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異世界建築物語  作者: 神尾龍平
第一章 妖精の犬小屋
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パルム設計事務所

一章


 人の歴史は家の歴史だと誰かが云った。

 遙か昔、大陸間戦争で建築技術が失われた世界、ウインスレット大陸。

 その北西部、グルターヌ地方にソルティオと云う都市があった。

 通称【建築都市ソルティオ】。

 

 そこには【魔法建築士アーキテクト】なる者たちが数多く存在していた。

 【魔法建築士】――ソルティオで年一回行われる魔法建築士試験に合格した者たちだ。

 失われた筈の建築技術を魔法を用いて再現する異能者。


 その階級は二級、一級、そして特級の三段階に区別される。

 登録されている魔法建築士の人数は合計千五百八十五名。

 その内訳は二級千百二十二名、一級四百五十三名、そして特級十名である。


 魔法建築士試験は毎年受験人数一万名を超え、合格率は一パーセント未満と云う超難関だ。

 そこに合格した者たちは将来に渡って富が、特級ともなれば名誉と栄光が与えられる。

 


 ここはパルム設計事務所。

 【建築都市ソルティオ】の一角に居を構えて早半年が経とうとしていた。

 家計は火の車だった。

 先月のお客が五人。

 内三人は見積もりのみ。

 残り二人は冷やかし――近所の小母さんだった。

 これでは家賃すら払えない。パルムは頭を抱えていた。


 ニコライ・パルム――背は高い。

 年齢は二十一。

 身長は百九十三、藍色の癖のある短髪、目の色は少し赤みがかった金色をしている。

 パルム設計事務所で魔法建築士一級の資格を持つ、歴とした主だ。

 設計事務所の壁に掛かった一級魔法建築士を証明する証明証書を眺めながら、彼は嘆いた。


「客って本当に存在するのか? もしかして皆欺されているんじゃないのか? 魔法建築士なんて幻で、実は家なんて勝手ににょきにょきと生えてきたりするんじゃないのか?」

「マリ。パルムがおかしくなっちゃったよ」

「アリ。それは前からでしょう。今更ですよ」

「誰もおかしくなっていないし前からでもない! 後今更とか云うな!」


 パルム設計事務所――建坪十坪二階建ての木造一軒家である――の一階でパルムは腹に手を当てた。

 昨日からパン一つしか食べていない。

 このままだと本当に餓死する。

 否、それ以前にこの家を追い出されてしまうだろう。

 家賃の支払日は来週である。


「誰でも良い。客よ、来てくれ」


 パルムは天井を見上げ、両手を合わせた。


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