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今更ながら、召喚師デビュー!  作者: 古澤深尋
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クエストの始まり

 庭で型を一通りこなし、『霞の組み手』を行う。

 相手は、爺様。

 仕様は、無制限。

 場をとんでもない闘気と殺意が支配する。

 だが、私も負けられない。


 死闘一刻、私の肘が爺様の胸板に突き刺さり、爺様の掌底が私に発勁を撃ち込んで相撃ち。


「ぬ~、勝てないなあ」


 私の記憶している最強状態の爺様だが、若い頃の全盛期は更に数倍強かったらしい。


『じゃが、梨絵はわしよりまだ強かったんじゃ』

 

 婆様のことを語る爺様は、微かにブルっていた。

 どんだけ強かったんだろう、婆様。


 『飛天走』を使用してササッと買い物を往復。

 爺様の流派の走法で、極めた者は馬より速く走れるらしい。

 私?

 無理無理。

 フルマラソン2時間40分台で走れはするけどね。

 ただ、スカートは履けない。

 家の掃除を終わらせ、会社に着ていく服も準備完了。


「よし、ログイン!」


 休日後半、リルを愛で倒す!


 アインの町を探検。

 リルは私の肩に止まってあちこちを見ている。

 住民の露店で焼きリンゴぽいものを売っていたので交渉。


「お兄さん、焼き鯖と交換って受け付けてます?」

「お?いいぜ、見せてみな」


 普通の焼き鯖。


「じゃあ200ミルで引き取るから、焼きリンゴ2つと140ミル渡すぜ」

「ありがとう」


 焼きリンゴで合ってるのか。

 周辺の露店で焼き鯖と売り物を交換交渉し、ジュースやクッキー、パイ等を入手。

 高台にある休憩所でリルとお茶と洒落込んだ。


「おいしい?」


 リルはにっこり笑って頷き、クッキーをサクサク食べる。

 パイもしっとりしつつ、サクサク感があっておいしい。


※※※※


 それは、不意に来た。


《条件をクリアしました。プレイヤー『ユラ』に対し、クエスト『召喚師の条件』を解放します。》


 アナウンスと同時。

 漆黒の腕が伸びてきて、リルを捕まえようとした。

 私は既に戦闘態勢だ。

 リルをつかんで引き寄せ、腕の持ち主に全力で攻撃した。


『グハハハ、無駄無駄無d』


《潜在能力が発現しました。【拳を極めし者】【鬼子母神】が適用されます》


 気負いはない。

 魔王と遭っては魔王を斬り、神と遭っては神を斬る。

 いつもの如し、だ。

 漆黒の人物…まごう事無き悪魔に掌底が届いた瞬間、山も吹き飛ぶほどの暗勁を叩き込む。


『ギョヘ!』


 悪魔はおかしな声を上げ、内部から弾けて倒れた。

 目はこぼれ落ち、口から緑の血らしきものを吐いていた。

 手をかざすと光の粒子になり、インベントリに戦利品が収納された。


《イベントボス『トカゲの魔王ギムエル』を倒しました》

《個体初討伐報酬:聖冠ガブリエルを手に入れた!》

《ソロ討伐報酬:転移スキルを獲得した!》

《特殊条件個体『ギムエル』討伐報酬:条件【スキル全制限解放】が満たされ、適用されました。これにより、潜在能力が顕在化し、パッシブ化します。スキルの内容は別途確認してください》

《潜在能力顕在化により、プレイヤー『ユラ』の加護の条件が変更されました。ギムエル討伐に伴い複数の神々から寵愛が下されました。詳しくは加護の欄を参照して下さい》

《格上討伐報酬:称号【万夫不当】を獲得した!》

《魔王種討伐報酬:称号【勇者】を獲得した!サブジョブが解放されました。レベル上限が撤廃されました》

《一撃討伐報酬:飛翔スキルを獲得した!》

《クエスト『召喚師の条件』の特殊条件が満たされました》

《経験値1を手に入れた!》

《375万ミルを手に入れた!》

《黒薔薇のレイピアを手に入れた!》


 うん、何かいろいろとおかしな表示がある。


※※※※


 マスタールームと呼ばれる、運営の監視部屋。

 ようやく召喚師の正規ルートが動き出したことでチームが喜んでいたところに、Lv9999に設定し、かつ一撃で倒さないと確実に逃げられるイベントボスが倒されてパニック状態に陥っていた。


「嘘でしょ……」


 チームリーダーの加苅雪は頭を抱える。

 どうやったらレベル1のキャラでレベル9999のイベントボスを倒せるのか?

 経験値を1にしておいて助かったが、その他のスキルとかを取り上げるのは至難の業だ。


「リーダー、さっきからアクセス拒否られてますわ」


 部下からため息交じりの報告がくる。

 管理AI『アリス』は何を考えているのか。


「分かった。とりあえず現状維持して。様子見よ」

「了解」


 ログの収集だけさせて、監視を継続する。


※※※※


 悩んでいてもクエストは進む。

 リルが引っ張る方に歩いていくと、さっきはなかった小径に出くわした。


「ここを行くの?」


 リルは頷き、私を押す。

 小径を行くと、小さな家があった。


『召喚師エフェルの家』


 私は、ヴィルナールサーガ・オンラインで初の召喚師クエストの正解に辿り着いたと確信した。





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