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今更ながら、召喚師デビュー!  作者: 古澤深尋
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ミミの成長

お読みいただきありがとうございます。


少しシリアス。


 ヴァイツの街。

 アインと何が違うのか。


「お店見て回ろうか」

「はい」

「うん」


 ふと、挙動不審な子供を見かけ。

 嫌な予感がして、リルとミミに声をかける。


「一度私に所持金とアイテムを渡しなさい。今すぐ」

「あ、はい」

「はーい」


 回収し終わってすぐ、その子供が体当たりして来た。

 私たちはそれぞれ回避する。

 特に私はその子供と周囲の者達を大きく避けた。


「くっそ!」


 躱されたと理解した子供はミミにナイフを投げつける。

 だが、それを私は許さない。

 ナイフを宙で受け止め、転移で子供の背後に出て暗勁。

 体中の気の流れをめちゃくちゃにしただけだし、スリなどやりさえしなければ支障はないだろう。

 ナイフを懐に返しておき、二人のところに戻る。

 傍から見れば一瞬の出来事だ。

 誰も真相など分かるまい。


「今の子供、何だったのでしょう」

「スリだよ。この街は油断ならないところらしいから、ぼけっとしていたらダメよ」

「はい、お母様」

「はあい」


 ミミが心配だ。

 相変わらず緊張感がない。

 

「ミミ、ぼうっとしてて痛い目に遭っても知らないよ?」

「あたし、そんな目に遭わないもん」


 ため息をつく。

 どうするべきか。


「とりあえず、冒険者ギルドに行くよ」

「はい」

「はあい」


※※※※


「強制イベントも力尽くで回避…」

「これ召喚師のイベントぶっ込んだらどないなりますやろか?」

「やってみるか」


 この日、最悪の判断をしたマスタールームの面々。

 悪いことに、加苅雪は休みだった。


※※※※


 ミミの背後にいきなり現れた者に、私は何のためらいもなく全力の一撃を加える。

 何か少し抵抗があったが、すぐに消えてそいつは光の粒子になった。


《イベントボス『猿の魔王ゴライア』を倒しました》

《個体初討伐報酬:聖手甲ウリエルを手に入れた!》

《特殊個体討伐報酬:『ゴライア』討伐により、異種族会話スキルを手に入れた!異種族間の意思疎通最上位スキルになります。細部は該当スキルを参照して下さい。》

《格上討伐報酬:【万夫不当】は既に保有しています。》

《格上の規定数討伐を確認。【万夫不当】が【天下無双】に変化しました。》

《魔王種討伐報酬:【勇者】は既に保有しています。》

《魔王種の規定数討伐を確認。【勇者】が【真の勇者】に変化しました。》

《一撃討伐報酬:マイルーム権利書を手に入れた!》

《経験値1を獲得した!》

《122万ミルを獲得した!》

《レアドロップ!如意棒を手に入れた!》

《イベントアイテム『ヴァイツ領主セルダンの依頼書』を手に入れた!》


 …また他人にバレたら五月蠅くなりそうなものを。

 如意棒は良さげな武器だけど。

 これで棍術が生きてくる。

 マイルーム権利書は良さそうね。

 噂ではルームクエストの最高評価で手に入れるしかないはず。


 で。

 イベントアイテムなんだけど。


 『ヴァイツ領主セルダンの依頼書』:セルダンが魔王軍に召喚師の抹殺を依頼した文書。ヴァイツの冒険者ギルドでギルドマスターに手渡そう。


 知らないうちにイベントが始まっていたようだ。


※※※※


 マスタールームは沈黙していた。

 イベント用に無敵設定してあったゴライアが、システムを貫通して一撃キルされた。

 ギムエルはまだ倒せる可能性が残されていた。

 だが、ゴライアはイベント扱いで、攻撃が通らないはずなのだ。


「…なんやもう、ログ取りもする気のーなりましたわ」


 その一言でマスタールームの中が弛緩した。

 やる気も消え失せてしまったようだか。

 そこに一通のメールが来た。


「…CEOから呼び出しだ。」


 弛緩した空気が再び凍り付いた瞬間だった。


※※※※


 冒険者ギルドでギルドマスターに依頼書を渡して経緯を説明。

 蜂の巣を突いたような騒ぎになったので一度離脱して女神像のところへ。

 ログアウトして諸々済ませて1時間後にログイン。


 ギルドに戻ると、既に片がついた後だった。

 領主セルダンはとっ捕まって王都に護送中。

 館にいた下級魔族は討伐済み。


「済まなかったな、領主が迷惑をかけて」


 ギルドマスターが謝ることではない。


「立場は違うが、幼なじみなんだ」


 魔族に通じ、国を危うくする反逆行為を止められなかった責任を感じているらしい。

 かける言葉もないので一礼してギルドを出ようとすると、待ったをかけられた。


「今回のことで、ランクをCに上げるよう指示されている」


 反逆の未然防止を大きく評価されたらしい。



 ということで、ステータス表示のギルドカードの項目にはCの文字が輝いている。


「ろくに依頼をやってないのに…いいのかな?」

「魔王討伐だけでも比類なき成果です。Sでもよろしいのでは?」

「そんなものか」


 ミミは魔王に背後を取られ、危なかったことをリルから聞かされており、しょんぼりしていた。

 大見得を切った直後にこの体たらく。

 だいぶリルを叱られたようだ。


「ママ…ごめんなさい」

「何を謝ってるの?」


 今回はきちんと反省させよう。


「…ママのいうこと、きちんと聞いていなかったこと」

「それだけ?」

「油断してたこと」

「…」

「…うー」


 ミミをまっすぐ見つめ、言う。


「もしミミが攫われていたらどうなったと思う?」

「え」

「リルは悲しみ、貴女を探し出すまで走り回ったはず。私は怒り狂ってどうなったか分からない。もしかしたらミミは殺されたかもしれないし、敵に回ったかもしれない。」

「そんなの…」

「私は、貴女を守ってあげられなくて、おかしくなっていたかも知れない。貴女は、その責任を取れる?」

「…」


 ミミは俯いていたが、やがて泣き出した。


「ごめんなさい、ママごめんなさい、リルお姉ちゃんごめんなさい、あたしちゃんといい子になるから許して下さい」


 グシャグシャに泣き崩れるミミ。

 リルは私の顔を伺っているが、私は首を横に振る。

 泣き続けるミミに、敢えて厳しい態度を取る。


「ミミ、私はあの九尾に約束したの。貴女を任されたの。いつまでも子供でいたければそれでもいい。でもそんなミミは連れて歩けない。だから、子供でいたいとミミが望むなら、私に言いなさい。私は貴女を送還して二度と呼び出さないから。」


 ミミはビクッと体を震わせ、泣き止んだ。


「どうするか、今決めなさい。」


 しばらくして、ミミは小さい声で、しかしはっきりと言った。


「成長したい。ママやお姉ちゃんと一緒に戦いたい。」


 私はミミの涙を拭き、頭を撫でた。


「よく言った。これから気持ちを入れ替えていきなさい。」


 ミミはしっかり頷き、水の魔法で顔を洗った。

 子供の甘えがなりを潜めた、いい表情だった。



とらえ方は人それぞれだと思います。


なお、ユラが言及している最悪のパターン、実は一度そちらで書いてボツにしたものです。

書いていたら止まらずにヴァイツが全滅していまして慌てて全面削除に。

恐ろしい…

これがキャラが勝手に走るということでしょうか。気をつけよう。

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