妖精の戯れ
「私たちが剥ぐよ!」
「元気良く怖いことを言うな! いいから、とにかくちょっと話かけてこいよ」
「判った! 四だね!」
「四を選ぶとはパルムさんの鬼畜!」
「話かけてこいと言ったんだ! 俺を犯罪者にするつもりか!」
妖精たちは退屈を嫌う。
退屈で遊べている内は良いのだが、それすらも飽きれば後は他人で遊ぶしかなくなる。
つまりパルムが標的になるのだ。
ここ数日は大人しくしていたのですっかり油断していた。
パルムが溜息を吐いていると、外では妖精たちが少女と何か話しているようだった。
しばらくすると妖精たちは少女の両脇をがっちりと固めたまま扉を開けて戻ってきた。
「パルムさん。言いつけ通り拉致に成功しました!」
「したー!」
「最悪だよ! どの選択肢にも無かったじゃないか! この馬鹿妖精ども!」
「冗談だよ。これだからパルムは......からかい甲斐があるんだよね!」
「パルムさん。そろそろ学習して下さい」
「......人間、腹が減っていると気が立つものだぞ。妖精たち」
パルムがゆらりと立ち上がる。
ひやりとした空気に妖精たちの額から汗が滲む。
「......冗談、冗談だよ。えへへ。軽いお遊びじゃない。――パルム、パルムってば! 怖い! 目が怖いよ!」
「パルムさん、落ち着いて。私たちは仲間、同士、いえ、もう伴侶と呼んでも良い程の仲......いやああああ!」
ばたばたと部屋を駆け逃げる妖精たちを追いかけ回す。
綺麗に清掃されているので埃が舞うことはないが、狭い室内では逃げ場も限られる。
妖精たちはすぐに袋小路に追い込まれた。
「もう逃げられないぜ。さあ、選択肢の四だ。四の刑に処すぞ」
妖精たちを見下ろすパルムの目は血走っている。
息も荒い。
妖精たちは己の身の危険を感じて二人で抱き合った。
「いやだ! 妖精の裸は誰にも見せちゃいけないってママが言っていたんだ!」
「そうです! 裸を見られたら聞いた人間が発狂死するような悲鳴を上げるとママが言っていました!」
「それは【曼荼羅果花】だ! お前たちは何時からそんな奇怪な植物になった! そもそも曼荼羅果花は裸だ!」