#014-2 ヒミツの対面
「あ、いてっ!」
突然、ズキッとした痛みが僕の肩に走る。
見ると、抱きついていた火蜜さんの白い歯が食い込んでいた。ツツー僕の肩から微かに血が滲むほど強く。強く。強く。何かの感情を爆発させたように、噛みついていたのだ。
「な、なにを……」
「どうして、あの女達と一緒に、図書室でこの事件を調べていたのよ。これは私たちだけの秘密でしょ」
僕が驚いていると、そう火蜜さんはポツリと呟いた。
どうやら、そのことで、ずっと不機嫌な様子だったらしい。
「……でも、どうして、それを知ってるんですか?」
「偶々、一緒に歩いているところを見かけたの。そして、後を付けたら、図書室で調べ物をしているんですもの。私、ショックだった」
「……そうだったんですか」
「お願いだから、私たちの秘密は誰にも話さないで。もうしないのなら、それで良いから。でも、私にウソの言い訳はしないで。もしされたら、私、どうするか分からない」
「ち、ちょっと待ってください。僕、なんで調べたのかは話してないですよ。ただ、最近の事件が知りたくなったから、一緒に新聞を探しただけで」
少なくてもウソは付いてない。
最近の事件が連続殺人鬼に繋がると思って色々と調べたが、結局の所は何も見つからなかったのである。だから、今更、全て本当のことを話す必要もないだろう。
そう考えていたら、蹲るように抱きついていた火蜜さんが僕の顔をチラッと上げていた。不安げで、頼りなく、弱々しい表情は普段の様子とは異なっている。まるで、道に迷った少女が、やっと知り合いに出会えたような安堵感に満ちていたのだ。
「……ほんと?」
「え、ええ」
「良かった……」
秘密が漏れていないという事を理解した火蜜さんは、僕の胸の中で甘い息を吐いた。その途端、首元から女の香りが強く漂いだし、絡めている腕の力をギュッと強くしていた。絶対に放さない、という強い意志が感じられるほどであった。
―――しかし、僕は違う。
ホッとしている火蜜さんとは裏腹に、僕の顔色は晴れなかった。もし、少しでもカイナ達に秘密をばらしていたら、どうなっていたのだろうか。そのことが頭から離れなかった。いや、美女から抱きつかれているというのに、どうしても気になってしまっていた。
そのカンは正しい―――
間違いではなかったと、痛感させられたのは1秒後だ。
本当に直ぐ。
耳元で。
甘く。
彼女は囁いた。
「ふふふふ。良かったわ。それなら、これから2人だけで連続殺人犯の罪を訐きましょう。成功したら、私たちはこの街で一番大きい秘密を抱える事になるわ。まるで、宝石のような輝かしい秘密が手にはいるのよ。永遠に離れられない秘密。ああ、なんて甘い響きなのかしら。私は君を絶対に逃しはしない」
ゴクリ―――
ただ唾を飲み込むだけで、僕は何も言えなかった。




