大人デビュー(ミミが)
お読み頂きありがとうございます(^O^)
作中の企業名『テクノクラーツ』について、実在の企業とは一切関係ありません。
また、他人に暴力を振るう行為は犯罪です。
リルの外見が黒い戦乙女になった。
全く使ってなかった黒薔薇のレイピアは、リルが嬉しそうに佩いている。
で、私はゴミの中で破損した武器防具を根こそぎ回収してキャンプ場に転移。
ちなみに初の転移で娘二人が大喜び。
今度は飛翔スキルで飛んでみよう。
「錬成!」
シーン
「錬成!」
シーン
繰り返しているが反応無し。
失敗のログすら出ない。
「ママ、私錬成のやり方が間違ってると思うの」
「私もそう思います」
「く…」
二人からは生温かい視線。
辛すぎる。
だけど、めげる訳にはいかない。
【錬成】:既存のアイテムを素材として、より優れたアイテムを作成するスキル
この説明からするに、錬成でゴミを素材にできるはず!
一度ログアウトして食事等を済ませ、鍛錬してシャワーを浴び、ネット検索して落ち着いてから再ログイン。
錬成関連の情報は全くなかった。
というか、やはりヴィルナールサーガ・オンラインの生産関連記事は出回ってない。
一部経験談が載っていたりするが、うまく行かないという愚痴で終わっている。
気を取り直して。
あれだ、気をゴミに流して変質させるイメージ。
気功治療を真似る…
違うか。
大周天法…
むう。
考えるのはやめた。
『根源は同じ』なのだ。
『いつも通り』『霞の組み手』の如く、望む結果を観るだけ。
何も考えず、感じず、ただそう『ある』と『観る』
その瞬間、それは起こった。
錆び、使えなくなっていた剣が形を変え、鉄と不純物に分かれてインゴット化した。
「インゴットに変わった!」
「…!」
ミミがびっくりして固まっている。
《物質操作スキルを手に入れた!》
…あれ?
「ママそれ錬成じゃないよ…」
【物質操作】:既存のアイテムを操作し、素材アイテム等を作成するスキル
うん、今知った。
とにかく、ゴミが素材に変わる。
やってやる!
物質操作スキルの使い勝手の良さは異常だ。
廃品が良質な素材に変わり、ミミの固有スキル『回収』でこぼれた分も全て戻る。
信じられないことだが、削った木も物質操作で元通りになる。
リルも横から風魔法で支援してくれる。
聞けば堅パンマラソンの時も埃が被らないようにしてくれていたらしい。
「スゴーイ!」
「お母様さすがです!」
二人からの賛辞が嬉しい。
作っているものは複合素材の女神像だけどね!
物質操作で素材を扱うことで、ほぼ全ての生産系スキルを同時に上げられる。
例えば『衣裳をほどく』ことで裁縫が上がる。
意識してスキルを使おうとすると上手くいかない。
物質操作に関しては、『考えるな、感じろ』が正解らしい。
「あっはっは、やればできる!」
「お母様、普通はできません」
「物質操作って、錬金術師でも一人か二人くらいしか持ってないって聞いたよ?」
「そうなの?」
ちなみに。
釘と棍棒を『錬成』することができた。
結果は『トゲの棍棒』
…釘バットか。
今ようやく当初の目的である、『目のやり場に困る』状態のミミの防具を作成中。
ミミが動くたびに胸とお尻がブルンブルン揺れる。
女の私でもかなりエロく思える。
男性諸氏には『歩く理性破壊兵器』となるにも違いない。
ベ、別にうらやましくなんてないし!
…さらしでも巻かせるかな。
「ミミこれ着てみて」
「はーい」
付与スキルで外見自動変更機能というのを付けてみた。
法服に近い作りの、割とスレンダーに見えるフード付ローブ。
しっぽはローブ内に格納可能。
「ちょうどいいよぉ」
ミミが嬉しそうに報告してきた。
「んー、丈も良さそうね。そのまま着てていいわ」
「わあい、ありがとうママ!」
「どういたしまして」
抱き着かれて頭をグリグリ押しつけられたので、撫でてあげると喜んでいた。
「えへへ、ママ大好き」
じっとりした視線を感じ、見るとリルがうらやましそうにミミを見ていた。
作っておいた赤いリボンを持ってリルに手招きする。
「ほら、こっちにいらっしゃい。髪結んであげる」
「わ、あ、あの、ありがとう、お母様…」
真っ赤になって俯くリル。
可愛いわ~、この娘も。
ちなみに。
娘二人の可愛さにすっかりやられて忘れていたが、生産系スキルと物質操作スキルが60以上上がっていた。
どう考えても、上昇が早すぎる。
※※※※
男はため息をついた。
「アリスとフレンドになって、あっさり生産系スキルを制覇して物質操作スキルまで獲得。誘導されている訳でもないのにこの勢い。脅威だな」
中央の女性は何も言わない。
「ログのうち、この女性に関してだけ収集すればよくなったのはありがたいけれど、この人まさか特異点?」
「それを調べるのは他部署でしょ」
チームの面々は意見を言い合っていたが、中央の女性、加苅雪だけは全く違った視点でログを見ていた。
(やっぱり、ヴィルナールサーガ・オンラインは、情報と経験の蓄積のため…)
彼女は、このゲームの『存在意義』を見ていたのだ。
※※※※