さながら日本昔話でお馴染み「おむすびころりん」のようにコロコロと草の上を勢いよく転がる生物。そして彼は、ネズミの穴に落ちたおむすびと同じ末路を辿ってしまった。

 つまり、落ちたのである。


「ふわわ~~~~!! ヒヨちゃぁぁああん!!」


 ちゃぁぁぁああん!!

 ……ちゃぁああん!

 …………ちゃぁん。


 急降下していく白い生き物に届く声がこだまする。


「ど、どうしましょう! どうしましょう!」


 オロオロとパニックを起こす少女。緊急事態と思わしき時に落ち着いた対応が出来ない様子からは、『アホな子』という疑惑が浮上する。そんな時、クイっと強引に服の背中が引っ張られる感触を彼女は覚えた。


「ほえ?」


 目を点にして、背後を見る。

 高さが十メートル近くはある影。白銀の鱗と粒子を放つ水のように透き通った美しい翼。鋭くも宝石のような色鮮やかな瞳。

 その正体は、獣の王。空を支配する頂点に席を置く種族。この香球の中で、彼女に管理されている絶滅危惧種――竜だ。

 そして、彼女の服を銜えてぷらーんと吊っているその竜は、この香球に現在いる竜の中で最も容赦の無い性格をお持ちの奴だった。


 ちゃっちゃと拾いに行かんかいッ!!


 実際に言った訳では無い。そもそも竜は生態的構造の問題により、犬や猫のように鳴き声はあげられても人のように喋られはしないのだ。竜が喋っていると感じた時は、魔術で頭の中に直接語りかけているのである。


 ペイッ! と、一直線に空の彼方へ投げ出される少女の体。あまりの速さで残像になっているそれは、香球の鉄の隙間(竜より小さい生き物なら楽勝で抜けられる)を一秒もせずに通過した。


「ひぎゃああぁぁあ!?」


 間抜けな悲鳴。

 しかし彼女を、冗談でも何でもなく普通の人間の体であれば消炭となっている速度で投げ飛ばした竜は、のほほんとした様子で見送ったのだった。


 ***


 立てば芍薬。座れば牡丹。歩く姿は百合の花。

 一人の少女に対してその表現が当て嵌まった時、その少女は『美少女』と呼ばれる。

 一見、日向環菜はそんな美少女だ。天使の羽のようなパールホワイトの髪は高い位置で二つに結われ、意志の強そうな丸い瞳は形と調和を取るべく嵌められたようなエメラルド。纏う空気は誰もが放っておけないような小動物のものだ。

 男なら、誰しもお近づきになりたいと思うだろう。


何も喋らなければね!


「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして? どうして誰も一言も無しなの? ヒロインには皆無条件で声かけて来て逆ハー展開進むもんじゃ無いの? こんなに可愛い子が近くにいるのに何故誰も、ライバルキャラすらアクションを起こさない。草食系ばっかか? 男ども股間に玉付いてる?」


 もはや病のようにブツクサ言っている日向さん。に、私は内心で『うわぁ、これは酷~い』と呻いていた。


 はいどうも、土筆寺帝です。


 現在、昼休み後半。場所は学校の屋上の給水塔の上です。

 出入り口の前に居るヒロインこと日向さんが、ブツブツと怪しい声を発していたので覗いてみたら、問題発言をかましていた。以上、現場からの中継でした。


 いやそれよりもアクションとか言ったぞあの子。『まど愛』は一日目から派手な事が起きないゲームらしいのに、だ。ゲームをやっていたならそれくらい知ってるはずなのだが、もしかして未経験者なんだろうか?


「駄目だこれじゃ。計画練りなおさないと。これじゃあ一年以内に四人も人間オトせない」


 未経験者がいきなり逆ハー狙い!?


「それに隠しキャラについては知らないし……ああああ! もっとちゃんとアイツの話聞いとけばよかった! しかも何!? モブにあるまじきキラキラした子居るんだけどっ、下手したらアレって罠か何か?」


 ああ、私と同じく知り合いがプレイしてたパターンなんだあの子。だが、考えなくても普通分かるだろう。一日でそんなにストーリーは進まないと。しかも『まど愛』の逆ハールートは鬼ハードだと友人Aが語っていた。こんな感じに……。


『何処かで一回選択ミスるとするでしょ~。でもね、そこで好感度が下がったりしないの。上がりもしないけど。で、エンディングまで上手く行ってるように話を進めてくのよ。そのクセしてっ!! ……最後に攻略キャラ全員が好色爺に拉致監禁されてケツ穴を掘られちゃうの。誰得じゃあの展開はぁぁぁああああああトラウマもんだわ!! あのスチルのせいでしばらく町中の老人見たら発作起きたわ!!』


 ――友人Aは二二回目でようやく望んだエンドを迎えられたらしい。

 つまり二一回もジジイのBLに耐えたのだ。

 あれのメンタルはたぶんミスリルで出来ていたのだと思う。それはそれとして……どれだけ欲求不満なのかは知らないけれども、一般基礎が抜けたお頭じゃイケメン共の攻略が不可能な事くらい分かるだろうに。


「ふぅ……とにかくこの一週間が勝負。一人でもオトさないと」


 決意を固くして屋上から退散する日向さん。ドアのやや錆びた音が鳴り終わったのを合図に、私も教室に戻るべく給水塔から降りた。


「あ、スカートばっちい」


 パンパンと汚れを払いながら、私はため息を吐く。周りを怯えさせてしまった己の態度を反省して教室から出て来たのは良いけれど、調子に乗り過ぎた。面白がって給水塔に乗るなんて、思考が高校生とは思えない。


「馬鹿な事しちゃったわ~」


 そう、空を仰いだ瞬間、何かが目に入った。

ズキンと痛んで、無意識に何かが入った片目を押さえ俯く。異物を出そうと涙が溢れるが、一向に何か入ってる違和感は消えなかった。

これはもう目をさっさと洗いに行く他無い。判断するのと同時に、私は屋上から走り去った。


敢えて「少女」と書いていますが、分かる人には分かってしまいますね……。


途中で文章が途切れているという大失態に今日気が付きました。

読者の皆様、申し訳ございません!

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