#017-1 消えたヒミツ
火蜜さんが姿を消してから、一週間は経つ。
学校にも、家にも、近所でも、聞き込みをしたのだが見かけられていなかった。担任教師にどうなっているかの尋ねるも、火蜜さんの両親にすら連絡が取れないらしいのだ。一応、1人で警察にも行ったが、事件性がないと門前払いされてしまった。
もう、どうすりゃいいんだよ、そう僕は思った。
もしかしたら、ネットに潜む連続殺人犯に殺されたのではないか……。それとも、犯人を挑発しすぎて、捕まったのだろうか……。いや、かなり警備が厳重だったマンションなんだから、そう易々と……。
まてよ、ずっと部屋に閉じこもっていたワケじゃないんだから、外に出た所を……。あ、火蜜さんは目潰し用のLEDペンライトを守っていたし、少しぐらい……。
だが、相手は言わば殺しのプロで、こっちは素人、対抗できるハズも……。やっぱり警察に保護を求めた方が良かったんじゃないか……。
と―――
様々な思いだけが、僕の頭の中でグルグルと回り続けていた。その不安をかき消すため、僕は方々を探し回ったのだが、結局の所、消えてしまった火蜜さんを見つけることはできなかったのだ。そして、気がつけば相談を持ちかけてから1週間も経っていたのだった。
「……まあ、元気を出せよ。ちょっと、家出をしただけかもしれないぜ」
放課後の図書室。落ち込んでいる僕を、そう言って友達のスポーツ係女子、カイナが慰めてくれた。夏のように爽やかな笑みを浮かべ、隣の席に座っている僕の手を優しく握りしめていた。
良いヤツだよな、そう思った。
でも、頭の片隅では、違うんだよ、と僕は思っていた。
―――決して、火蜜さんは家出をしたワケじゃない。
友達の優しさに触れて真実を口にしたくなるも、僕は必死に我慢したのである。少しでも事情を話せば色々と説明しなくてはダメなことがあるし、黙っているのが火蜜さんとの約束だった。しかも、連続殺人犯を挑発したなんて真実を知ってしまえば、友達のカイナだって危ないかもしれないのだ。もし事件に巻き込んでしまったら、僕は自分が許せなくなるだろう。
ズキっ―――
僕の胸に鈍い痛みが走っていく。
暗い考えが脳みそを支配し、また僕は俯いてしまっていた。すると、何かを勘違いしたのか、カイナはワタワタと椅子から立ち上がったのだった。
「ほ、ほら、元気出せよ。よし、今からお姉ちゃんが瓦を割ってやるか? アタシ、凄いんだぜ、20枚ぐらいでもヘッチャラなんだぞ」
「……い、いいよ、別に」
「なら、あれだ。瓦を割りながら、ダンスだって踊っちゃうぞ。アタシ、ロボダンスとか超上手いんだぜぇ」
「……その気持ちだけで嬉しいって」
「よし、今日は特別だ。頭の上に本を10冊乗せたまま、瓦を割りながらダンスを踊ってやるよ。これなら、どうだ。すごい曲芸みたいだろ! やってやるから、元気出せよ!」
「うわ、それ見たーい。チョー見たーい」
と、そこまで黙っていた図書委員であるカオリさんが急に呟いたのだ。少し冷めた感じで、拍手さえしていた。
「って、うるせぇーよっっ! テメェのためにやるんじゃねーから!」
「良いじゃない。私にも見せてよ。減るもんじゃないし」
「テメェに見せると減るんだよ、アタシのプライドとかが!」
「筋肉バカにプライドなんか無いでしょ」
「あるわっっっ! 男のロマンみたいにデケープライドがあるわっ!」
「……筋肉バカの方は否定しないのね」




