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今日から学校と仕事、始まります。①莞

お酒の席の社蓄は上下饒舌にする

作者: 孤独

鶴見豊つるみゆたかです。


社蓄をやっています。


ずーっと、ずーっと、仕事をしているわけですが、この日はプロジェクトの打ち上げというわけで、会社の皆様と飲み会に行きました。日ごろの不満を言い合って、スカッとする場でもありますが、アニメを観る時間を削られて、辛くもあります。


?睡眠時間は?嫌ですねぇ、睡眠なんて4時間で済ませるのが、社蓄のマナーですよ。健康管理に割ける時間は短時間かつ完璧にこなすのが、常識です。

日曜日ぐっすり寝ろって事です、日曜日も出勤ありますけどね。


「乾杯ー!」



カツゥン


ともかく、始まりました。私達の飲み会。

白い飯、枝豆、お刺身、てんぷら、揚げ物、ビール、……うひゃーな、時間です。



「かーっ!仕事終わりのビールは最高だ!」

「染みますね~」

「旨いもん食うのも、サイコー!コンビニの弁当ってクソだわ!」


食って、飲んで、騒いでの、飲み会である。普段抑えている感情を酒と飯が解き放つ。ストレスの解放はなんとも言えぬ、快感。


「無事に終わって本当に良かったですよ」


ジョッキを軽く飲み干してから、日本酒へと切り替えたのは私の意中の人、弓長晶ゆみながあきらさんである。憧れも含めて、異性への興味もあるので。


「日本酒が好きなんですね。弓長さん」

「まー、これがオフの私の楽しみですから」


そんな人と自然な感じで隣同士になれたんだ。やっぱり、会社の席だけど。この後、続きたいなぁ。アニメは録画してるし、別に明日。出勤するのも平気。大丈夫よ!遅くなっても、朝まで行っても……


「~~……」

「どうしました?もうお酒で参っちゃってるんですか?」

「いえ!大丈夫です!」


お酒を飲んで、今考えた事を忘れよう。うん!

そんなのはまだ先だし。弓長さんに好きな人がいたらね。とはいえ、彼女がいない事は教えてくれた以上、焦って嫌われちゃダメ。


ゴクゴクゴク


冷静によ。鶴見豊!

誘うだけ。

『私ともう一軒、飲みに行きませんか?』

って、それだけで良いの!



「まったく、もうちょっと金をぶんどっても良かったですよね~」

「だよな。弓長!交渉してくれー!」

「あとあの馬鹿をだなー」


わいわいと会社内のトークで盛り上がる一行。

当然ながら、弓長さんもその輪に入って、社員のストレスを発散させるように不満をこの場で吐かせる。どこまでこの人は社蓄の鏡なんでしょうか。

お酒を飲みペースも早くて、多いのだから、なおさら凄い。



「むーっ……」


そんな私はあんまり会話に混ざれない。食べたり、飲んだりで、弓長さんの隙を伺っている。

せっかく隣に座ってくれているのに、まるで、高校時代の授業風景のような、見えない仕切りがあるようだ。

気まずいなぁ。

そう思い、お酒を飲む。その雰囲気をぶち壊せる酔った私を呼び起こせ。



「うーっ……」


チャンスはある。……ある……



「Zzz……」



◇    ◇



気が付いた時、おんぶされている状態であった。

誰におんぶされてるのか?髪が当たっている。でも、男の人かな。温かいなぁ。


「んっ……」

「おや、気が付きましたか?」

「……弓長さん……」


……?弓長さん。弓長さん!?


「はわわわわわ!」


何も話していないのに、なんでかこんな急展開になってるんですけど!?いつ、飲み会が終わって、ここどこ!?何が起こっているの!?

お酒よ!私が何をしたか、記憶をカムバックさせて頂戴!


「鶴見さん。お酒が強くないならほどほどにした方がいいですよ」

「えっ、えっ!?」

「飲み会は終わりましたよ。眠っていた鶴見さんを介抱してあげているんです。公園のベンチまでいいですか?」


タクシーでも拾おうと、駅まで向かっている途中の道。公園を見つけて、ベンチに私を座らせるまでしてくれる。恥ずかしかったけど、なんでか。動けないことにして欲しくて、そうしてもらった。


「ふぅ」

「お、お、重かったですよね。ごめんなさい」

「いえいえ。別に」


弓長さんも疲れたのか。ちょっと、隙間を空けているけど、隣に座って空を見上げた。


「やっぱり日本酒は5本くらいが適量ですね」

「酒豪ですよね。何本空けたんです?」

「12しょう。いや、鶴見さんが寝ている間に飲み比べやりましてね。意地になっちゃったもんです」


日本酒の瓶を12本って、どんだけ飲んでいるんですか。

しかも、全然顔が赤くなってないし。私はこうしているだけでも、緊張して、赤みが拭えないのに。


「酔ってませんか?」

「い、いえ。弓長さんの方こそ……」


い、いや!落ち着いてねぇな、私!

なんで会話を切ろうとする。こうして、真夜中の公園で2人きりでいられるなんて、絶対にないよ。


「あ、でも、酔ってないですか?」

「うん」


今が何時か分からないけど、でも。飲むことや、2人でいることに、カンケーないよね。

ね?


「こ、これから……」


ちょっと、小声になってる。アルコールが抜けちゃって、緊張が高まっていくよ。

心臓がビクビクするし、胃がキリキリする。心が不安を掴んでいて、


「その……私……」


言うの!言うの!

どれだけ、言葉詰まらせているの。身体よ、心よ。今、私がしたいこと。やらなければいけない事を、声に。弓長さんに伝えるのよ!お誘い!お……


「お、お……」

「?」


緊張と不安、身体の異常事態が。声となったものは……


「おもらししそうで……」


正直な身体の気持ちが、声になってしまった。顔をマグマみたいに、赤面させて言ってしまった。もうダメ。


「そこにトイレあるよ」

「は、はい……」


私の気持ちってこんなものだったのかな。ううん。これは、告白ができない勇気のなさ。臆病だから。


「私の馬鹿ぁぁっ……」


トイレでめっちゃ泣いた。涙も出てしまった。落ち着けそうにないけど、すっごく泣いた。身体の中にある液体を一番出したと、思っている。


「長いですねぇ」


弓長さんはコンビニでカップ酒を買って、飲んで私を待っていてくれた。

ホントにごめんなさい。



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