喧嘩
学校の誰もいない教室で、二人の男が喧嘩している。
A 「だぁかぁらぁ、お前がいなけりゃいいんだよ!(前のめりに胸ぐらを掴む)」
B 「はぁ?いい加減にしろよ!支離滅裂なことばっか言いやがって。」
A 「俺はDちゃんとカプリチオするんだよぉっ」
B 「日本語喋れよてめぇ。いつもこんなんじゃねぇだろうが。殴るぞ。」
A 「殴ったら代わってくれんのか⁉︎なあ?なあ?」
無言でため息をつき、顔面をぶん殴るB。景気良く吹っ飛ぶA。
A 「痛ってええええええぇ。お前まじか。お前まじか⁉︎」
そこに丁度通りすがり殴られてるのを見てしまったC登場。愕然としてから、急いで教室に入ってくる。
C 「(二人の間に割って入る)いやいやいや、お前らまじか⁉︎なにやってんだよぉっ。昨日まで仲良くやってたじゃん。何があったん⁉︎なんで血を血で洗ってんの⁉︎」
A 「…よ、よお、C。」
B 「いや、今日こいつおかしいんだよ。主役を代わってくれっていうの。」
C 「さっき発表されたつぎの定期公演の主役?」
B 「そうなんだよ。マジ意味わかんねぇよなあ。」
A 「お、お前みたいなのに我が栄光の演劇部の主役を任せてたまるか!」
B 「…さっきからずっとこの調子だ。Cもなんか言ってやってくれよ。」
C 「どうしたんだよ…A、お前がこんな取り乱すなんて…。栄光ってほど大した実績もないぞ?」
A 「(ゆっくりと立ち上がりながら)別になんでもねぇよ。ただ、Bに主役を譲ってもらいたいだけだ。」
B 「なんでもあるじゃねぇかお前。(腕をまくりながらすごむ)」
C 「まあまあ落ち着け、二人とも。話し合おう。ああ、話し合いだ。Aもキチンと事情を話してくれよ…。喧嘩はごめんだ。」
A 「(腕を組む)俺の言い分はさっきから変わんねーぞ。」
C 「それが支離滅裂なんだよ。」
B 「(どかっと椅子に座り込む。)俺としては変わってやってもいいっつってんだ。部長とかに話せっつってるだけだろ?」
A 「それは断る!」
C 「いや何でだよ!妥協してくれてんだからそれでいいじゃん!わがままか!」
A 「…何とかして俺らの間で話をつけたいんだよ。ほら、ほかに迷惑かかるのもアレだからな。」
B 「つーかよぉ、次の公演になんでそんな出たがんだよ。ぶっちゃけストーリーがクソすぎてこっちから代わってくださいっていうレベルだぞ?」
A 「なんだとーーー⁉︎」
C 「なんでお前が怒るんだよ…。お前脚本じゃないだろ。」
B 「タイトルからしてアホだろ、何が雨の中のカプリチオだ。蓋を開けてみりゃアホ女の奇行録じゃねぇか。」
A 「むきーーーーー⁉︎」
C 「A、落ち着け、何もかもがもう猿レベルだぞ。」
A 「おまえじゃわかんねぇだろうな。雨カプの主役の良さがよぉっ。」
B 「ああ、わかんねえよ。ヒロインが彼氏置いて気まぐれに海外行ったり、急にドエスになって鞭で叩いてきたりとか、ほんっとに意味がわかんねえ。カプリチオ別に関係ねぇし、強いて言えば気まぐれなとこだけじゃねぇか!」
A 「むきゃー!ヒロインのこと悪くいうない!そこがいいんだろがい!」
C 「まぁまぁ、熱くなりすぎだ。落ち着けよ。……というか、A、お前まさか、まさかだけどさ、ヒロインがD子ちゃんでキスシーンがあるから代わりたい。とか言わない?」
露骨に照れるA。顔が真っ赤になり恥ずかしそうにする。
A 「べっ別に?てか、そんなわけねーし。」
B 「え?A?マジ?っはっはっは。お前そうなんだ。」
A 「ちげーっつってんだろ!」
B 「いやいや別にいいのよ。好きな子できるなんて誰しも通る道…ぷふーっ。」
A 「笑うなーーーー!何回も言うけど別に好きなんかじゃねぇし。むしろ嫌いだし!D子とか誰かも知らねーし。(迫真)」
しばしの沈黙。肩で息をするA。
B 「はぁ…。最初から言えっての。主役、やれよお前。」
A 「いいのか…?ほんとに…?」
B 「部長とかには俺が言っとく。そんかし、絶対成功させろよ。」
C 「そうだよ、中途半端な演技だったら許さないからな。」
A 「ありがとよ…お前ら…。」
B 「ああ、殴って悪かったよ」
C 「最初見たときは何事かと思ったよ…。」
A 「しかしC、お前何で俺がD子ちゃんの事を…。」
C 「…いやお前さぁ、態度が露骨すぎんだよ。顔、身体、鼓動全部D子ちゃん近づいただけで反応してるぞ。ぶっちゃけ部員で気づいてないのはBくらいなもんだな。」
B 「まじかよ」
A 「ちょっと待て、つーことはD子ちゃんにも…?」
C 「ばれてるだろうなぁ〜」
A 「いやこれもうマジかよおっ!」
fin