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今更ながら、召喚師デビュー!  作者: 古澤深尋
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変転(ユラの置いてきぼりがデフォルト化しつつある)

お読み頂きありがとうございます。

状況はシリアス気味ですがユラは…

 『ヴィルナールサーガ・オンライン』運営会社、テクノクラーツコーポレーション。

 最高経営会議の場で加苅雪は状況を説明していた。


「最後にQBR-1157という上級権限でこちらの権限を制限し、アリスは接続を遮断、現在に至ります」

「報告ご苦労。君たちの任務は変わらない。引き続きログ収集に努めたまえ」

 碇某のポーズを崩さずに語る最高経営責任者、真先蔵人。


「え…」


 戸惑うチームの面々に、フォローの言葉がかかった。


「真先さん、それじゃ末端には伝わりませんよ。僕から説明します」


 企画担当重役の高根翔が、チームの方を向いた。


「君たち、我が社がどのようにヴィルナールサーガ・オンラインを運営しているか知っているよね?」

「はい。」


 本来ひと月10万以上の会費を必要とするVRMMOが、月額三千円でプレイできること自体いろいろあると理解させられる。

 要は表裏にスポンサーがいるのだ。

 それも絶対に文句を言わせない類の。


「君たちが取った行動は正しい。でも、スポンサーの意向に背くもので、しかもスポンサーの意向は倫理上問題無い。となると、後は分かるね?」

「…」


 雪は納得できていない。

 しかし刃向かえばクビだろう。


「アリスの行動自体は別部署が監視中だ。心配いらないよ」


 関わるなと言わんばかりの態度だった。


 チームが会議から退出すると、会議参加者は本来の議題に戻る。


「アリスが第二段階に進化した。あのチームも念のため大人しくさせておけ」

「今すぐは余計な真似は控えるべきでしょう」


 不穏な密談はその後しばらく続いた。



「何あれ」

 

 雪は憤りのあまり思わずこぼした。


「世の中知らんでええ事もあるっちゅうことでっしゃろ?」


 チーム内のおちゃらけ男が当然の推論を述べた。


「アリスの開発からしてブラックボックスが多いらしいし」


 別のメンバーが答える。

 そう、そもそもアリスの性能からしておかしい。

 現行のチップ式ボードでは頭打ちのはずだ。

 だが、VRMMOに完全な立体映像と、明らかにオーバースペックな能力を示している。

 いったいアリスは何なのだろう。


「…ユーザーに危険があるのなら、譲ることはできないわ。」


 他のメンバーは苦笑した。

 だが彼らは加苅雪という女性を甘く見ていた。


※※※※


 資料室でよからぬ行為に及ぶ、盛った犬が二匹。

 柴犬のミックスと野良プードルと言ったところだろうか。

 へこへこし始めたので壁ドンして衝撃波を二匹にぶち当ててやる。


「へにゅ!」

「おへ!」


 最近の犬は鳴き声もおかしい。

 しばらくして廊下が大騒ぎになっていたが私は淡々と稟議書を回覧して企画の手直しをする。


「高崎主任、何かされました?」


 部下の山中英美がニヤニヤしながら私の様子を窺いにきた。

 この娘も高校時代はヤンチャだったらしく、私のことも知っていた。


「馬鹿犬が二匹、盛ってたのを脅したけど?」


ブフーッ!と盛大に吹き出す英美に私はしれっと言う。


「さっさと仕事しなさい。残業は認めないわよ。」

「はーい。怖い怖い。」


 クスクス笑ってデスクに戻る英美。

 少しふざけるところはあるが、仕事はキチンとやるのでうるさく言わない。

 チャキチャキと企画書を打ち出してサインし、係長に回す。


「いや、しびれるのを上げてくるね」

「隙間需要ということもあります」

「ふむ…資料、よろしく。来週水曜日でいいよ」

「分かりました。早めに上げておきます」


 来週水曜日…金曜の社内会議に合わせる気か。

 この係長、人の手柄を横取りするのがうまいしな。

 注意しよう。



 終業後さっさと社を出て帰宅。

 今日は雑念もなく、キチンと型を行えた。

 明日の支度まで終えてログイン。


「よーし今日は町の北で釣りするぞ~」


 リルとミミを引き連れて、川から引き込まれた運河に来た。

 住民が同じように釣りをしているので、声をかける。


「隣お邪魔します」

「おお、ええぞぉ。礼儀正しいのぉ」

「ありがとうございます」


一礼して10メートルほど離れて座り、竿を振り出す。

くいっと引き、合わせて釣り上げる。

うん、川魚だ。

ハヤかな?


「ママすごーい!」

「まだまだいくよ!」


 投げ、釣り、投げ、釣り…

 気がつくとまた大漁。


「…お母様、釣るのはいいのですが、どうなさるのです、200匹以上のお魚」

「ふ、見ていなさい」


 これから調理よ!

 リルは港サバの焼きまくり祭りを思い出したのか、露骨に顔をしかめる。


「ちょっとええかの?」

 

 声がかかる。

 さっきのお爺さんだ。


「その青ハヤ、譲ってもらえんかね?」


 私は二つ返事で応じた。


「いいですよ。あるだけ差し上げますとも」

「お母様…」


 リルは冷たいジト目。


「えー、あげちゃうの?」


 ミミは食べたかったのかな?


「おお、ありがとうな」


 200を超す魚がトレードされ、お爺さんは大喜びだ。

 うちの爺様もこれくらい可愛げがあったなら…


「この魚は薬になるんじゃ。わしにはもう必要ないし、これを譲ってやるよ。これくらいしか礼ができんし」


《錬金術スキルを手に入れた!》

《初級錬金用具一式を手に入れた!》

《特別報酬!ヒーラ草×99を手に入れた!》

《特別報酬!ポイナ草×99を手に入れた!》

《特別報酬!キュア草×99を手に入れた!》


 …(゜Д゜)

 うそーん!?


ちなみに初めてユラの本名の苗字が出せました。

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