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#012-2 相談

 

 殺されるかもしれないという状況なら、バカみたいに怯えるのが正しい理屈だとは思う。

 実際、僕は火蜜ひみつさんの忠告通り、家に帰る道だって人通りが多い所を選んだし、視界の死角になりそうな所は離れて歩いたし、コンビニで防犯ブザーを買ってずっと手に持つ事にしたのだ。もし怪しい人を見かけたら、恥も外見もなく逃げ出す心構えをしていた。


 ―――だが、それでも生きるのが苦しかった。


 何をしても、何を考えても、何を準備しても、心の奥底にへばり付いた恐怖だけは拭えなかったのだ。初めは小さなシミみたいに感情だったのに、それはジワジワと脳の全てを浸食していた。ああ、殺されるかもしれないというのは、こんなにも重いのか、そう僕は思った。


「くそ……なんで、こんなメに」


 帰宅後、僕は家のベットに寝ころんだまま苛立ちを呟いてしまう。この恐怖を完全に無くすには、やはり襲ってきたヤツを捕まえるしかないだろう。


 自分の手でッ―――


 やられたことをやり返さない限り、恐怖は消えない。

 それ以外は欺瞞でしかない。

 僕は、蛍光灯の明かりを潰すように、目の前でギュッと拳を握りしめていた。


「……ちょっと図書館に行って、古い新聞でも調べてみようかな」


 そう僕は呆然と呟いた。

 火蜜さんが、僕を殺そうとした犯人を調べてくれると言っていたが、このまま何もせずに待っているのは辛いだけだった。少なくても犯人が連続的に犯罪を繰り返しているのなら、警察ですら見逃すぐらい小さい記事が新聞に載ってるかもしれない。ジッとしているぐらいなら、それを調べていた方がマシだ、と僕は思ったのであった。


「とりあえず、明日、火蜜さんを誘って調べてみるか……あ」


 独り言を呟いていたが、急に僕はハッとした。忘れていたが、火蜜さんは学校の中だと秘密がバレるかもしれないから、僕に話し掛けられたくないのだとか。よく分からない理由ではあるが、図書室に一緒に行こうと誘っても断られるだけだろう。

 何より、僕も同じような気分というか……。

 あの火蜜さんに、近寄りすぎるのは……。


「……カイナに頼んでみようかな」


 クラスメートであり、友人であり、空手の全国大会で優勝した少女。きっと、連続殺人犯ですら一撃で倒してしまうかもしれない。強いカイナと一緒にいる所を妄想すると、ほんの少しだけ落ち着いた気分で僕は布団に潜れたのであった。



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