#011-4 ヒミツの誓い
クラスメートの火蜜さんという美しい女性は、隠し事をトモダチと共有することが一番大事だった。
普段は優等生を演じるだけで、他人の事をあまり重要だとは考えていない。そういう歪な性格は少し前から何となく僕も理解していた。だが、まさか、ここまで歪だとは僕も考えていなかった。いや、考えられるわけもないだろう。
だってさ。
この街に殺人鬼が隠れているから一人で捕まえようとした、という正義感の話しなら理解できるだろう。また、何となく犯人に近寄ってしまった、という興味本位の話しでも理解できるだろう。関係性による個人的動機や、偶発性による遭遇からの不安感なども理解できる話しだろう。
だが、これは無い。
トモダチと秘密を作るのが好きだからといって、それを社会から隠れて自慢している連続殺人犯にまで求めるなんてダメ。いくら何でも限度を超えている。人が殺されているというのに、モラルを全くと言っていいほど感じていないのだ。微塵も。一撮みも。崩れた、欠片すらも見当たらないのだ。
ああ、このヒトは心が壊れているのか、そう僕は思った。
いや、痛感させられていた。
―――だからこそ。
そういう歪な壊れ方をしているヒトだからこそ、そういう歪な提案しようと僕は思ったのだ。今の状況を好転させる、たった1つの作戦を彼女に申し出たのである。
「……あの、僕と二人で、その連続殺人犯の秘密を訐きませんか」
そう僕は静かに呟いていた。
もうこれしかなかったのだ。
仮に、ここまでの話しが全て真実だとして……。
本当に僕の命を狙ってきているのが連続殺人犯なら、助かるにはこれしかなかった。火蜜さんはモラルで動かず、超個人的な動機にのみ拘っている人間だ。きっと僕が犯人を捕まえて欲しいと言っても通用しないし、涙ながらに哀願しても断られてしまうだろう。いや、むしろ秘密が出来たと喜ぶのかも知れない。
だからこそ―――
その望みをより増幅する提案を持ちかけるしかなかったのだ。火蜜さんが自分より深い秘密を持っている犯人が気にくわないからこそ、その秘密を一緒に壊す。それが結果的に犯人の逮捕に繋がり、僕たちの命が助かる。
もう、これしかなかった。
もちろん、殺人犯なんて気のせいだったという可能性もあるが、殺されるよりは無駄骨の方がマシだろう。
「……それが、お互いのヒミツのため、ね」
初めは意外な顔をしていた火蜜さんだったが、そう笑い返していた。そしてハーフパンツの隙間から零れている白い足をスッと差し出してきたのだ。その意味を、僕は直ぐに理解する。椅子から腰を上げ、足の甲に唇を付けた。
まるで、これが永遠の約束を守る証しのように、僕は、ただ黙って彼女の白い足を舐めていた。




