#026-2 ヒミツの再会
僕はドキッとした。確かに学校外であった事は殆ど無かったが、まさか最初から作戦が躓くとは考えてもいなかった。そう断られて僕が驚いていたら、火蜜さんの白い指が顎をスッと撫でてきたのだった。
「ふふ。ウソよ。君が暗い顔をしているから、ついからかいたくなっただけ」
「そ、そうなんですか」
「私が、君を放っておくハズ無いでしょ。この世で、ただ一人だけ、最も強い絆がある相手なんだから」
と言って、火蜜さんは僕の手をとり、一緒に彼女の自宅にまで向かったのである。緊張からジワリと手の平に汗が滲むも、固く握りしめてきたのだった。まるで、迷子になった子供のように、ずっと……。
「……それで話しって何?」
僕を自宅に上げた後、そう火蜜さんは尋ねてきた。窓の隙間から赤黒い夕日に照らされてるいからか、白い肌が妖艶に赤く染まり、鋭い瞳が囂々と燃えているよう見えた。ドクン、と再び心臓が高鳴った。
刹那、更に僕の血脈は早まる事になっていく。
火蜜さんが部屋に一つしかない椅子に座り、大きく足を組み替えた。
それだけで。
見えた。
一瞬だけ
隙間が。
下腹部の。
はいてない。
―――だ、ダメだ。
僕は何とか欲望を振り払おうとする。だが、学校指定のスカートという日常の下から、つい妖艶なる空間を覗いてしまっていた。それだけでゾクゾクと背筋に走り、再び体が固まっていくのだった。
ああ、これを見せつけるために椅子を一つしか置いてなかったのか、そう僕は思った。こうやって反応に困っているのを感じるため、わざとやっているのだ。その考えが正しいように、火蜜さんは妖しく微笑んでいた。
「ふふふふ。そんなに見つめちゃイヤよ」
「え」
「部屋の中を見られるのは恥ずかしいでしょ」
これは、からわれている、それが分かると僕は耳まで赤くなっていた。
「……はい、そうですね」
「それで、話しは、どうしたのかしら?」
「あ、っと」
僕は少し言葉に詰まった。
完全に翫ばれている。ただ、美しい火蜜さんから、性の玩具のように扱われるのは心地よかった。それでいて、男の自尊心を刺激されるので刃向かいたくもあるのだが、黙って従うと遊ばれている事の楽しさを教えてくれるようであった。
一瞬、このままでも良いか、そう思いたくなる。
しかし、ダメだ。こんな甘く、切なく、気持ちが良い空気に流されちゃいけない。今日の目的を思い出さなければならない。僕は元の生活に戻るため、火蜜さんを騙しにきたのだ。彼女の信頼を裏切り、生き残るための作戦を実行しにきたのだ。
―――やるしかない。
まず火蜜さんを再び舞台に引きずり上げる必要があるのだ。
僕は意を決し、目を見開いて呟いた。
「……あの、僕と一緒に、例の殺人犯を殺しませんか?」




