#019-4 ヒミツの作戦
―――ああ、やっぱり。
どんなに話しても警察は信用してくれなかったが、なんかとか必死に説明して保護を求めた方が良かった。普通の学生が連続殺人犯を捕まえるなんて、そもそも土台からして無理な話だったんだ。こんな話しに乗るんじゃなかった。今更ながら、僕は自分の行動に後悔を感じずにはいられなかった。
「……なにしてる?」
ポタポタと冷や汗を流していたら、そう耳元で囁かれた。甘く。熱く。恋人のように。軽く唇が触れる距離まで、いつのまにか近寄られた。その事実は、僕の心臓を鷲づかみにするだけの重みがあった。
ドクンドクン―――
臓器が破裂しそうなぐらい伸縮を繰り返していた。しかし、僕は次の瞬間、ホッと胸をなで下ろす事になる。その場で俯いていたら、知っている人下に顔が引き上げさせられた。闇夜に姿を現したのは、いつのまにか戻ってきた火蜜さんだったのだ。
「……って、ちょっと、驚かさないでくださいよ。死ぬほど、ビビったじゃないですか」
「私は大声なんて出してないでしょ。それに、ジッとして俯いているから、どうしたのか心配したんじゃない」
「……そ、それは。ごめん」
「……まあ、良いけど。とりあえず今日は現れそうにもないし、もう帰りましょ」
「もう待たなくて良いんですか?」
「ええ。どうも今日は来ない気がするのよ」
そう火蜜さんが言うので、僕は素直にホッとしていた。とりあえず、これで帰れるんだ、それだけをバカ正直にも考えていたのである。
なんて、甘いのだろうか―――
冷静に思い返していたら、簡単に分かるはずなのだ。そもそも、アレに気がつかないワケはなく……。警察すら知らない犯人を学生が騙せるハズもなく……。どんなに火蜜さんが優秀でも、それは頭の中だけで可能な理屈であり、本当に殺人を実行しているプロの犯人に通用するハズもなく……。
僕は、小さな存在だって心に刻まれた。作戦が失敗したので、蜜さんを家まで送った後、人通りが多い道を使って帰宅していたハズなのに気がつくと壊されていた。
あのホームレスみたいな殺人犯に再び襲われ。
そして、僕の弱い心は砕けたのだ。




