異変
お読みいただきありがとうございます。
この話はあくまでもフィクションです。
現実の組織と対応が異なる表現がありますが、あくまでもフィクションですのでご了承ください。
大事なことなので二度言いました。
現在、金曜夜。
本来ならログインして一応の完成を見たマイルームで妖精達と戯れる予定だったのだが、真先氏が急遽と言って予定を変更してきたのに合わせて某ホテルの会食場にいる。
まあいい。
これで爺様関連の義理は全部果たした。
会場内におかしな雰囲気の連中がいるが、私には関わりのないことだ。
「高崎君、急に悪かったね」
「いえ。次はありませんし、構いません」
「そうか、残念だ。いい関係が保てると思ったのだがね」
露骨だな。
気配の連中の意識がこちらに向いた。
殺る気満々だ。
ただで殺されてやる気はない。
日頃の鍛錬の成果を見せてやろう。
帰り道、公園を通るとあっさり襲ってきた。
違和感を感じたのはその時だった。
黒装束の男達の動きがはっきり見えた。
蹴りも突きも、遅すぎる。
払うだけでなく、関節を極めて砕く暇すらあった。
逆に男達は私の動きが見えていなかった。
戸惑う男達に暗勁を撃ち込み、動きを止めようとしたが、効き過ぎたかもしれない。
外傷なしで廃人の可能性もある。
「どうなっている?」
帰宅してシャワーを浴び、座禅を組んで周天法を修める。
終えて分かったのは、明らかに気の流れが強くなっているということ。
鍛錬のおかげできちんと動けた。
それはいい。
だが、爆発的に強くなることはない。
考えられることは…ヴィルナールサーガ・オンライン。
ネットで調べてみた。
もしかしたら、という事象は一件だけあった。
VRシンドローム。
一部で英雄症候群と揶揄される原因不明の病気。
現実と虚構の区別がつかなくなって高所から飛んだり、火や水を恐れなくなって重症に陥ったり、と様々な事象が報告されている。
一方でゲーム内の高級薬品を飲んで不治の病が完治したり、現実の知識をゲーム内で経験することでごく短期間で技術を修得したりと有益な現象もあったりする。
私の場合も、これに該当するのではないだろうか。
結局、再度の襲撃を考えて眠れなかった。
朝方鍛錬後、シャワーを浴びて仮眠。
内容が内容だけに、警察に相談するのも憚られ、自衛することにした。
というか、地元の警察は私が強いことを知っているのであまり真面目に話を聞いてくれない。
「高崎さんを襲う?命知らずだなぁ」
「高崎さんが恐れる?相手は魔王かなんかですか?」
あー、返答が容易に想像できる。
…何かすごく傷ついた。
自分で想像してダメージ大きいとか、私も大概だ。
昼前に起きてブランチを食べ、片付けて家の周囲に罠を張り、ログイン。
《フィーが条件を満たしました。進化します。》
もう?
早い気がする。
バンシーの大人バージョンはどうなるのか。
…貞〇はダメよ。
横に連れて歩けない。
出てきたのは、ボーイッシュな少女。
何というか、スレンダーな体型が親近感というか、親愛の情を感じさせる。
「お、お母さん、ボク、フィーだよ。」
黙って抱きしめ、スリスリ。
頭に頬を擦りつけ、髪の感触を楽しむ。
「あー!」
リルとミミが私たちを見て叫び、走り寄ってきた。
二人も抱きしめ、スリスリ。
「~~~!」
しばらくスリスリして、ふと見ると三人ともフニャフニャになっていた。
そこまで喜んでもらえたのならこちらも嬉しい。
と、そういえば、レベルを確認しておこう。
【ユラ 召喚師】
LV:34
剛力:65(1265+256678)
知恵:72(1128+255678)
精神:78(1128+255678)
敏捷:68(1265+255678)
器用:65(1314+255678)
幸運:100(1500+∞)
ファッ!?
…乙女らしくない声が出てしまった。
何だこの数値。
『括弧内は【拳を極めし者】の補正+【鬼子母神】発動時の補正によるもの』
もはや何も言うまい。
もしやと思った、その通りだった。
『庇護する』なら『無限の力』となる。
鬼子母神に名を借りた、最強のスキルじゃなかろうか。
盾職とか必須だな。
というか、私召喚師だったよね…
今さらだけど、それっぽくないな。
ヴァイツでは面白そうな話も聞けなかったので、次の街ライドに向かうことにした。
「この先山賊が多いので、気をつけてください。」
門番に見送られて外に出る。
何が待ち受けているのか。
待ってろ、未知よ。
「お母様、待ってください!」
「フィー、もっと急いで!」
「お姉ちゃん達が屋台で止まってたんじゃんか!」
バタバタ、ギャアギャア。
遅れた娘達が慌てて走ってくる。
…台無しだよ、娘達。
他人に暴力を振るう等の行為は犯罪です。
また、過剰防衛も罪に問われます。
空手、ボクシング等のライセンス保有者は、拳による防御・反撃でも罪に問われる場合があります。