#012-1 相談
高校生にもなって、1人が怖いなんて言ったら笑われるのがオチだろう。
いや、実際に僕だって笑っていたかもしれない。
しかし、今は違う。1人が怖くないのは、街の目映い明かりで誤魔化し、暗い夜を忘れているだけなんだと痛感していた。本当に恐怖を感じているのなら、つい辺りを見渡している。外を歩いても、家に居ても、布団に潜っても変わらない。例え、どんな状況だったとしても、背後を何度も確認してしまうのだ。辺りに人気はないのか、まず自分の目で見なくては我慢できなくなるのだった。
―――数日前。
ホームレスの人間から、僕は殺されそうになった。
そんな辛い経験をしたのだから怯えるのも仕方ない、と頭では分かっている。まだ現実だとは感じられずに気が動転しているだけなのも、理屈では分かっている。分かっているのだが、どうしても僕はダメだった。家の鍵を全て閉め、家族と同居しているというのに不安のタネは育ち続けていたのだ。
「……犯人に怯えている人生も、そう悪くないわよ」
下校後、クラスメートの火蜜さん家を訪ねると、そう言ってきたのだった。
「良くは無いでしょ……」
「ふふふ。殺人犯に殺されそうになったのを、もう有り得ない話しだと見下すよりはマシでしょ。本当に殺されたらお終いなんだし、警戒した方が良いに決まっているわ」
「……そりゃそうですけど」
「あのね、連続性を伴う犯罪者は、ある種の秩序性を伴っているわ。言ってみれば爬虫類と同じようにね。茂みの中で息を殺し、ジッと君を殺す瞬間を待っているの。だから、君も同じぐらいに怯えなさい。怯えて、恐怖して、立ち竦んで、全ての安全を自分で確認するようにしなさい。それだけが犯罪者に勝てるただ一つの方法なんだから」
「……臆病者が生き残るって、ヤツですか」
「そうね。まあ、今日の所は普通に帰りなさいよ。私も、少し調べものがあるし」
「……あの、このまま帰っても大丈夫かな?」
「この間も言ったけど、しばらくは大丈夫よ。秩序を保つ爬虫類は一度失敗すると計画を最初から練り直すし、また襲われるのは後日になると思うわ。といっても、最低限は警戒した方が良いけどね」
僕との別れ際、火蜜さんは何度も繰り返し忠告してくれた。




