クルクルの帽子
「ワーイ!ワーイ!」
子リスのクルクルは、とってもごきげん。
なぜって?
それは、クルクルの頭の上、ちょこんとのっかった小さくてかわいいまっ白なベレー帽。
横っちょには、まっ赤なリボンのししゅう入り。
クルクルのお母さんが、クルクルのために作ってくれた帽子です。
クルクルは、うれしくてたまりません。
森の広場で飛びはねていると、モン白蝶たちがやってきて、
「かわいいね」
「すごく、素敵よ」
みんな、クルクルの帽子をほめてくれます。
と、そこへ、ウサギのピョンピョンがやってきました。
ピョンピョンも、まっ白なベレー帽をかぶっています。
「ほら、見て、お母さんが作ってくれたんだよ」
ピョンピョンはうれしそうに、長い耳をピンとたてます。
それは、クルクルの帽子より少し大きめ・・・。
クルクルは、走っておうちへ帰りました。
次の日。
クルクルは、また、まっ白なベレー帽をかぶっています。
でも、それは、昨日のより、少し、かなり大きめ。
クルクルの顔全部を、すっぽりとおおってしまっています。
モン白蝶たちは、ちょっとびっくりー。
でも、クルクルは、おおよろこびで森の広場で飛びはねています。
と、そこへ、ゾウのドンドンがやってきました。
ドンドンも、まっ白なベレー帽をかぶっています。
「ほら、見てくれよ。お母さんが作ってくれたんだよ」
ドンドンは、じまんげに長い鼻で帽子をかるくたたきます。
それは、クルクルの帽子より、ずうっと大きめ・・・。
クルクルは、また、走っておうちへ帰りました。
次の日。
「よいしょ、よいしょ」
クルクルは、自分の体の何倍もある大きなベベレー帽を、両手で引っぱっています。
モン白蝶たちは、おどろいて木陰にかくれます。
「いいこと、クルクル。こんなに大きな帽子は、絶対に、かぶってはいけませんよ」
お母さんは、クルクルに、きつく言いました。
でも、クルクルは、かぶりたくてしかたりません。
「えーい!よいしょ!」
クルクルは、帽子の端っこを引っぱりあげると、中へ入りこみました。
そのとたんー。
パッターン!
大きな音がして、まわりはまっ暗。
クルクルは、帽子の中にとじこめられてしまいました。
(どうしよう・・・)
クルクルは、心細くなりました。
こわくなりました。
「ワーン!」
クルクルは、大きな声で泣き出しました。
「クルクル!クルクル!」
木陰で見ていたモン白蝶たちが、クルクルのお母さんを、ピョンピョンを、ドンドンを、そして、森の仲間たちを呼んできました。
「はやく、クルクルを助けなくちゃ」
「よーし、せーの、よいしょっ!」
バッターン!
帽子が、ひっくり返りました。
「お母さーん!」
クルクルが、泣きながら、お母さんの胸に飛びこみます。
お母さんは、リボンのししゅうが入った小さなベレー帽をクルクルの頭にかぶせると、
「クルクルには、これがいちばん、にあうのよ」
そう言ってニッコリ。
「うん、ごめんなさい」
クルクルもニッコリ。
そして、大きくうなずきました。