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今更ながら、召喚師デビュー!  作者: 古澤深尋
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母親デビュー?

お読みいただきありがとうございます。


進行が遅いのは仕様です。

ご了承ください。

 はいかYES…どこかの軍隊じゃないんだから。

 別に毛嫌いしている訳じゃない。

 さっきと違って小学生くらいの少女になっている。

 

「あんたの名前はフィー。分かった?」

「う、うん」

「ひとつだけ言っておく。私は泣き虫が嫌いなの。フィーが泣くのは、私という不幸に巡り合わせた敵に対してだけね」

「分かった」


 聞いてみると、さっきのバトルフィールドに出ていたバンシーとは違う個体らしい。

 宝箱からクリア報酬を回収し、契約を結ぶ。

 今のところ召喚枠は6あるからまだ大丈夫だけど、どこかで限界がくるのだろうか。

 

「さ、移動しよう」


 外に出る。

 廃鉱山最深部の別の場所のようだ。

 まっすぐ延びる道がある。


「帰りは歩きか」

「そのようですね」

「ちょっと全員集合」


 手を繋がせ転移発動。

 あっさりエルバル廃鉱山の外に出られた。


「えっと、ここはどこ?」

「さっきいたところの外よ。」

「そうなの?ボク、お外に出たことなかったから。」


 ボクっ娘、だと?

 あざとい、さすが運営あざとい。

 これ私が女だからスルーできるけど、大きなお友達的プレイヤーだったらどうするのか。

 そこまで考えて、はたと気付いた。

 『だから』召喚師は『不遇』なのか。

 私も正解しているばかりじゃないだろうから微妙だけど、既存のゲームのようにはいかないのだろう。

 契約した、おまえは俺の僕だ、戦ってこい、では愛想を尽かされるということだ。

 もちろんセクハラなんて即アウト。

 

「リアルだなぁ」

「どうかされましたか、お母様?」

「んーん、召喚師というジョブのことをちょっとね。」

「?」


 首をかしげるリル。

 この子の同類は、あの家にいた。

 あれは、これまでいた召喚師達の、やめた数だけ居たんじゃないだろうか。

 もう来ることのない、自分たちの契約相手。

 ずっと待ち続けるのだろうか。

 ひどく、寂しい気分になった。

 報われることのない努力。


「ねぇリル」

「はい、お母様?」

「アインの町の、エフェルさんの家にいた妖精達ってどうしているの?」


 リルはちょっと考えて、思い出すように答えた。


「分かりません。ただ、私の中に残っている知識としては、契約ができなかった妖精はあの家に行って、ずっと待ち続ける、と」

「そう…」

「もしまた以前の主が召喚師を志す時は助力するようにと」

「…ジョブの変更はできないのに、待ち続けるの?」

「そうとしか…」

「分かった。ありがとうね」


 アリスにメールしておこう。

 ヴァイツに戻り、作業する暇があるかとリアル時間を見ると23時前。

 時間切れでログアウト。



 翌日の仕事は変わりなし。

 出勤途中の会社の近くでサンドイッチのお店を見つけたのが収穫である。

 ここで買って行くのがベストだろう。

 サクッと帰宅して所用を全部済ませてログイ


 スッタッタカタカ、タカタンターン♪


 ンできず。

 スマホを取り上げ、メールの主を見る。

 最近疎遠になっていた爺様繋がりのおっさんからだった。


「真先さん…乙女の都合も考えず、か。」


 総合格闘技の興行に、顔を出してくれとの要請。

 爺様の名代という名目だが、私をダシに、門弟方とつなぎを付けたいのだろう。

 魂胆見え見えで嫌なのだが、爺様が一時期懇意にしていたため無碍にできない。

 少し悩んだが、今回限りとするという条件で了承し、日時を聞いた。

 着飾るつもりもない。

 いつも通り、鍛錬ついでに行くだけだ。


 ちょっと遅れてログイン。

 作業だけするつもりだったのでメールチェック。

 アリスから回答が来ていた。

 現在の私のマイルームに、クエスト報酬という形で妖精達の居場所を増設できる。

 そのクエストは単発型で、今後契約できなかった妖精達は自動的に私のマイルームに送られることにする。

 妖精達の処遇について教えてくれてありがとう。

 そんな内容だった。


「クエストはと……」


 アインに行って、エフェルさんの家から妖精達をマイルームに連れてくること、報酬はマイルームの妖精用待機場所増設。

 ふむ、これなら早かろう。


「アインの街に出るけど、行く人~?」

「「「はーい!」」」


 三人とも着いてきたので先ずはいろいろ買い込んで高台の公園へ。

 リルは甘いもの。

 ミミはいなり寿司。

 フィーは意外にもうどんが好みの模様。

 素うどんを6杯食べてまだ物欲しげ。

 腹ペコキャラは要らない。

 

「…まだ食べたい?」


 フィーは恥ずかしそうに頷き、呟いた。


「ボク、こんなにおいしいもの初めて食べたの」


 鬼子母神スキルが発動していたかもしれない。

 屋台の前でうどんを追加注文している私がいた。


「へ、へい」


 店主もドン引きの素早さだ。

 できたうどんを受け取り、フィーの目の前に置く。


「はい、あーん」


 リルとミミは固まった。

 フィーは真っ赤になって戸惑っている。

 私が食べさせようとするのがそんなに変か?


「食べないの?」

「あ、あの、あう…」


 やがて恐る恐るパクッと食べ、その後は真っ赤になりながらも美味しそうに全部平らげた。


「おいしかった?」

「うん!」


 にへへ、と照れくさそうに笑い、私に抱きつくフィー。


「あらあら、甘えん坊さんね。」


 ふとじっとりした視線を感じて見ると、リルとミミが羨ましそうにこちらを見ていた。


「なあに?」

「うう…」

「いやその…」


 私はパイを一切れ取り上げて、リルに差し出した。


「はい、あーん」

「…!」


 リルは真っ赤になりながらも迷わず食べた。

 やたら幸せそうで何より。


「ママ…」


 ミミが泣きそうな、うるうる状態で見てくる。

 もちろん私はいなり寿司を持って差し出す。


「はい、あーん」


 パクッ


「おいしい?」


 ぶんぶんと何度も首を振るミミ。


「さ、食べ終わったら行くわよ。」

「「「はーい!」」」


 映画の家から妖精達を連れて移動、マイルームに入ってクエスト完了。

 リビングの横に扉が出来ており、妖精達はさっそく移動してくつろいでいた。

 中は森の中の広場といった感じになっている。

 私もそのうちお邪魔しよう。


 今日も時間切れでログアウト。

 内装が中途半端なままだ。

 早くきちんとしたい。


いろいろ仕込んである伏線を何とか回収するつもりです。


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