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#021 これまでの経緯

 

 経緯をまとめたい。


 まず、全ての発端はp2p系データ共有ソフト『ファット』で、死体閲覧が予告されていたのを火蜜さんが見つけ、真偽を確認をするため現地に向かった事である。そこに、僕と殺人犯が居合わせるという最悪の偶然が重なったのだ。


 犯人の立場からしたら目撃者を生かすハズもない。


 以後、僕たちは命を狙われる事になる。だが、警察は証拠もなしに守ってはくれないので、生き残るため火蜜さんと僕は犯行を訐く協力を選択したのだった。その方法はコミュツールでもある『ファット』上で犯人を挑発し、新しい死体を用意させた所を撮影して証拠を掴むというモノであった。


 ―――しかし、この罠を逆に利用さた。


 殺人犯が、裏をかいたのではない。初めから素人の作戦なんて見抜かれると想定し、火蜜さんが1人で裏切ったのだ。その結果、殺人犯と一緒に僕まで潰されたのである。これは絶対的な秘密を作るため、と火蜜さんは言っていた。逮捕できる殺人犯を逃がしたのも、僕との機密性を高めるためだけの行動だったのだ。


 もっと、よく答えを考えるべきだった。


 火蜜さんは『最も強い秘密を作る』という歪な欲求がある。仮に、警察に逮捕されないライン内で、その秘密を学生が作ろうとした場合、考え得る答えが『他人から正気を疑われてしまうほどの自己防衛』になる、んじゃないだろうか……。


 例えば、クラスメートの1人が、国防を揺るがすほどのテロリストに襲われたから自分で防衛した、と言ってきたら冗談としか思えないだろう。仮に本当だとしても、証拠がなければ大抵の人間はウソだと思う。

 いや、間違いなく誰も信じない。分かる。僕が、ヒトの指を発見した際、その話しが他人に言いにくかった時と同じように……。


 証拠もなしに現実離れした事を話せば正気が疑われる、というのが容易に想像できるからこそ、警察に真実を伝えることすら止めてしまうのだ。つまり、『証拠を残さない殺人犯からの自己防衛』というのは誰にも言えず、結果、普通の高校生に行える『最も強い秘密』となるのではないだろうか……。


 少なくても、そう火蜜さんは考えた。


 全て計算された上で選択され、行動され、僕は追い込まれていったのだ。今になって冷静に考えてみると、都合の良いタイミングで僕の命を殺人犯から助けられるワケがない。派手な着物姿のまま森で待ち伏せしていたのも変だし、黒い服装に着替えていたのも計算尽くという証しとしか思えなかった。


「……つまり、僕は犯人をおびき寄せるための餌に使われたって事か」


 と、僕は呟いた。

 自分の部屋のベッドに寝ころび、ボーッと天井を見つめていた。時刻は朝の8時、曜日は金曜。いつもなら、もう学校に向かっているハズなのだが、今日は体が起き上がらなかった。いや、今日だけではなく、こうやって何もしないのが何日か続いていた。


 あの日から、ずっと―――


 正確には一週間。

 どうしても心が動かなかった。

 何も感じないわけじゃない。だが、まるで鍵が掛けられた扉のように、ソコが開けられなくなっていたのだ。ただ、さび付いた鉄の扉は重く、何度もノブに手を伸ばすが回せなかった。少し動くことすら今の僕には、かなりの重労働であった。

 

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