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ピョン太とあじさい

 ウサギのピョン太は、ごきげんです。

 なぜって?

 それは、ピョン太のお誕生日に、お父さんから素敵なオルゴールをプレゼントされたから。

 今日もピョン太は、木の切りかぶに腰かけて、オルゴールをきいています。

 もう、お日様が山のむこうで、さよならをしようとしています。

 夕焼けが、ピョン太の顔をてらしました。

 「いけない!もう、おうちへ帰らなきゃ」

 ピョン太が、おうちへ帰ろうと腰を上げたその時ー。

 「おい、ピョン太。いいもの持ってるな」

 いたずらギツネのコン吉です。

 ピョン太は、あわててオルゴールをかくそうとします。

 「どうしてかくすんだよ。おれにも、ちょっとかしてくれよ」

 「だ、だめだよ」

 ピョン太は、オルゴールを両手でしっかり抱きしめました。

 そうなのです。

 コン吉に何かをかしたら最後、かえしてくれることはありません。

 たとえかえしてくれたとしても、それは、壊れているか、もう使いものにならないか・・・。

 「ぼ、ぼく・・・、もうおうちへ帰らなきゃ」

 ピョン太は、おうちへむかって走り出しました。

 「おい、まてよ」

 必死で走るピョン太のあとを、コン吉がおいかけてきます。

 「ハア、ハア・・・」

 あじさい畑まで来たとき、あんまり一生けんめい走ったので、ピョン太は、もう走ることができなくなりました。

 コン吉は、まだおいかけてきます。

 「どうしよう・・・」

 ピョン太は、こまってしまいました。

 その時ー。

 「ピョン太君、ピョン太君」

 誰かが、呼んでいます。

 「誰?」

 「私ですよ」

 見ると、目の前の水色のあじさいがピョン太を呼んでいます。

 「私の根元に、そのオルゴールをかくしなさい」

 突然言われたピョン太は、とまどいました。

 でもコン吉が、すぐそこまで来ています。

 ピョン太は、言われたとおり水色のあじさいの根元にオルゴールをうめました。

 「これで大丈夫よ。でも、どこにかくしたか、しっかり覚えておいてね」

 「えっ?」

 「水色のあじさいの下のにかくしたって覚えてもだめよ」

 「ど、どうして?」

 「それは明日になればわかるわ。そう、私の横にタンポポがさいているでしょう。それを目印にすればいいわ」

 「う、うん・・・」

 ピョン太は、よくわからないままうなずきました。

 「おい、ピョン太!」

 コン吉がやってきました。

 ピョン太の手にオルゴールがないのを見ると、

 「オルゴールはどうした。どこにかくしたんだっ!」

 ピョン太にむかって、大きな声で言います。

 「ピョン太ー!いつまで遊んでいるの。もう夕食の時間よー!」

 ピョン太のお母さんが、帰りの遅いピョン太を心配して、さがしに来ていました。

 「お母さーん!」

 ピョン太は、お母さんにむかって走っていきます。

 「くそっ!」

 コン吉は、ひとり苦やしがりました。

 コン吉が、おうちへの道を歩いていると、

 「コン吉、コン吉」

 おしゃべりキツツキが、コン吉を呼び止めます。

 「なんだよ」

 「コン吉、いいことおしえてあげるよ。ピョン太は、オルゴールを水色のあじさいの根元にうめていたよ」

 「ほんとうかっ!」

 「ああ、ボクはピョン太をずっと木の上から見ていたんだ。まちがいないよ」

 「よーし」

 コン吉は、にんまりしました。

  

 次の日。

 「くそっ!ここでもない」

 朝早くから、コン吉は、あじさい畑の水色のあじさいの根元を、かたっぱしからほっています。

 もう、何本の根元をほったことでしょう。

 でも、オルゴールは、ぜんぜん出てきません。

 「あのキツツキ、本当に見ていたのか。水色のあじさいの根元にオルゴールなんてないじゃないか!」

 コン吉は、おこってどなっています。

 そんなコン吉を、ピョン太は、木の陰から心配そうに見ていました。

 (オルゴールを見つけられたら、どうしよう・・・)

 「こらっ!誰だ。ワシのあじさい畑をあらしているやつは!」

 くまのおじさんです。

 コン吉は、びっくりして、ほるのをやめ顔を上げます。

 「ははあ、やっぱりいたずらギツネのコン吉だな。もう二度といたずらできないように、今日は、思い切りこらしめてやる」

 「お、おじさん、ごめんなさーい!」

 コン吉はそう叫ぶと、走って逃げ出しました。

 「まてー!ゆるさんぞー!」

 くまのおじさんは、コン吉のあとをおいかけていきます。

 コン吉とくまのおじさんが見えなくなったあと、ピョン太は、あじさい畑に入ってタンポポをさがします。

 「あった!でも・・・」

 ピョン太は、こまってしまいました。

 そう、たしかにタンポポはありました。

 でも、その横のあじさいは、水色ではなくまっ白なのです。

 ピョン太は、こまりながらも、おそるおそるまっ白なあじさいの根元をほってみました。

 するとー。

 ちゃんと、オルゴールが出てきたではありませんか。

 「よかったわね、ピョン太君」

 まっ白なあじさいが、ピョン太に話しかけます。

 「あ、あの・・・、あなたは、昨日の水色のあじさいさん・・・、ですよね」

 ピョン太が、あじさいの白い顔を不思議そうに見つめます。

 「ええ、そうよ。昨日は、ね」

 「えっ?」

 「私たちあじさいは、日ごとに色を変えるの。今日、水色のあじさいは、昨日は紫色だったのよ」

 ピョン太は、あたりを見わたします。

 あじさい畑の色が、昨日とはちがうことに気がつきました。

 真っ白いあじさいが言ったとおり、隣に咲いているあじさいは、水色になっています。

 昨日は、たしか・・・、紫色でした。

 「本当だ・・・」

 ピョン太は、つぶやきます。

 「だから、水色のあじさいの根元にかくしたって覚えちゃだめだって言ったのよ。オルゴールが無事でよかったわね。」

 「うん、あじさいさん、本当にありがとう」

 ピョン太は、ニッコリ。

 そして、あじさいもニッコリほほえみました。

 ピョン太は、オルゴールのふたを開けました。

 素敵な音楽が、あじさい畑に流れます。

 ピョン太は、日がくれるまで、あじさい畑でオルゴールを聞いていました。

 



 



 

 


 

 

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